在留資格「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更方法
- 2023.07.14
- 2024.03.09
リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。
人材不足と言われる今、母国語と日本語ができて日本の文化にも慣れている優秀な外国人材は、日本の企業にとってはとても貴重だと思います。そのような外国人材を獲得するため、日本にいる留学生を採用しようと考える企業も多いでしょう。
留学生を採用する際は、必ず就労の在留資格に変更しなければなりませんが、多くの企業がその手続きを留学生本人に任せてしまっているはずです。ある程度の流れは把握していても、具体的な手続きや注意事項をご存知ない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、留学生を採用する企業のご担当者や留学生が在籍する学校のご担当者向けに、「留学」から一般的な就労の在留資格である「技術・人文知識・国際業務」への変更申請について解説していきます。
本記事をお読みいただければ、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への手続き方法や変更時の注意点などがお分かりいただけます。初めて留学生を採用する企業の方はもちろんですが、今までも留学生を採用している企業の方や留学生が在籍する学校の方にもお役に立つ内容のはずです。
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目次
【前提】留学生が日本で就職する際は就労可能な在留資格への変更が必要
「留学」の在留資格は日本で学校に通うための在留資格ですので、そもそも日本で就労することはできません。資格外活動許可を持って1週間に28時間以内でアルバイトすることはできますが、正社員としてフルタイムで働くことは認められません。留学生をフルタイムで働かせたい場合は、適切な就労の在留資格に変更することが大前提です。
当然ながら、就労の在留資格に変更できてから働けるようになるので、申請中の段階では働けません。
また、入管での審査が終わらずに入社日を迎えてしまったので働かせてしまったというご相談もありますが、これは不法就労になってしまいますので注意しましょう。このようなことを避けるためにも、就労の在留資格への変更手続きは余裕を持って進めてください。
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留学ビザから「技術・人文知識・国際業務」に変更するための要件
「技術・人文知識・国際業務」に変更するための要件は、大きく次の5つがあります。
- 日本企業との契約
- 学歴または実務経験
- 専門的技術や知識が必要な業務
- 業務内容との関連性
- 日本人と同等額以上の報酬
企業は留学生と雇用契約などの契約を締結する必要があります。当然ながら日本の労働基準法に従った契約が必要です。
契約を締結して「技術・人文知識・国際業務」に変更できなかったら困るというご相談もお受けしますが、「技術・人文知識・国際業務」への変更申請の時に雇用契約書や労働条件通知書といった書類の提出が求められるため、先に契約を締結しなければなりません。
このような場合、雇用契約書に「在留資格の取得を条件とする」といった停止条件を付けることが多いです。停止条件があれば、万一「技術・人文知識・国際業務」への変更が許可されなかった場合、雇用契約は無効となります。この条件を留学生に口頭でも伝えた上で、契約を進めていただくのがよいでしょう。
次に、留学生が大学を卒業していること、または10年以上の就労経験が必要です。
海外の大学も含まれますので、日本にある日本語学校に通っている留学生でも、海外の大学を卒業していれば要件を満たします。専門学校であっても、日本で卒業して「専門士」または「高度専門士」を持っていれば学歴要件に該当します。ただし海外の専門学校は含まれません。
他にも、学校で学んだ一定水準以上の専門的技術や知識が必要とされる業務であることが求められます。単に経験を積んだことによる知識では足りないため、いわゆる単純作業と呼ばれるような業務に従事することはできませんので注意しましょう。
学校で学んだ内容と業務内容に関連性があることも要件の一つです。大卒者であれば柔軟に判断され、専攻科目と業務内容が必ずしも一致していることは求められませんが、専門学校卒業者は専攻科目と業務内容が一致していないと許可されません。
日本で専門学校を卒業した留学生を採用する場合は、「専門士」、「高度専門士」の有無だけではなく専攻科目も確認する必要があります。
ただし、2024年2月2月29日の改正により専門学校でも認定専修学校専門課程の卒業者は、大卒者と同じように専門課程と業務内容の関連性が柔軟に判断されるようになりました。
業務内容は、申請で特にポイントとなる部分です。これまで私が見てきた不許可になるケースの大半は業務内容が理由で不許可になっています。「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務内容か、しっかりと確認した上で手続きを進めましょう。
報酬額は「〇〇円以上」といった明確な基準はありません。もちろん最低賃金以上である必要はありますが、「〇〇円以上」あれば要件を満たすというものではないです。企業の賃金体系を基に日本人と同等額以上であるかで判断されます。
なお、報酬にはボーナスは含まれますが、通勤手当や住宅手当といったものは含まれません。
「技術・人文知識・国際業務」の要件をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。
必要書類
ここでは、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ変更する際に必要な書類を、企業と留学生で分けて解説していきます。
また、入管では受入機関の企業規模によってカテゴリーを1から4まで分類し、そのカテゴリーによっても必要書類は異なりますので、カテゴリー別に必要書類を解説します。
なお、一般的に大企業と呼ばれ、上場企業や給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1000万円以上の企業がカテゴリー1、2です。カテゴリー3はいわゆる中小企業、カテゴリー4は新規設立した企業などが該当します。
カテゴリーについてはこちらの記事で詳しく解説していますのでお読みください。
企業が用意する主な書類
まずはカテゴリー1、2の企業の場合の必要書類は以下のようになります。1も2も必要書類は同じです。
カテゴリー1 | カテゴリー2 |
カテゴリーを立証する資料 (カテゴリー1なら会社四季報、カテゴリー2なら法定調書合計表など) | |
申請書(所属機関等作成用) |
カテゴリー1、2の企業は上記の書類だけになります。一方でカテゴリー3、4の企業は以下の書類も必要です。
カテゴリー3 | カテゴリー4 |
カテゴリー1、2の資料 | |
雇用契約書・労働条件通知書 | |
登記事項証明書 | |
企業の沿革、役員、組織、事業内容が記載された案内書 | |
直近年度の決算文書 | |
事業計画書 | |
給与支払事務所等の開設届出書 | |
直近3ヶ月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書 または 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
カテゴリー1、2に比べて、カテゴリー3、4は必要書類が大幅に増えます。会社がどのカテゴリーに分類されるかを確認した上で、必要な書類を準備することが必要です。
留学生が用意する主な書類
留学生が準備する書類は以下のようになります。
カテゴリー1 | カテゴリー2 |
パスポート | |
在留カード | |
申請書(申請人等作成用) | |
写真 | |
専門学校を卒業した場合は、 卒業証明書(専門士または高度専門士の称号が記載されたもの) |
留学生が準備する書類も受入企業のカテゴリーによって異なります。カテゴリー1、2であれば上記の書類を準備し、カテゴリー3、4の場合は以下の書類を準備しましょう。
カテゴリー3 | カテゴリー4 |
カテゴリー1、2の資料 | |
履歴書 | |
大学卒業証明書 |
留学生が準備する資料は、企業と異なり、そこまで大きく変わりません。
専門学校を卒業した留学生の場合は、カテゴリーに関わらず卒業証明書の提出が必要ですが、大学を卒業した留学生でカテゴリー3、4の企業で働くのでなければ、卒業証明書の提出は不要です。
ただ、専門学校生や大学生を新卒で採用する場合、3月に卒業証明書が出てから申請を行なっては4月の入社に間に合いません。
例年、入管では12月1日から申請の受付を開始しますので、実際の申請は卒業証明書ではなく、卒業見込み証明書で申請をすることになります。卒業見込み証明書はカテゴリーに関わらず提出が必要です。
専門学校生の場合は、卒業見込み証明書に「専門士」、「高度専門士」の取得見込みであることが書かれているものを提出しましょう。また卒業見込み証明書と一緒に成績証明書も提出し、専攻科目と業務内容が関連していることを立証できると、審査がスムーズに進むはずです。
なお、大学院生や海外で大学を卒業している留学生の場合は、すでに大学を卒業していますので、卒業見込み証明書は不要で、上記の表のとおりに書類を準備することになります。
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留学生が在留資格を変更する際に注意すべき3つのこと
ここでは、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ変更する際に、注意すべき点を3つ挙げて解説します。在留資格変更許可申請を留学生本人に任せている企業も多いので、申請を行う際に注意すべきことについて企業のご担当者も確認しておきましょう。
申請時と結果受け取り時には日本に在留していること
在留資格変更許可申請は申請人本人が入管で申請しますので、当然のことではありますが、申請を行う時と結果を受け取る時は、申請人本人が日本にいなければなりません。
しかし、オンライン申請が行えるようになったため、申請人本人が入管に出向く必要がなくなりました。また、行政書士などに依頼をした場合も申請人が入管に行く必要がありません。
このように申請人が入管に出向かなくても申請ができるため、そういった場合は日本にいなくても問題ないと思っている方もいるようですが、例え申請人が入管に行かなくても日本にいなくてはいけません。
特に、申請や結果を受け取る12月から3月までの期間は、冬休みや春休みなどの長期休暇があったり、旧正月や卒業旅行シーズンにあたるため海外へ出国する機会が多い時期です。
海外に出国していることが多いと申請が遅れたり、許可の受け取りが就労開始日に間に合わないなど、トラブルになるケースもあります。学生生活最後なので、海外旅行に行きたい気持ちもわかりますが、申請を優先してスケジュールを組んでいただくのがよいでしょう。
ちなみに入管は出入国記録を見ることができるため、日本にいるかどうかはわかります。
入社日までには「技術・人文知識・国際業務」に切り替えができていること
新卒者の場合、申請時は卒業見込み証明書で申請をしますが、「技術・人文知識・国際業務」の許可を受ける際に卒業証明書を提出しなければなりません。卒業式は3月下旬に実施される学校が多く、入社日までにあまり時間がないため、卒業証明書が発行されたらすぐに許可を受けることが必要です。
入社日までに「技術・人文知識・国際業務」に変更が完了していなければ就労できません。例え申請中であっても、または審査が終了していたとしても、「技術・人文知識・国際業務」に切り替えができていないと働くことはできませんので、留学生には卒業後すぐに許可を受けるように案内しましょう。
特に直前まで海外に出国していたり、審査が終了しているからと安心してしまっている留学生も多く、ギリギリまで許可を受けない留学生もいますので、最後まで手続きの進捗を追うことが必要です。
申請で失敗しないよう必要に応じて専門家に相談する
一般的な入社時期である4月頃になると、以下のようなご相談が多くなります。
「入管での審査が終わらず、入社に間に合わない」
「留学生が申請をしたが、入管から書類や説明を求められて困っている」
「申請が不許可になってしまった」
こういったご相談をいただく背景には様々な原因が考えられますが、申請手続きが遅れたり、書類に不備があったり、そもそも要件を満たしていなかったりというものが多いです。
留学生は卒業論文の執筆や海外への出国、または卒業という安心感などから、なかなか申請手続きを進めないことがあります。
また、申請を留学生任せにしてしまうと、申請書類が不足していたり、入管から追加で質問や書類を求められた時に対応できなかったりして、審査がスムーズに進まないことや場合によっては不許可になってしまうこともあります。
「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更申請では、申請要件も確認した上で、決まったスケジュールの中で書類を不備なく揃えて申請することが必要です。このような手続きを留学生だけに任せてしまうと、前述のようなリスクが発生することもありますので、必要に応じて行政書士などの専門家に事前に相談するのが良いでしょう。
申請が不許可になった後にご相談に来られることも多いですが、一度不許可になってしまうと、再申請は非常に難しいです。そのようなケースでも事前にご相談いただければ、許可をもらえたであろうケースもあります。
このようなことを避けるためにも、「今までも大丈夫だったから」ではなく、事前に行政書士などの専門家にご相談されることをお勧めします。
就労ビザ申請で不許可になった場合について詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みください。
卒業が9月で入社が4月の場合
ここまでは、留学生が3月に卒業することを前提として解説してきましたが、9月に卒業できる学校もあります。ここでは9月に卒業する場合の手続きについて解説していきましょう。
9月に卒業して4月の入社まで日本に滞在することを希望する留学生もいます。卒業すると「留学」の在留資格で日本に滞在し続けることができないため、本来は一度帰国しないといけません。
しかし、「留学」から「特定活動」に在留資格を変更すれば、4月の入社まで日本に滞在することが可能です。「特定活動」へ変更申請する際の必要書類は以下のようになります。
必要書類 |
前述の「技術・人文知識・国際業務」への変更申請と同じ書類 |
日本滞在中の経費支弁能力を立証する資料 |
以下が記載された文書 ・企業名 ・勤務場所 ・事業内容 ・報酬額 ・職務内容 |
内定通知書・内定承諾書 |
誓約書 |
採用までのスケジュール |
原則、「特定活動」は就労ができない在留資格のため、日本滞在中の生活費などをどのように工面するか、銀行の残高証明書などで立証する必要があります。
また、内定者と定期的に連絡を取ることや法令を遵守させることなどを誓約した誓約書を企業から提出することも必要です。なお、誓約書は決まったフォーマットがあります。もし、採用までに研修などがあれば、そのスケジュールが記載された書類も提出しましょう。
上記のように、「特定活動」への変更申請には内定通知書などが必要なため、内定日以降に申請を行うことになります。多くの企業は10月1日だと思いますので、10月1日になったらすぐに手続きをしましょう。
「特定活動」は就労ができない在留資格と説明しましたが、資格外活動許可を取得すれば1週間に28時間以内でアルバイトをすることもできます。
資格外活動許可について詳しく知りたい方は、以下の記事もお読みください。
「特定活動」に変更できれば、そのまま日本に滞在し続けることは可能ですが、入社前までに「技術・人文知識・国際業務」へ変更しなければいけません。前述のように、就労ビザへの変更申請は、例年12月1日から受付が開始されるので、早めに申請を行いましょう。
その後の流れは「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更申請の手続きと同様に、入社前までに許可を受けます。すでに卒業しているため、許可を受けるのが入社ギリギリになることはありません。通常は入社日の1ヶ月前から許可を受けることができるようになるため、許可を受け取れる期間になったらすぐに許可を受けるのがよいでしょう。
なお、9月に卒業した後すぐに自国へ帰国し、4月の入社のタイミングで日本に戻ってくる場合は、通常の在留資格認定証明書交付申請を行なって日本に入国することになります。
在留資格認定証明書交付申請から日本入国までの流れについては、こちらの記事もご参考ください。
さいごに
ここまで「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更申請について解説してきました。必要書類や手続きの流れ、注意点など具体的な手続きの内容がお分かりいただけたと思います。
これまで留学生の新卒採用をしていた企業であっても、見落としていた注意点もあったのではないでしょうか。「技術・人文知識・国際業務」への変更申請は、留学生に任せている企業が多いと思いますが、留学生に任せっきりにしてしまうと入社に間に合わなかったり、手続きで失敗してしまったりすることもあり、当初計画していた採用プランから乖離してしまう可能性もあります。
また、企業の担当者の方にとっても留学生の新卒者が多いと進捗を確認するのも大変ですし、日本人の新卒者と異なる手続きですので業務が煩雑になるはずです。留学生や自社で手続きをするだけではなく、場合によっては行政書士の専門家などに相談することも必要です。
リガレアスでは、留学生のスケジュールに合わせながら確実に入社日までに「技術・人文知識・国際業務」が取得できるよう柔軟に対応しています。また、留学生と直接書類のやり取りをすることで、企業のご担当者の方の業務が削減でき、タイムリーに進捗の確認を行えます。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。