リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

外国料理店などで外国人の料理人が厨房に立っている姿を見かけることも多くなりました。このような外国人の料理人は「技能」という在留資格が該当します。実は「技能」は料理人以外にも該当する職種がいくつかあります。「技能」は職種によって申請要件や必要書類が異なるなど、少し特殊な在留資格です。

そこで今回は、「技能」の在留資格について解説します。「技能」で就労できる職種や申請要件、不許可事例など、「技能」について網羅的にお分かりいただける記事です。

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在留資格「技能」とは?

「技能」とは、日本の経済社会や産業の発展に寄与するとの観点から、日本人で代替できない産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する外国人を受け入れるために作られた在留資格です。

日本では少ない技能者や外国において特有な産業分野での外国人を招へいするための在留資格で、代表的なものとして調理師やパイロットなどが挙げられます。

「技能」の在留資格が許可されると、在留期間は「5年」、「3年」、「1年」、「3月」のいずれかが与えられます。「3月」が与えられた場合は、在留カードが交付されず、住民登録の必要はありません。

 

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在留資格「技能」で就労を認められている分野(職種例)

日本で行える活動は、入管法で「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」と規定されています。

ここでいう産業上特殊な分野というのは以下の3つです。

  • 外国に特有な産業分野
  • 日本の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野
  • 日本で従事する技能者が少数しかいない産業分野

この3つに該当するのが、以下の1号から9号までの職種になります。

 

基準省令職種
1号調理師
2号建築技術者
3号外国特有製品の製造・修理
4号宝石・貴金属・毛皮加工
5号動物の調教
6号石油・地熱等掘削調査
7号航空機操縦士(パイロット)
8号スポーツ指導者
9号ワイン鑑定等(ソムリエ)

1号 調理師

中国料理、フランス料理、インド料理などの調理師やパン、デザートなどを製造する調理師/パティシエなどが該当します。

調理師については、こちらの記事で詳しく解説していますのでお読みください。

2号 建築技術者

該当するのは、ゴシック、ロマネスク、バロック方式や中国式、韓国式など、日本にはない建築、土木に関する技能をもつ建築技術者です

3号 外国特有製品の製造・修理

ヨーロッパ特有のガラス製品やペルシャ絨毯など、日本にはない製品の製造や修理をする技能者や、外科学などの知識を用いて疾病の予防矯正効果のある靴のデザインや製作を行うシューフィッターが当たります。

4号 宝石・貴金属・毛皮加工

宝石や毛皮を使って製品を作るだけでなく、原石や動物から宝石や毛皮を作る外国人なども該当します。

7号 パイロット

該当するのは定期運送用操縦士、事業用操縦士または準定期運送用操縦士のいずれかの技能証明をもち、機長または副操縦士として業務に従事する外国人です

8号 スポーツ指導者

スポーツの指導者が当たりますが、野球やサッカーなどチームで必要とするプロスポーツの監督やコーチは「興行」の在留資格になります。

なお、スポーツ選手や監督に関する在留資格についてはこちらの記事もご参照ください。

また、肉体的鍛錬を目的とする気功運動は「生涯スポーツ」に含まれるため、気功指導は「技能」に該当しますが、病気治療としての気功治療はスポーツ指導に当たらないため「技能」には該当しません。

9号 ソムリエ

ワインの品質鑑定、評価及び保持並びにワインの提供に係る技能をもち、そのいずれかの業務を行う技能者が該当します。

在留資格「技能」の要件

報酬要件

日本人と同等額以上の報酬を受ける必要があります。

入管法では「〇〇円以上」という明確な基準はなく、個々の企業の賃金体系または他の企業の同種の職種の賃金を参考に日本人と同等額以上であるかで判断します。そのため、いくら以上あれば許可されるということはいえません。

報酬にはボーナスなどは含まれますが、通勤手当や住宅手当といった実費弁償の性格をもつものは含まれません。

実務経験年数

前述したように、熟練した技能を要する業務に従事することが必要で、経験の蓄積によって熟練の域にある技能が必要です。そのため、申請要件の一つに実務経験年数が定められています。必要な実務経験年数は職種によって異なります。

前述の表の基準1号から6号は、10年以上の実務経験が必要です。実務経験には、外国の教育機関において従事する業務に係る科目を専攻した期間も含みますが、日本で学んだ期間は含まれませんので注意しましょう。

1号の調理師の中でも、タイ料理人として初級以上の技能水準に関する証明書をもち、申請直前1年間、タイでタイ料理人として妥当な報酬を受けていた場合には、実務経験年数が5年に短縮されます。このような要件を満たせない場合は、タイ料理人でも10年の実務要件を満たさなくてはなりません。

また2号の建築技術者で、外国で10年以上の実務経験を要する外国人の指揮監督を受けて業務に従事していた場合は、実務経験が5年に短縮されます。

7号のパイロットは、年数ではなく250時間以上の飛行経歴が必要です。

8号のスポーツ指導者は、以下のいずれかの経験が求められます。

  • スポーツの指導について3年以上の実務経験
  • スポーツ選手としてオリンピック、世界選手権などの国際大会への出場経験
  • 国際スキー教師連盟が発行するISIAカードの交付を受けたもの

3年以上の実務経験には、外国の教育機関で指導するスポーツに関する指導に係る科目を専攻していた期間やプロスポーツ選手として活動していた期間も含みます。

9号のソムリエにおいては、5年以上の実務経験と下記のいずれかに該当することが必要です。

  • 国際ソムリエコンクールで入賞以上の賞を獲得したもの
  • 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているもの)に出場したことがあるもの
  • ワイン鑑定等に係る技能に関して国、地方公共団体またはこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有すること

5年以上の実務経験とコンクールへの出場など、両方の要件を満たさなくてはいけないことがポイントです。

公私の機関との契約

外国人と日本で就労する企業との間で、雇用契約や委任契約など継続的な契約が必要です。

また契約締結にあたっては、労働基準法15条第1項の規定に従って、外国人に対して賃金や労働時間、その他の労働条件を書面で明示しなければなりません。労働条件通知書などにより、必ず外国人に対して書面で明示しましょう。

在留資格「技能」でよくある不許可事例

ここでは、よくある不許可事例としてご相談の多い1号の調理師の事例を取り上げます。

実務経験年数が足りない

必要な実務経験年数は職種によって異なりますが、調理師では10年以上の経験が求められています。調理師として働いていた期間が10年以上必要で、1、2ヶ月足りないだけでも要件を満たしません。

調理師として働き始めて10年以上あっても、転職をして離職している期間があり、その期間を除くと10年を満たさないため不許可になるケースがあります。調理師として在職していた期間が10年以上あることが必要です。

また、実務経験は在職証明書などで立証しなければなりません。以前の職場から在職証明書が出ないと立証が不十分で、実務経験の要件を満たさないと判断され、不許可を受けることもあります。

申請時には、調理師として働いていた期間が10年以上あることを確認し、それを書類によって立証できることが必要です。

不許可事例ではありませんが、相談の多い事例をご紹介します。それは、日本で調理の専門学校を卒業した留学生が日本のレストランで働きたいという相談です。

日本で専門学校に通う人のほとんどが実務経験がないため、「技能」を申請することができません。このため、その調理の専門知識を活かして、企業でメニュー・食品開発などで「技術・人文知識・国際業務」を取得して、日本で働いていく留学生もいます。

しかし、2019年に日本の食文化の海外への普及を促進する目的で、日本の調理の専門学校を卒業した留学生が卒業後も日本の飲食店などで「特定活動」の在留資格を取得して、最長5年間働くことができるようになりました。

(参考:日本の食文化海外普及人材育成事業について

あくまでも日本で調理の技能を学ぶことが目的で、最長5年間しか認められていませんので、その後「技能」を取得して日本で働いていくことは難しいでしょう。ですが、卒業後も日本で調理に携わる仕事ができるという点で、検討することができるものになるはずです。

このように、日本の調理の専門学校を卒業した留学生が日本で働きたい場合は、「技術・人文知識・国際業務」または「特定活動」を検討するのがよいでしょう。

「技術・人文知識・国際業務」、「特定活動」の在留資格については、こちらもお読みください。

在留資格「技能」の範囲外の仕事

前述したように、「技能」の在留資格でできる活動は、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」で、それぞれ1号から9号までの職種に限られます。つまり、その内容から外れると資格外活動と見なされてしまい不許可を受けてしまいます。

例えば、調理師として「技能」の在留資格を取得していても、実際の業務内容は食材を切るだけで調理をしていなかったり、皿洗いや配膳などの単純労働だけだったりすることがあります。これらは「技能」に該当しない業務内容です。

入管は実際に店舗を確認することもあり、「技能」に該当しない業務を行っていることが分かり、申請が不許可になることもあります。業務内容が「技能」に該当しているかどうか注意しましょう。

また、オーナーシェフとして自分で経営と調理の両方を行いたいというご相談もあります。経営を行う場合は「経営・管理」という在留資格が該当しますが、「経営・管理」で1日のほとんどをキッチンで調理師として働くことは認められません。

一方で「技能」は雇用契約などが必要になり、自分で経営することはできないため、オーナーシェフとして経営と調理の両方を行うことはできません。経営することをメインにするのであれば、「経営・管理」を取得して、別に調理師などを雇う必要があります。

在留資格「技能」の申請方法

手続きの流れ

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上の図は日本入国までの手続きの流れを示したものです。

外国人が日本で就労する場合は、日本にある出入国在留管理局で在留資格認定証明書交付申請を行います。在留資格認定証明書が交付された後に、日本国外にある日本大使館・領事館で査証申請を行い、査証発給後に日本に入国するという流れです。

認定申請の標準審査期間は1ヶ月から3ヶ月とされていますが、「技能」の認定申請の平均審査期間は、59.7日(2022年7月〜2022年9月)と発表されています。

(参考:在留審査処理期間(令和4年度第2四半期)

認定申請の審査期間は、カテゴリーや職種によっても異なりますので、あくまでも平均日数として捉えていただくのがよいでしょう。

また、査証申請の審査期間は通常1週間程度です。認定申請の手続き開始から来日まで、申請の準備期間なども含めて最短で3ヶ月程度が見込まれます。外国人を海外から招へいする場合には、余裕を持って準備を進めることが必要です。

なお、よく在留資格とビザ(査証)を混同される方がいますが、実は別のものです。

こちらの記事で詳しく解説していますのでお読みください。

必要書類

ここで説明するのは、在留資格認定証明書交付申請の際に必要な書類です。必要書類は受入機関のカテゴリーや職種によって異なります。

カテゴリーについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

カテゴリー1カテゴリー2
カテゴリーを立証する資料
(カテゴリー1なら会社四季報、カテゴリー2なら法定調書合計表など)
申請書
顔写真
パスポートコピー
従事する業務の内容を証明する所属機関の文書
履歴書

 

カテゴリー1または2に該当する場合は、上記の資料のみが必要書類です。

一方でカテゴリー3または4に該当する場合は、以下の資料の提出も必要になります。

 

カテゴリー3カテゴリー4
カテゴリー1、2の資料
職歴を証明する文書
労働条件通知書
登記事項証明書
直近年度の決算文書(新規事業の場合は事業計画書)
給与支払事務所等の開設届出書
直近3ヶ月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書
または
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

 

上記の職歴を証明する文書は職種によって異なります。職種による職歴を証明する文書は下記のとおりです。

 

職種職歴を証明する文書
調理師
(EPAタイ料理人以外)

働いていたレストランなどからの在職証明書
及び
公的機関が発行する証明書がある場合は、その証明書
(中華料理人は戸口簿及び職業資格証明書)

調理師
(EPAタイ料理人)

タイ料理人として5年以上の実務経験を証明する文書
及び
初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書
及び
申請直前1年間にタイにおいてタイ料理人として妥当な報酬を受けていたことを証明する文書

建築技術者
外国特有の製品製造者
動物の調教師
海底掘削・探査技術者
宝石・貴金属・毛皮加工技術者
所属していた機関からの在職証明書
パイロット250時間以上の飛行経歴を証明する所属機関の文書
スポーツ指導者

スポーツ指導に係る実務に従事していたを証明する文書
または
選手として国際大会に出場したことを証明する文書

ソムリエ

在職証明書
及び
(1)国際ソムリエコンクールで入賞以上の賞を獲得したことを証明する文書
もしくは
(2)国際ソムリエコンクールで国の代表になったことを証明する文書

((1)または(2)を持っていない場合は、ワイン鑑定等に係る技能に関して国、地方公共団体またはこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有することを証明する文書)

 

実務経験は、外国の教育機関で専攻した期間も含めることができると説明しました。これを立証する場合は大学などの在籍期間や専攻科目が分かる資料を提出すればよいでしょう。

さいごに

ここまで「技能」の在留資格について解説してきました。お読みいただき、「技能」についての概要を把握いただけたと思います。

「技能」は実務要件を立証することが必要で、いかに書類で実務経験を立証するかがポイントです。場合によっては行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

リガレアスでは、さまざまな在留資格のサポートを行っています。調理師の相談事例が多いため、今回は調理師の事例を多く説明しましたが、当事務所ではパイロットやスポーツ指導者など、他の職種でも支援実績があります。

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