リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

飲食業界でも人材が不足していると言われています。その中で外国人採用が解決策の一つとして挙げられることが多くなっており、外国人調理師の雇用を検討している飲食店も少なくないでしょう。

飲食店で外国人調理師を雇用して働いてもらうためには、当然ながらビザが必要です。しかし、日本のビザの種類は多く、どういったビザを取得すればよいか分かりにくいのではないでしょうか。

そこで今回は外国人調理の雇用を検討している飲食店の方向けに、外国人調理師を雇用する際に必要なビザについて解説します。

この記事をお読みいただければ、外国人調理を雇用する際にどのビザを申請すればよいか、またその際の注意点などをご理解いただけます。

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外国人調理師のビザとは?

外国人の調理師が取得できる在留資格はいくつか種類があります。

  • 技能ビザ
  • 特定活動ビザ
  • 身分系ビザ
  • 特定技能ビザ

ここでは、それぞれの在留資格について解説していきます。

技能ビザ

技能ビザは日本の経済社会や産業の発展に寄与するとの観点から、日本人で代替できない産業上の特殊な分野に属する熟練した技能をもつ外国人を受け入れるための在留資格です。

調理師の場合は中国料理やフランス料理の料理人、パンやデザートのパティシエなどが技能ビザになります。

なお、調理師だけではなく、ソムリエやパイロット、スポーツ指導者なども技能ビザに含まれます。

技能ビザについては、こちらの記事でも解説しています。

特定活動ビザ(日本の食文化海外普及人材育成事業)

日本の食文化海外普及人材育成事業とは、農林水産省が実施するもので、日本の食文化の海外普及を目的に、調理または製菓の専門学校を卒業した留学生が引き続き日本国内の飲食店などで働きながら技術を学べる制度です。

日本の調理や製菓の専門学校を卒業した留学生が、日本の飲食店などで働く場合に取得できる在留資格になります。ただし、日本の食文化の海外普及を目的とした人材育成制度ですので、実習計画を策定し、その計画に基づいて実習期間内に下ごしらえから料理の完成に至るまでの一連の作業工程を実習することが従事できる業務内容です。

また日本の食文化の海外普及が目的のため、就労が終わった後に帰国することが前提となり、日本で働くことができるのは最長で5年間です。

なお製菓分野では、3年以内に製菓衛生師試験に合格して免許を取得した場合に、最大5年間働くことができます。

身分系ビザ

「永住者」や「日本人の配偶者等」などの身分や地位に基づいて与えられる在留資格です。

身分系のビザは就労制限がないため、調理師として働くことができます。またこれまでの経験は必要ありませんし、調理内容が外国の料理であることも求められません。日本料理店やフレンチレストランのようなお店だけでなく、ファミレスや居酒屋といったお店でも働くことが可能です。

身分系ビザについては、こちらの記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

特定技能ビザ

人材確保が困難な産業上の分野において、一定の専門性や技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。人材確保が困難な産業上の分野として、12分野が特定産業分野に指定されています。12分野のうちの外食業分野では、外国人が飲食店で調理業務を行うことができます。ただし、調理、接客、店舗管理など外食業全般に従事しなければならないため、調理だけを行うことはできません。そのため、その他の在留資格に比べて調理師としてはかなり限定的になります。

特定技能ビザについての概要はこちらの記事で解説しています。

外国人の調理師が取得できる在留資格の比較

それぞれのビザの違いを表にすると以下のようになります。

 

技能ビザ特定活動ビザ身分系ビザ特定技能ビザ
経歴実務経験10年以上日本の専門学校等を卒業なし技能試験及び日本語試験に合格
業務内容外国料理の調理日本・外国料理問わない制限なし外食業全般
就労先外国料理店飲食店、菓子小売店、
パン小売店
制限なし飲食店、持ち帰り飲食サービス業、配達飲食サービス業、給食事業等の飲食サービス業
在留期間制限なし最長5年制限なし最長5年


身分系ビザは制限がないため、雇用先からすると最も雇用しやすい在留資格でしょう。

技能ビザは10年以上の実務経験が必要で、業務内容も外国料理の調理でなければなりません。しかしその分飲食店にとっては即戦力になるはずです。

一方、特定活動ビザは実務経験は不要で、日本の専門学校などを卒業していることが必要です。ただし最長でも5年間ですので、長期的に働いてもらうことは難しいビザになります。

また、前述のように特定技能ビザは調理だけに従事することはできず、調理、接客、店舗管理など外食業全般に従事しなければなりません。

家族滞在ビザや留学ビザをもつ外国人が資格外活動許可を取得すれば、週28時間以内で働くことができます。資格外活動許可は、風営法に関わる職種以外の職種であれば働くことができますので、調理師として働くことも可能です。

資格外活動許可について詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みください。

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技能ビザを取得するための条件

前述のとおり、外国人調理師が取得できる在留資格は複数ありますが、専門的な調理師を雇用するとなると技能ビザです。本記事では技能ビザにフォーカスして取得条件を説明していきます。

技能ビザの取得条件は以下のようになります。

  • 外国に特有な産業分野
  • 10年以上の実務経験
  • 日本人と同等額以上の報酬
  • 日本の企業との契約

外国で考案され、日本において特殊なものを要する業務に従事しなければなりません。中国料理やフランス料理、インド料理などの調理師がこれに該当します。またパンやデザートなどの食品を製造するパティシエなどもこれに当たります。

これは必ずしも外国人の国籍の料理でなければならないわけではなく、例えばアメリカ国籍の方がフランス料理の調理をすることも可能です。

熟練した技能が必要なため、調理師として10年以上の実務経験が求められます。外国の教育機関で調理や食品の製造に関して勉強した期間も含むことが可能です。

一方で、アルバイト期間は熟練した技能とはいえないため、実務経験として認められません。また調理師としての経験が必要ですので、10年間でバーテンダーやウェイターとして働いていた期間も含まれませんので注意しましょう。

なお、タイの調理師として働く場合で、タイ料理人として初級以上の技能水準に関する証明書をもち、ビザ申請直前1年間にタイでタイ料理人として妥当な報酬を受けていた場合には、実務経験が5年に短縮されます。ただし、この条件を満たせないとタイ料理人であっても10年以上の実務経験が必要です。

また、日本人と同等額以上の報酬を受けることが求められます。「〇〇円以上」といった明確な金額はなく、個々の企業の賃金体系や他の企業の同種の職種の賃金を参考に日本人と同等額以上であるかで判断します。そのため、いくら以上あれば許可されるということはいえません。報酬にはボーナスを含みますが、通勤手当や住宅手当といった実費弁償の性格をもつものは含まれません。

技能ビザの必要書類

ここでは在留資格認定証明書交付申請の必要書類を説明します。

なお、必要書類はカテゴリーによって異なります。

カテゴリーについてはこちらの記事をお読みください。

カテゴリー1カテゴリー2
カテゴリーを立証する資料

(カテゴリー1なら会社四季報、カテゴリー2なら法定調書合計表など)

申請書
顔写真
パスポートコピー
従事する業務の内容を証明する所属機関の文書
履歴書


カテゴリー1や2に該当すれば、必要書類は上記になります。

一方でカテゴリー3や4に該当する場合は、以下の書類も必要です。

 

カテゴリー3カテゴリー4
カテゴリー1、2の資料
職歴を証明する文書
労働条件通知書
登記事項証明書
直近年度の決算文書(新規事業の場合は事業計画書)
給与支払事務所等の開設届出書
直近3ヶ月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書

または

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書


職歴を証明する文書は、EPAタイ料理人とそれ以外で必要書類が異なり、以下のようになります。

 

職種職歴を証明する文書
調理師

(EPAタイ料理人以外)

働いていたレストランなどからの在職証明書

及び

公的機関が発行する証明書がある場合は、その証明書(中華料理人は戸口簿及び職業資格証明書)

調理師

(EPAタイ料理人)

タイ料理人として5年以上の実務経験を証明する文書

及び

初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書

及び

申請直前1年間にタイにおいてタイ料理人として妥当な報酬を受けていたことを証明する文書

 

実務経験は外国の教育機関で専攻した期間も含めることができるので、これを立証する際は、大学などの在籍期間や専攻科目が分かる資料も提出するのがよいでしょう。

技能ビザを申請する際の注意点

ここでは、技能ビザで申請する際の注意点を解説します。

業務内容

外国で考案された熟練した技能が必要な料理を調理するかがポイントになります。

例えば、単に温めるだけで熟練した技能が必要とは思えない調理であったり、ラーメンなどの外国で考案され日本において特殊とは言えない料理だと許可されません。いくら外国で考案された熟練した技能が必要な料理を調理する場合でも、その飲食店においてメニューが1品や2品しかないと許可を受けるのは難しいでしょう。

また、小さいお店にも関わらず同じシフトに料理人が3人も4人も入っていたり、シフトに接客担当が全く入っておらず料理人しか入っていなかったりすると厳しく審査される可能性があります。これは技能ビザをもった外国人が接客などの調理以外の業務に従事していると疑われたり、1人1人の調理の業務量が少ないと判断されたりするためです。調理担当、接客担当など業務分担をしてシフトを組んでおく必要があります。

他にも、外国人調理師の方が自分で調理と経営の両方を行いたいという相談がよくあります。経営を行う場合は経営管理ビザが該当しますが、経営管理ビザではほとんどの時間を調理師としてキッチンで働くことは認められません。一方、技能ビザでは雇用契約などが必要で、自分で経営を行うことができないため、オーナーシェフとして調理と経営の両方を行うことはできません。自分で飲食店を経営する場合には、他に調理師などを雇う必要があります。

実務経験

10年以上の実務経験があることを文書によって立証しなければなりません。たとえ実際に調理師として働いていても、勤務していたレストランが閉店しているなどで在職証明書が発行されないと実務経験として立証することが難しくなります。

前述のように、アルバイトやバーテンダー、ウェイターとして働いていた期間を含むこともできませんので、10年間の実務経験の中にそのような期間があると許可は難しいでしょう。

また、特定技能ビザや身分系ビザで日本に在留していた期間に飲食店で調理をしていた期間を実務経験とすることができるかといったご相談があります。理論上は可能ですが、外国で考案された料理かどうかという点で実務経験に含めることは難しいでしょう。

資格外活動許可で週28時間で働いていた場合もアルバイトとして働いていた期間になるため、実務経験として認められません。

就業環境

飲食店の経営状況も審査の対象です。

例えば、売上高や債務超過、店ができてからの年数なども審査されます。売り上げが少ないことや債務超過があるということだけで許可が受けられないわけではありませんが、外国人調理師に対して給料が払えないと判断されると許可されない可能性があります。

また、社会保険などに加入していないと消極的な要素になりますので注意しましょう。

さらに、本格的な外国料理を調理をするのに必要な器具や設備が揃っていることも必要です。必要な器具や設備が整っていないと、実際に外国料理を提供するのか、外国人調理師が調理を行うのか疑われてしまいます。

就業環境については、直接的なビザ申請条件ではありません。しかし、外国人調理師が実際に外国料理を調理するのかという観点から審査の対象となりますので、就業環境を整えた上でビザ申請に臨みましょう。

さいごに

ここまで外国人調理師を雇用する際のビザについて、技能ビザを中心に解説してきました。外国人調理師を雇用する際にはどのようなビザがあるか、技能ビザの取得要件や申請の際の注意点などご理解いただけたと思います。

外国人調理師を雇用するためのビザはいくつかありますが、専門的な調理師を雇用するとなると技能ビザになるでしょう。

技能ビザの要件は一見するとシンプルに思われますが、実際にビザ申請をする際は要件を満たしているかどうかの判断や立証資料の準備の難しさがあります。申請をして不許可を受けてしまうと、再申請を行うのはとても大変です。そのため、慎重に要件を確認し、書類を準備してから申請を行う必要があります。

これまで外国人を雇用してビザを取得できているからといっても、書類を準備すれば必ず許可されるわけではありません。申請に少しでも不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

リガレアスでは技能ビザだけでなく、その他の就労ビザや身分系ビザなど、さまざまなビザでの申請実績があります。また、ビザ申請だけでなく、スポットでのビザコンサルテーションや在留管理支援なども行っておりますので、幅広いケースでのご支援が可能です。

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