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    在留期限が過ぎている!オーバーステイ?!どうしよう??

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    リガレアス行政書士事務所の水澤美砂子です。

    日々、日本ビザに関するご相談をいただいており、日本へお越しになる外国人の方々と深く関わるこの仕事を通して「国境を超えた幸せな人の暮らし・共に生きることは何か」、ということを日頃から感じています。

    今回は、「オーバーステイ(不法残留)」についてお伝えさせていただきます。

    夏休みや年末年始のシーズンに起こり得ることが多く、在留期限が迫っていることを気付かない方が案外いらっしゃいます。非常に重要なことですので、外国人雇用を行っている企業の人事担当者様・留学生受入れの際にビザ手続に携わる学校関係者様、そして日本にお住まいの外国人の方々は、是非ご一読ください。

    本記事では以下の点についてお伝えしています。

    なお、本記事の内容は、私が実際に直面したオーバーステイに関する経験に基づいて解説しています。

    お付き合いいただけますと幸いです。

     

    母子が直面したオーバーステイ問題

    私事で恐縮ですが、私がこの仕事をするきっかけになったことがあります。

    15年ほど前になりますが、私は某市役所の総合受付の仕事をしていました。ある日、アジア圏出身と思われる女性が、今にも泣きそうな表情で総合受付に来ました。

    「私はこの子を置いて、日本から出国しないといけない。でも、この子を置いていくことはできない・・・。どうしたら良いか分からないのでここに来ました。」と言いながら、涙をこぼしました。その女性の傍には10歳ぐらいの男の子がいました。

    この坊やはこれからお母さんと離れて日本で生きていくの?まだ、ちびまる子ちゃんや私の娘と同じ年齢ぐらいの子どもで、どうやって生きていくの?辛すぎる・・・と思ったのと同時に、事態の詳細が全く分からなかったため、どう言葉をかけて良いか分からず、「大丈夫ですよ。是非こちらの部署で相談してみてください」と言うしか他にありませんでした。

    当時の私は、日本の入管法について全く知識がありませんでした。法律・・・??それは、牢屋に入る?裁判?脱税?無駄な抵抗はやめろ!逮捕する!等のGメン75や太陽にほえろ(古いですね)のシーンを連想するくらいでした。六法全書を書店で見ても(開いたのですが、目がクラクラして“読む”には該当しない状態だった )、難しいし意味不明な文言が選り取り見取りにいっぱい並んでいる印象でした。

    なぜ、この女性は子どもを残し母国に帰らなければいけないのか?原因は何なのか?日本人の私が力になれることは一体何だったのだろうか?日に日に疑問が浮かんできました。

    母国に帰らなければならない、ということは日本のビザに関係しているのではないか?と考えるようになり、法律ビギナーの私は、目がクラクラしながらも諦めず調べていき、「出入国管理及び難民認定法」という日本の法律が関わっていると知りました。

    この女性が子供を残して母国へ帰らないといけないということは、「オーバーステイ(不法残留)」「不法入国」「不法上陸」の可能性?もしかしたら、この女性の「結婚相手が死亡?」「離婚した?」等、様々なことが考えられます。この中で、オーバーステイが原因とすると、どのような手続きが必要でしょうか。

     

    オーバーステイになってしまった時の手続き

    母国以外の国で暮らすには、その国のビザを合法的に取得する必要があります。日本では、短期のビザ、中長期のビザ、仕事ができるビザ、留学生のビザ、日本人と結婚した人のビザ、永住ビザ等、現在29種類の在留資格があります。(ビザと在留資格の違いについては、弊社広瀬のブログ「日本で働く外国人にとってビザが重要な理由|行政書士が求められる背景も併せて解説」を、是非ご参照ください)。

    関連記事:日本で働く外国人にとってビザが重要な理由|行政書士が求められる背景も併せて解説

     

    これらの在留資格を適切に取得し日本で暮らしていたのですが、日本に在留できる期限到来後も不法な状態で残留してしまうのがオーバーステイ(不法残留)で、退去強制事由となります。

    また、オーバーステイをすると、国外退去強制となったり、懲役や罰金が科せられてしまう場合もあり、一旦退去強制になると、その後最低5年は日本へ入国できません。更に、刑事処分になると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることとなり、前科として記録も残ります。

    もし、この女性が3年以下の懲役になってしまったら・・。お母さんは刑務所に入り、坊やと暮らせなくなります。300万円以下の罰金となってしまったら・・。300万円あったら坊やの学費を準備したり、坊やの大好物をいっぱい食べさせてあげられる、坊やはお母さんと一緒にお母さんの故郷へ旅行することもできるでしょう。

    オーバーステイとなってしまうと、暮らしも未来設計も大きく変わってしまいます。

    このようなオーバーステイ・・・不法残留・・・になってしまった後は、どのような手続になるのでしょうか。

    以下が主な手続きです。

    (1)出国命令を受け、速やかに帰国する

    (2)退去強制処分を受け、直ちに送還される

    (3)在留特別許可を受け、帰国せずに特別に日本に在留する

    (4)退去強制手続及び出国命令手続の流れ(フローチャート)

     

    (1)出国命令を受け、速やかに帰国する

    オーバーステイしてしまい、入国警備官の違反調査及び入国審査官の違反審査を経て、下記のすべてを満たし認定されると、出国命令対象者となります。

    ① 出国の意思をもって自ら入管に出頭した

    ② 不法残留以外の退去強制事由に該当していない

    ③ 窃盗罪などの一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでない

    ④ 過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがない

    ⑤ 速やかに日本から出国することが確実と見込まれる

    出国命令対象者は、15日を超えない範囲内で出国期限が定められ出国命令書が交付されます。身柄は拘束されずに帰国することが可能です。

    ただし、住居及び行動範囲の制限や必要と認める条件が付されることがあります。そのような状況でも、急いで出国期限までに身の回りの整理をして、帰国の準備をしなければなりません。

    なお、日本を出国した出国命令対象者は、原則として出国した日から1年は日本に入国できません。しかし、退去強制の少なくとも5年間と比べると、上陸拒否期間はかなり軽減されます。

     

    (2)退去強制処分を受け、直ちに送還される

    出国命令対象者に当てはまらない場合は、退去強制令書が発付され速やかに送還されます。直ちに送還することができないときは、送還可能のときまで入国者収容所・地方出入国在留管理局の収容所等に収容されます。送還先は、被退去強制者の国籍又は市民権の属する国が原則です。

    過去に退去強制歴が無い人は、日本から送還されて5年間は日本に入国できません。過去にも退去強制されたことがある人及び出国命令で出国したことがあり、新たに退去強制となった人は、日本から送還された後10年間は日本に入国できません。

     

    (3)在留特別許可を受け、帰国せずに特別に日本に在留する

    前述の、子どもを残して日本を出国しないといけない、という女性と今出会っていたら、私はこの方法で救済できないか徹底的に考えます。

    その前に、まず、この女性と坊やにテーブルについていただいて、女性には温かな香りが良いハーブティと坊やには強い子のミロを作りお出しして、一息いれてもらいます。そして、立ち入った内容になるかもしれませんが、この女性からお話や経緯を注意深く伺います。

    この女性が退去強制対象者に該当すると認定されたとします。でも、その認定が誤りであったり、誤ってはいないけれどこの坊やのためにも日本の在留を特別に認めてほしいと希望する場合は、入管での手続中に口頭審理の請求をします。

    そして、特別審理官による口頭審理で認定に誤りがあるかどうか判定してもらいます。誤りが無く退去強制対象者であるこの女性がそれを認め帰国を希望する場合は、退去強制令書が発付され退去強制となります。

    しかし、どうしても日本での在留を認めてほしい事情(*参照)があり、在留を希望する場合は、法務大臣に異議申出を行います。そして、最終的な判断を法務大臣に仰ぐのです。

    法務大臣が、特別に在留を許可する事情があると裁決した場合は、この女性は坊やと日本で引き続き暮らせるようになります。この特例が、在留特別許可です。この在留特別許可は、法務大臣の自由裁量にゆだねられていて温情を受けた特別の措置となるのです。

    ①日本人と結婚している

    ②坊やは日本人である

    ③かつて、日本国民で日本に本籍があった

    ④人身取引等で、他人の支配下に置かれ日本に在留している

    ⑤人道的な配慮が必要な諸般の事情がある 等

    上記の事情があると、在留特別許可を受けられる可能性が高くなります。

     

    (4)退去強制手続及び出国命令手続の流れ(フローチャート)

    以下は、出入国在留管理庁が出している手続きの流れです。

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    画像引用元:出入国在留管理庁ホームページ

     

    このフローチャートにありますように、入国警備官の違反調査に始まり、

    ①左側に記載があるフローチャートは、出国命令対象者に該当した人の手続の流れです。

    (入国警備官から入国審査官へ引継がれ違反審査を経て、出国命令書が交付され日本を出国する)

    ②右側に記載があるフローチャートは、不法残留等の容疑があり、退去強制対象者に該当した人の流れ

    (収容・入国審査官に引渡され違反審査を経て、退去強制令書発付を受け送還される)と、

    退去強制対象者に該当した人でも特別な事情があると認められ、在留特別許可を受けた人の流れです。

    (退去強制対象者に該当すると認定を受けた後、口頭審理を請求し特別審理官の口頭審理を受け、退去強制対象者の該当認定に誤りはないと判定を受ける。しかし、どうしても日本に残る必要がある特別な事情がある場合は、その判定に異議の申出を行い法務大臣の裁決を仰ぐ。特別に在留を許可する事情があると裁決され、在留特別許可を受ける)

     

     

    どの国の人も皆同じで、お互いを大切に思いながら、この国でどう生き抜くか一緒に考えながら前に進んでいきたい

     

    母国以外で暮らすということは、想像以上に困難があると思います。もう数十年前になりますが、アルゼンチンのブエノスアイレスで国営ラジオ局の日本語放送の仕事をしながら同市に3年ほど住んでいた私は、日本では見たことがない多くの光景を見ました。

    長く続いた軍事政権が終わった直後の時代で、アルゼンチンは社会が混乱していました。道端にはストリートチルドレンが大勢いたり、日系人の方々が農業やクリーニング業を営みながら生活していたことも鮮明に覚えています。日本からの留学生もいました。昨年亡くなったマラドーナがメキシコワールドカップで優勝した時の市民の歓喜、貧民街が一夜にして出来上がったりなど、多くの光景を目の当たりにしました。どの人も精一杯生きている姿を見ました。

    このコロナ禍の日本国内も生きるのに精いっぱいな光景が多々あり、当時のアルゼンチンで見た光景が脳裏に浮かび、日本人も外国人も同じと感じます。言葉の壁がある分、日本に在留する外国人の方たちは緊急事態の中で情報をキャッチするのも大変と思います。

    この仕事を始めたときに、私には懇切丁寧に入管法実務を教えてくれた上司がいました。この上司は平成2年の入管法改正を行った法務省OBで、東京入管局長を歴任した人でした。東京入管局長だった人が、申請案件を持ち入管のカウンターに並び、申請をし、多くの外国人の暮らしの根底となるビザ手続を大切に行っている姿を、私は入管に同行するたびに見ました。

    3.11の時は、運よく断水にならなかった事務所の水道の水を、空になったペットボトルに大事に汲んで、無事に家に戻れるようにと社員に持たせてくれました。この上司が教えてくれたことの中で、一番私に残っていることは、「人の弱みにつけこむような商売はしない」ということでした。今も、この教えはリガレアスに生き続けています。

     

    今は日本への入国制限も強まり、手続きや取扱いの変更が頻繁にあります。複雑ですので分かりにくいことも多々あると思うのです。入管法で分からないことや困ったことがありましたら、いつでも遠慮なくご連絡ください。一緒に皆様と生きていかれたら、とても嬉しく思います。

    オーバーステイでお困りの場合は、リガレアスへご相談ください。