リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

今回は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について解説します。

入管が発表した統計では、2023年6月末時点で約34万6000人が「技術・人文知識・国際業務」を持って在留し、「永住者」、「技能実習」に次いで、在留資格別の構成比で3位となり、日本に在留する外国人の10%がこの在留資格を持っていることになります。外国人を雇用する企業担当者様にとって最も馴染みのある在留資格ではないでしょうか。

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(参考:法務省「令和5年6月末現在における在留外国人数について」)

このように就労系の中では最も一般的な在留資格ですが、定期的に申請での不許可のご相談があります。これまで自社で申請を行ってきている企業の方でも、知っているようで知らないことがあるようです。

そこで本記事では、「技術・人文知識・国際業務」で行うことができる具体的な職種や申請の要件、申請時の注意点について解説していきます。初めて外国人を雇用する企業の方はもちろんですが、今まで手続きを行ってきた企業の方にも深くご理解いただける記事になっています。

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在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは?

「技術・人文知識・国際業務」とは、日本にある企業等との契約に基づいて行う自然科学分野または人文科学分野の専門的技術や知識を必要とする業務、または外国人特有の感性を必要とする業務をするための在留資格となります。

自然科学分野とは、理学、化学、工学、農学、医学などいわゆる理系分野に属するもので、人文科学分野とは、法律学、経済学、文学、歴史学、心理学、経営学などいわゆる文系分野に属するものです。

大学などで理系や文系の科目を専攻して修得した一定水準以上の専門的知識が必要とされ、単に経験を積んだことによる知識では足りないとされているため、いわゆる単純作業と呼ばれるような業務は該当しません。

一方で、外国人特有の感性を必要とする業務とは、一般の日本人が持っていない外国人特有の思考や感受性を必要とするもので、外国の社会、歴史伝統の中で培われた発想、感覚を基にした一定水準以上の専門的能力を必要とするものとなります。

 

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「技術・人文知識・国際業務」に該当する職種

前述のとおり、「技術・人文知識・国際業務」でできる業務は、自然科学分野や人文科学分野の専門的技術や知識を必要とする業務または外国人特有の感性を必要とする業務です。これらは、在留資格の名称が示すように「技術」(自然科学分野)、「人文知識」(人文科学分野)、「国際業務」(外国人特有の感性)の3つに分けられます。

どのような職種が該当するのか、その具体例を見ていきましょう。

 

「技術」の職種「人文知識」の職種「国際業務」の職種
システムエンジニア

ゲームエンジニア

プログラマー

プロジェクトマネージャー

建築設計

研究開発

営業

会計/経理

総務/人事

法務

広報

貿易

コンサルタント

通訳/翻訳

語学教師

インテリアデザイナー

ファッションデザイナー

海外取引業務

 

上記はあくまで一例ですが、多くの職種が「技術・人文知識・国際業務」に該当することがお分かりになると思います。日本で働く多くの外国人が「技術・人文知識・国際業務」を持っているのは、多くの職種がこの在留資格に含まれるからです。

「技術・人文知識・国際業務」の要件

「技術・人文知識・国際業務」の要件は、大きく分けて次の4つがあります。それぞれ詳しく解説していきましょう。

  • 日本企業との契約
  • 学歴または実務経験要件
  • 業務内容との関連性
  • 日本人と同等額以上の報酬

日本企業との契約

外国人と日本で就労する企業との間で、雇用契約や委任契約など継続的な契約が必要です。契約が継続的なものでない場合は、「技術・人文知識・国際業務」に該当しません。この場合、個人事業主として「経営・管理」に該当する可能性があります。

また、契約締結にあたっては、労働基準法15条第1項の規定に従って、外国人に対して賃金や労働時間、その他の労働条件を書面で明示しなければなりません。労働条件通知書などにより、必ず外国人に対して書面で明示しましょう。

(参考:労働基準法

当然ながら、契約内容は日本の労働基準法に基づいていなければなりませんので、勤務時間や有給休暇など、法律に抵触しないように進めてください。

契約締結については、日本人との労働契約と同じですので、外国人という理由で条件面で不当に差別してはいけません。

学歴または実務経験要件

外国人は大卒以上、つまり「学士」かそれと同等以上の学歴を有していなければなりません。大学院を卒業して「修士」や「博士」の学位を持っている方は当然要件を満たしますが、「短期大学」を卒業して、「準学士」や「短期大学士」を持っている方も「学士」相当とみなされます。

ただし海外の学校を卒業している場合は注意が必要です。海外の大学を卒業している場合も日本の大学と同様の扱いですが、国によって教育制度が違うため、単純に大卒以上と判断できないことがあります。

例えば、中国の大学を卒業した場合、卒業証書を持っていても学位証書を持っていなければ大学卒業以上とみなされず、要件を満たしません。

学歴要件は大卒以上と説明してきましたが、日本の専門学校を卒業し、「専門士」または「高度専門士」を取得している場合は、学歴要件を満たすことになります。専門学校を卒業しても「専門士」や「高度専門士」が与えられない場合もありますので、日本の専門学校を卒業した外国人を採用する場合には注意しましょう。

日本の専門学校に限定されていますので、海外の専門学校を卒業していても学歴要件を満たしません。

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学歴要件を満たしていない場合であっても、10年以上の実務経験があれば要件を満たします。この年数には、大学や専門学校、高校などで、従事する業務内容に関する技術や知識を学んだ期間も含まれます。例えば、日本でプログラマーとして働く方が、外国の専門学校で2年間プログラミングを学び、その後8年間プログラマーとして働いていたような場合です。

申請時には職歴を立証する資料として、これまでに在籍した企業からの在籍証明書を提出しなければなりません。一つの会社に10年間勤務している場合は1社分の在籍証明書で良いですが、転職を繰り返している方ですと複数の会社からの在籍証明書が必要になり、学歴要件よりもハードルが上がることがあります。

さらに、学歴要件や実務経験要件を満たしていなくても、エンジニアの方で情報処理に関する資格を持っていれば、この要件を満たすことが可能です。日本の資格だけでなく、中国、韓国、台湾、タイなどの資格も対象となっています。出入国在留管理局のホームページに対象資格の一覧がありますのでご覧ください。

(参考:出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件

業務内容との関連性

企業で行う業務内容と大学や専門学校などで学んだ専攻科目が関連していることも必要です。ただ、専攻科目と業務内容が一致していることまでは求められません。

特に、大学を卒業している場合は、専攻科目と業務内容の関連性は柔軟に判断されます。特段の事情がない限り、大学を卒業していることをもって、業務内容との関連性があると認められるので、大学の経済学部を卒業した方が、ソフトウェア開発会社でシステムエンジニアとして勤務するような場合であってもこの要件を満たすことになります。

一方で、専門学校を卒業している場合は、専攻科目と業務内容に相当程度の関連性が求められます。例えば、美容科を卒業した方が、化粧品販売会社で美容製品の商品開発やマーケティング業務に従事する場合や、アニメーション科でゲーム理論、CG、プログラミングなどを学んだ方がゲーム開発業務に従事するような場合です。

ただし、2024年2月29日の改正により専門学校でも認定専修学校専門課程の卒業者は、大卒者と同じように専攻科目と業務内容の関連性が柔軟に判断されるようになりました。

このように専門学校を卒業している方を雇用する場合は、「専門士」や「高度専門士」の有無だけでなく、専攻科目も確認する必要があります。

専攻科目と業務内容が必ずしも一致していることが求められないとはいえ、前述したように自然科学分野、人文科学分野、外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事しなければなりませんので、いわゆる単純作業と呼ばれるような業務に従事することはできません。

日本人と同等額以上の報酬

入管法では、「〇〇円以上」といった基準はなく、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」という少し曖昧な基準が定められています。そのため、〇〇円以上あれば要件を満たすというものではなく、企業の賃金体系を基に日本人と同等額以上であるかで判断します。

例えば、日本人の大卒の新卒者の報酬額が25万円であれば、外国人の大卒新卒者の報酬も25万円以上でなければなりません。

なお、報酬にはボーナスなどは含まれますが、通勤手当や住宅手当といった実費弁償の性格をもつものは含まれません。

「技術・人文知識・国際業務」取得で注意すべきポイント

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、学術上の素養を背景とする一定水準以上の 業務に従事することが必要で、いわゆる単純作業と呼ばれる業務に従事することができないことを説明しました。

しかし他方で、外国人を採用した際、入社直後に飲食店での接客や小売店での店頭での販売業務などの実務研修を行う企業は多いと思います。研修期間の活動だけを見れば「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務であっても、日本人に対しても同様に行われる実務研修の一環で、在留期間中の活動を全体として捉えて、在留期間の大半を占めるようなものでないときは、その相当性を判断した上でこの活動が認められています。

入社後に「技術・人文知識・国際業務」に該当しない実務研修が行われる場合のビザ申請では、入社後のキャリアステップや各段階での具体的な職務内容などが記載された研修計画を提出し、研修期間が在留期間の大半を占めるものではなく、日本人社員と同様な研修であることを示すことが必要です。

外国人を採用する際の必要な手続きや注意点については、こちらの記事もご参考ください。

他にも注意すべきポイントがあります。

「技術・人文知識・国際業務」でできる職種は非常に幅広く、他の在留資格の活動と重複することも多いです。例えば、企業の経営や管理業務は自然科学や人文科学分野の知識を必要とする業務ですが、経営や管理業務を行う場合には「経営・管理」の在留資格を申請することが求められます。

また、海外のグループ会社から期間を定めて転勤する場合には、「企業内転勤」を申請します。他にも「介護」や「研究」など、多くの在留資格の活動内容と重複するため確認が必要です。

このように職種が幅広いため、その他の在留資格の活動内容と重複するために、別の在留資格と比較してどちらの在留資格が適切かを判断して申請しなければなりません。

「技術・人文知識・国際業務」とも比較されることが多い「企業内転勤」についてはこちらの記事もご覧ください。

さいごに

ここまで「技術・人文知識・国際業務」でできる職種や取得の要件、注意点も含めて解説してきました。この在留資格について網羅的にご理解いただけたと思います。在留資格の取得要件は他の在留資格と比べればシンプルですが、他の在留資格との関係など、注意が必要な点もあります。

取得要件はシンプルなものの、冒頭でも説明したように申請不許可のご相談は少なくありません。企業側では問題ないと思う申請であっても、入管からすれば在留資格に該当しない業務に従事させていることもありますし、書類のちょっとした記載の不備で単純作業と誤解され不許可を受けてしまうこともあります。

これまで問題なく申請ができていた企業であっても、不許可を受けてしまうと再申請は非常に難しい手続きですし、採用計画も狂ってしまいます。そのため特にビザ申請は慎重に進めたいものです。

リガレアスでは、要件確認から申請書作成まで、ビザ手続きがスムーズに進むようにサポートしております。ビザ申請で失敗したくないとお考えの企業の方は一度ご相談ください。

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