就職活動のための特定活動ビザとは?要件や必要書類について
- 2022.10.05
- 2024.10.26
リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。
日本に留学をした多くの留学生は、日本で学校を卒業した後も日本で働きたいと考えるのではないでしょうか。実際に、令和元年度私費外国人留学生生活実態調査によると、54.9%の留学生が日本での就職を希望しています。
(参考:日本学生支援機構ホームページ)
このように日本に留学している半数以上の留学生は日本での就職を希望しています。
日本で就職活動をする際、学校を卒業する前に就職先を見つけることが一般的ではあると思いますが、卒業までに就職先を見つけることができずに、卒業した後も就職活動を継続することを希望する留学生も少なくないはずです。その場合、在留期間が残っていれば卒業後も「留学」ビザで滞在できると思っている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、日本で就職を希望している留学生や留学生を受け入れている教育機関のご担当者の方に向けて、留学生が学校を卒業した後も就職活動を続ける際のビザ手続きについて解説していきます。
本記事をお読みいただけば、どのような手続きを行う必要があるのかがお分かりいただけます。
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目次
就職活動のための特定活動ビザとは?
卒業後も日本で就職活動を行う場合、「留学」のまま日本に在留することはできず、「特定活動」へ在留資格を変更しなければなりません。
まずはこの「特定活動」とはどのような在留資格なのか簡単に説明しましょう。
「特定活動」とは、他の在留資格に該当しない活動を行う外国人について、入国や在留を認める場合に法務大臣が個々に活動を指定する在留資格です。「特定活動」には法務大臣があらかじめ告示で定める活動(告示内特定活動)と法務大臣が人道上や特別の事情によって特別に在留を認める告示で定められていない(告示外特定活動)があります。
告示内特定活動としては、ワーキングホリデーやインターンシップ、アマチュアスポーツ選手などがあります。他方、告示外特定活動の例としては、老親扶養や出国準備、就職先内定者などです。
告示内特定活動だけでも1号から50号まであり、単に「特定活動」といってもどのような活動が許可されているのかはわかりません。そのため、告示内、告示外ともに「特定活動」が許可されると、パスポートに「指定書」という紙が貼られ、その「指定書」に日本でできる活動内容が記載されます。
こちらが「指定書」のサンプルで、氏名と国籍、指定された活動内容が記載されています。なおこのサンプルは、採用内定者が入社まで日本に在留するための特定活動です。
「特定活動」の在留資格を持つ場合は、在留カードを見るだけではどのような活動が許可されているのかがわからないので、必ず「指定書」を確認する必要があります。
さて、ここで本題に戻りますが、本記事で解説する就職活動のための「特定活動」は、告示外特定活動に当たるもので、日本で大学や専門学校を卒業した留学生が、卒業後も引き続き就職活動を行うための在留資格です。
「特定活動」が許可されると6ヶ月の在留期間が与えられ、もしその期間内に就職先が見つからず、継続して日本で就職活動を行う場合は、1度だけ更新が認められます。卒業後から最長1年間は就職活動のための「特定活動」で滞在することが可能です。
就職活動中も日本でアルバイトを行いたい場合は、資格外活動許可を取得すれば週28時間以内のアルバイトをすることもできます。
資格外活動許可についてはこちらの記事もご参照ください。
・日本ビザ特化の行政書士事務所
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卒業後も就職活動を継続する際はビザの切り替えが必須
入管法では「留学」の在留資格は、日本で大学や専門学校、日本語学校などで教育を受ける活動と規定されています。留学生が学校を卒業すると、いくら「留学」の在留期間が残っていても、「留学」の在留資格に該当しなくなります。
このため、学校を卒業した後は速やかに日本を出国するか別の在留資格に変更しなければなりません。
さらに、「留学」の在留期間が残っており「留学」に係る活動を3ヶ月以上行っていない場合(ここでは学校に3ヶ月以上通っていない場合)には、在留資格取消に該当してしまいます。在留資格取消しになると、退去強制事由に該当しますので、最悪の場合は退去強制や出国命令によって日本を出国することになるでしょう。
このように、学校を卒業した後も「留学」のまま日本に残ることは望ましくありません。「留学」の在留期間が残っていても、卒業後も日本で引き続き就職活動を行う場合には、卒業後できる限り早く「特定活動」への変更が必要です。
就職活動のための特定活動ビザの要件
就職活動のための「特定活動」へ変更する要件は以下の通りです。
- 日本の大学または専門学校を卒業していること
- 在学中から引き続き就職活動を継続していること
- 卒業した学校からの推薦があること
- 在留中の経費支弁能力があること
日本の専門学校を卒業した場合は、専門士を取得していることが必要です。さらに専門学校での専門課程の修得内容が、「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格に該当する活動と関連がないと「特定活動」への変更は認められませんので注意しましょう。
「技術・人文知識・国際業務」の申請要件など詳しい解説はこちらをお読みください。
また、在学中から継続して就職活動を行っていることが求められますので、在学中に全く就職活動を行っていない場合には許可されない可能性もあります。
前述のように、日本の大学や専門学校を卒業していることが求められ、日本語学校を卒業した留学生は就職活動のための「特定活動」への変更は対象外です。しかし、海外の大学を卒業している留学生については、以下の要件を満たした場合に就職活動のための「特定活動」へ変更することが可能です。
【留学生の要件】
- 海外の大学を卒業し、学士以上の学位を取得していること
- 日本語学校での出席が良好であること
- 在中中の経費支弁能力があること
- 日本語学校在籍中から日本での就職活動をしていること
- 卒業後も日本語学校と定期的に面談を行い、就職活動の進捗を報告し、就職活動に関する情報提供を受けること
- 日本語学校から推薦があること
【日本語学校の要件】
- 告示で定められた日本語学校であること
- 直近3年間、「適正校」の通知を3年連続で受けていること
- 職業安定法に基づく職業紹介事業の許可の取得もしくは届出を行なっていることまたは就職を目的とするコースを備えていること
- 在籍していた留学生の日本での就職について直近1年間で1名以上または直近3年間で2名以上の実績があること
- 留学生と卒業後も定期的に面談し、就職活動の進捗確認及び就職活動に関する情報提供を行うこと
- 「特定活動」の在留期間内に就職が決定しなかった場合または就職活動を取りやめる場合に適切な帰国指導を行うこと
日本語学校卒業生に対しては、大学や専門学校卒業生より要件が多いです。留学生だけでなく日本語学校側にも要件がありますので、事前に要件を確認しておくのがよいでしょう。
就職活動のための特定活動ビザ申請に必要な書類
就職活動のための「特定活動」へ在留資格を変更する場合に必要な書類は以下のようになります。どの学校を卒業したかによって書類が異なりますので、しっかりと確認しておきましょう。
必要書類 | ||
大学を卒業 | 専門学校を卒業 | 日本語学校を卒業 |
申請書 | ||
顔写真 | ||
パスポート、在留カード | ||
経費支弁能力を証する資料 | ||
卒業証明書 | ||
学校からの推薦状 | ||
継続して就職活動を行なっていることを明らかにする資料 | ||
専門士の証明書 | 日本語学校の出席証明書 | |
成績証明書 | 海外の大学の卒業証明書 | |
専門課程での修得内容の詳細を 明らかにする資料 | 定期的に面談し、就職活動に関する 情報提供を受ける旨の確認書 | |
日本語学校が要件を満たしていることの確認資料 |
提出資料の中でも、「就職活動を行っていることを明らかにする資料としてどのような書類を提出すればよいか」という質問は多いです。これについてはエントリーシート、企業との面接や選考結果などのメールのやり取りなどを提出すればよいでしょう。
日本語学校を卒業した留学生に求められる、定期的に面談し就職活動に関する情報提供を受ける旨の確認書は、留学生が提出する資料です。決まった様式がありますので、その様式で入管へ提出します。
海外の大学等を卒業した留学生に対する就職活動支援に関する確認書
日本語学校が要件を満たしていることの確認資料は、日本語学校が作成する資料になりますが、こちらも様式がありますので、その様式を使用して準備しましょう。
海外の大学等を卒業した留学生の就職活動支援に関する日本語教育機関の要件適合状況について
教育機関側からのアナウンスも重要
前述のように、学校を卒業後は速やかに帰国または在留資格変更を行う必要がありますが、「留学」の在留期間が残っているから大丈夫だと思い込み、そのまま在留してしまう留学生は多いです。
また、学校側も留学生が卒業すれば無関係というわけではありません。
就職活動のための「特定活動」は、学校からの推薦状の提出を条件に許可されていることから、入管は留学生を受け入れる教育機関に対し、留学生が就職先を決めた場合には内定事実の確認や就職先企業の名称や所在地の確認、就労の在留資格への変更許可を行なったことまで確認するよう求めています。一方、就職先が決まらなかった場合には、留学生に対して帰国の指導や帰国の事実を確認するよう学校側に要求しています。
万一、卒業後も「留学」のまま在留期間を経過し、不法残留になってしまった場合は、学校側の在留管理が不適切とみなされ、「慎重審査対象校」と認定されてしまう可能性もあるでしょう。
学校が「慎重審査対象校」と認定されてしまうと、「適正校」とは異なり留学生の在留資格認定証明書交付申請等で提出資料の簡素化などを受けることができず、手続きにおける作業量がかなり増えてしまうなど、その後の留学生受け入れについて影響が出てしまいます。
「適正校」や「慎重審査対象校」についてはこちらの記事もお読みください。
このように、学校を卒業した後でも、在留資格は留学生本人だけの問題でなく、学校の在籍管理の責任も残っています。留学生が学校卒業後も適切な手続きを行うために、在学中に留学生に向けたガイダンスなどを実施して、事前に周知しておくことは必要です。
また、留学生に適切な指導をするためにも、学校の担当者の方は留学生が卒業した後に必要な手続きを知っておく必要があります。
留学生が教育機関を卒業した後に行う手続きについては、こちらの記事もご参照ください。
さいごに
ここまで、留学生が学校卒業後も継続して就職活動する際のビザ手続きについて解説してきました。在留期間が残っていても、卒業後そのまま「留学」でいることは望ましくなく、すぐにでも「特定活動」へ変更する必要があることをご理解いただけたと思います。
在留資格は外国人本人の問題であることには変わりませんが、留学生を受け入れている教育機関にも在籍管理の点で責任はあり、留学生に対し必要な手続きを周知しなければならないことも併せてご理解いただけたのではないでしょうか。
リガレアスでは、就職活動のための「特定活動」への変更申請サポートはもちろん、「留学」の在留資格申請サポートや在留管理に関するアドバイスも行い、留学生の入口から出口までトータルで支援しています。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。