リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

外国人が日本に滞在するためには在留資格が必要となりますが、その中でも「定住者」という在留資格をご存知でしょうか。

身分系の在留資格と言われる中でも、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった在留資格は比較的よく知られた在留資格だと思います。しかし「定住者」は企業の採用担当者の方でも聞き馴染みがない方が多いようで、「定住者」を持つ外国人を採用して大丈夫かといったご相談を受けることがあります。

そこで今回は「定住者」の在留資格について解説します。

「定住者」とはどういった外国人が取得できる在留資格で、どのような活動ができるのか、また混同されやすい「永住者」との違いにも触れていきます。

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在留資格「定住者」とは?

「定住者」とは、他のいずれの在留資格にも該当しないものの、日本において相当期間の在留を認める特別な事情があると法務大臣が判断した人を受け入れるために設けられた在留資格です。

法務大臣があらかじめ定住者告示で定める一定の類型の地位に当てはまる外国人に日本での在留を認める「告示定住」と、定住者告示に当てはまらないが法務大臣が個々に活動の内容を判断して日本での在留を認める「告示外定住」があります。

 

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「定住者」と「永住者」の違い

「定住者」と「永住者」は身分系の在留資格で、就労に制限がないという点ではどちらも同じです。

「永住者」は在留期限の定めはなく、期間更新が不要になります。一方で「定住者」は在留期限が、6月、1年、3年、5年のいずれかから決定され、更新申請が必要になります。また更新申請の時点で身分関係が変わっていたり、その他の要件を満たしていないような場合には不許可を受けることもあります。

このように「定住者」は、在留期限があり更新申請が必要な点や、更新申請時の状況によっては不許可を受けてしまう可能性があるという点で「永住者」とは異なるということを認識しておきましょう。

「永住者」について詳しく知りたい方は、以下の記事もお読みください。

「告示定住」と「告示外定住」

「定住者」の在留資格には、「告示定住」と「告示外定住」の二つの類型があります。

「告示定住」は在留資格認定証明書交付申請の対象となりますが、「告示外定住」は在留資格認定証明書交付申請の対象外です。つまり「告示定住」に該当する外国人であれば、「定住者」として新規で日本に入国することができますが、「告示外定住」に該当する外国人は日本に「短期滞在」や「家族滞在」など別の在留資格で日本に入国し、日本国内で「定住者」へ在留資格を変更しなければなりません。

「告示定住」と「告示外定住」の具体例は後述しますが、「告示定住」は日系人の方などが該当し、「告示外定住」は難民などが該当します。

在留資格「定住者」で認められる在留期間

「定住者」で認められる在留期間は、6月、1年、3年、5年のいずれかです。

外国人の状況によって入管が審査、判断して在留期間を決定します。

ただ、難民に認定されると原則5年が与えられるなど、類型によって決まった在留期間があるものもあります。

在留資格「定住者」の就労制限

「定住者」の在留資格を持つ人は、従事する業務内容や勤務時間、勤務先などに制限はなく、正社員や派遣社員、アルバイトといったさまざまな雇用形態で働くことができます。また、外国人では在留資格の取得が難しい単純労働のような分野でも就労が可能です。

つまり日本での就労活動に制限はなく、日本人と同じように働くことができます。

なお、「定住者」は就労の在留資格ではなく、身分関係によって認められる在留資格ですので、類型によっては必ずしも日本で働くことが求められるものではありません。

定住者ビザの類型

ここでは、どういった外国人が「定住者」を取得できるか、告示定住と告示外定住に分けて見ていきましょう。

告示定住

定住者告示は1号から8号まであります。それぞれ具体例を示しながら解説していきます。

なお、2号は削除されています。

1号(ミャンマー難民)

いわゆる「第三国定住」による難民の受け入れのための規定です。

これはアジア地域に一時滞在する難民が該当します。日本社会へ適応能力があり、生計を立てることができる仕事に就くことが見込まれる人やその家族が取得できるものです。

3号(日系2世・3世)

日本人の子として出生した者の実子が取得できるものです。

例えば、日本人の孫(3世)や元日本人の日本国籍離脱後の実子(2世)、元日本人の日本国籍離脱前の実子の実子である孫(3世)が該当します。

なお、日本国籍離脱前の実子の場合は、「定住者」ではなく「日本人の配偶者等」になります。

4号(日系3世)

日本人の子として出生した者でかつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるものの実子の実子が取得できます。

これは、日系1世が日本国籍を離脱した後に生まれた実子(3号定住者)の実子(3世)について規定したものです。

5号(「日本人の配偶者等」や「定住者」の配偶者)

日本人の子として生まれて「日本人の配偶者等」を持つ人の配偶者や、「定住者」の配偶者が該当します。

6号(日本人、「永住者」、「特別永住者」、「定住者」の実子)

日本人、「永住者」、「特別永住者」、「定住者」の扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子が該当します。

例えば「永住者」が海外で出生した実子や、日本に帰化した人の実子、日系2世・3世の実子、日本人と結婚した外国人の連れ子などです。

なお、「永住者」が日本国内で子を出産した場合、その子どもは「永住者の配偶者等」になります。

7号(日本人、「永住者」、「特別永住者」、「定住者」の6歳未満の養子)

これは日本人、「永住者」、「特別永住者」、「定住者」の扶養を受けて生活する6歳未満の養子が該当します。

8号(中国残留邦人)

中国残留邦人、その配偶者やその子が該当します。

告示外定住

次に告示外定住について解説していきます。

告示外定住の類型は多岐にわたりますので、ここで解説するものは一例になります。

難民

難民はニュースでも取り上げられることが多いですが、日本において難民に認定されると在留資格は「定住者」が与えられます。

難民という言葉のイメージが先行しているせいか、働かせることができないと思っている方も多いようですが、前述のように「定住者」の在留資格を持っていれば就労制限なく働くことができます。

ただし、注意していただきたいのが、「特定活動」を持つ難民申請中の外国人です。外国人本人は「難民」として主張して面接に来ることもあるようで、当事務所にもこのような外国人を雇うことができるかといったご相談が稀にあります。就労が認められている「特定活動」を持つ外国人であれば働くことは可能ですが、在留期間は「6月」ですので長期的に働くことは難しいでしょう。また、結果として難民の認定を受けることができなければ、日本を出国しなければなりませんので、難民申請中の外国人の雇用については慎重に検討する必要があります。

離婚・死別、日本人の実子の扶養、事実上の婚姻破綻

告示外定住に当たるもので相談が多い事例としては、日本人、特別永住者、「永住者」と婚姻して「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格を持っていた外国人が、配偶者と離婚や死別した場合です。

配偶者と離婚や死別した場合、在留資格の該当性がなくなるため日本から出国するか別の在留資格に変更しなければなりません。もしそのままの在留資格で日本に在留し続けると在留資格取り消しに該当します。

在留資格取消については、こちらの記事もご参照ください。

そこで、離婚や死別した後も日本に住み続けることができるように「定住者」に変更することになります。

「定住者」に変更する際は、生計を営むに足りる資産や技能をもっていること、日常生活に不自由しない日本語力があること、公的義務を履行していることなどの要件を満たし、これまでの在留状況や引き続き日本に在留する必要性などが審査されます。

このように総合的に判断されるため、たとえ日本での在留期間や婚姻期間が長かったとしても婚姻の実体がなかった場合や、長期に渡って単身で日本を離れていたような場合では「定住者」への変更申請で不許可を受けている事例もありますので、申請する場合はこれまでの在留状況などを確認しましょう。

また、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格を持っている外国人が、配偶者との婚姻関係が続いているものの家庭内暴力などが原因で婚姻が事実上破綻しているような場合や、日本人との間に生まれた実子を監護養育する場合で、引き続き日本に在留を希望する場合も「定住者」への変更が認められることがあります。

もっとも前述のように総合的に審査されますので、同じようなケースでも審査結果が異なることがあります。

「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格をもって働いている外国人社員が上記のようなケースになったとき、実際には「技術・人文知識・国際業務」など別の就労の在留資格へ変更するのが現実的でしょう。ケースバイケースではありますが、就労の在留資格の要件を満たすことができないような場合に「定住者」の在留資格へ変更することを検討するのがよいと思います。

一般的な就労資格の「技術・人文知識・国際業務」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

義務教育から高校卒業した家族滞在者

幼い頃から家族に帯同して「家族滞在」で来日し、日本で義務教育を経て高校を卒業した後に就職しようとしても「技術・人文知識・国際業務」などの就労の在留資格の学歴要件などを満たすことができません。このような日本社会への十分な定着性が認められる外国人でも学歴要件を満たさずに就職ができないという状況に対応するため、一定の要件を満たした場合に「定住者」への変更が認められるようになりました。

  • 日本の義務教育(小学校及び中学校)を修了
  • 日本の高校を卒業または卒業見込み
  • 入国後、引き続き「家族滞在」をもって在留
  • 入国時に18歳未満
  • 就職先が決定(内定含む)
  • 住居地の届出等、公的義務を履行

上記の要件を満たした場合に「定住者」への変更が認められます。

「留学」など、「家族滞在」以外の在留資格をもっていても「家族滞在」の在留資格該当性があれば対象です。また、資格外活動許可(1週につき28時間)の範囲を超えて働くことが求められますので、大学に進学して資格外活動許可の範囲内(いわゆるアルバイトとして)で働く場合には対象となりません。

なお、日本で義務教育を卒業していなくても日本の高校を卒業し(または卒業見込み)、親が身元保証人として日本に在留しているような場合は、「特定活動」へ変更が認められ、日本で働くことができます。

高校からの新卒者を採用する場合、以前まで就労ができなかった外国人でも就労が認められることになりました。これまでの在留状況などを確認し、上記の要件に該当するようであれば、採用を検討できるでしょう。

定住者ビザの申請書類

ここでは「定住者」の在留資格を申請する際の必要書類をみていきましょう。

ここで全ての類型の必要書類を取り上げることはできないため、比較的相談の多い類型に限定して説明していきます。

日系3世(3号)

【COE申請必要書類】

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 顔写真
  • 祖父母(日本人)の戸籍謄本または除籍謄本
  • 日本の婚姻届出受理証明書(祖父母と両親)
  • 日本の出生届出受理証明書(申請人)
  • 日本の死亡届出受理証明書(祖父母と両親)
  • 日本での同居者の住民票
  • 申請人名義の預金残高証明書
  • 日本の企業からの雇用予定証明書・採用内定通知書
  • 身元保証書
  • 申請人の本国からの犯罪経歴証明書
  • 祖父母及び両親の本国(外国)からの結婚証明書
  • 両親及び申請人の本国(外国)からの出生証明書
  • 祖父母及び両親が実在していたことを証明する公的な資料(パスポート、死亡証明書、運転免許証など)
  • 申請人が本人であることを証明する公的な資料(身分証明書、運転免許証、軍役証明書など)

日本の婚姻届出受理証明書、出生届出受理証明書、死亡届出受理証明書は、日本の役所に届出をしている場合のみ提出が必要です。

3号は素行善良要件があるため、犯罪経歴証明書の提出が求められ、懲役刑や禁錮刑などがないか確認されます。

なお、在留期間「5年」を希望する場合だけ、日本語能力を立証する資料の提出が必要になります。「5年」を希望する場合には、日本語能力試験N2合格証やBJTビジネス日本語能力テスト400点以上の証明書などを提出しましょう。

「永住者」の扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子(6号)

【COE申請必要書類】

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 顔写真
  • 扶養者の直近1年分の住民税の課税証明書・納税証明書
  • 申請人の出生届出受理証明書
  • 扶養者の住民票
  • 扶養者の在職証明書
  • 身元保証書
  • 理由書
  • 申請人の本国の出生証明書

申請人の出生届出受理証明書は、日本の役所に届出をしている場合にのみ提出が必要です。

扶養者が自営業の場合は、在職証明書の代わりに確定申告書の控えの写しや営業許可書の写しを提出します。

また理由書では、扶養を受けなければならないことを説明しましょう。

義務教育から高校卒業した家族滞在者

告示外定住のためCOE申請はできませんので、「家族滞在」から変更申請する際の必要書類になります。

【変更申請必要書類】

  • 在留資格変更許可申請書
  • 顔写真
  • 履歴書
  • 日本の小学校及び中学校の卒業証明書
  • 日本の高校の卒業証明書または卒業見込み証明書
  • 日本の企業との雇用契約書、労働条件通知書、内定通知書など
  • 身元保証書
  • 住民票
  • パスポート
  • 在留カード

日本企業からの内定通知書を提出する場合、内定通知書に雇用期間、雇用形態、給与などの記載がない場合は、この情報が記載されている求人票などを併せて提出します。

審査では、日本企業との雇用契約書などから生計維持能力が確認されますが、もし独立して生計を営むことが難しい収入である場合は、扶養者の住民税の課税証明書や納税証明書を提出しましょう。

定住者ビザ更新の注意事項

ここでは、「定住者」で在留する際の注意点について解説していきます。

身分事項の変更

「定住者」は、その外国人の身分を基に与えられる在留資格です。日本在留中にその身分に変更があった場合、類型によっては「定住者」に該当しなくなり、別の在留資格への変更や日本を出国しなければなりません。

例えば、5号は「定住者」の配偶者として「定住者」が与えられますが、もし離婚した場合には5号の該当性がなくなります。

就労の在留資格をもつ社員に対しては在留管理を行なっていても、「定住者」などの身分系の在留資格をもつ社員に関しては社員本人任せにしている企業が多いように感じます。就労の在留資格と比べて安定的な在留資格ではありますし、社員本人の身分に基づいているので会社が関わりにくい部分です。しかし、身分事項が変わることにより該当性がなくなると働けなくなる可能性がありますので、企業で管理をする必要があるでしょう。

なお、6号では「扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子」として「定住者」が与えられていますので、成人になったり、婚姻したり、就労したりすると該当しないことになりますが、これらの事実をもって直ちに在留が否定されるわけではありません。しかしその状態のままで「定住者」として更新し続けられるわけでもありませんので、場合によっては行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

素行善良要件

いくつかの類型では、素行善良要件が定められています。

ここでいう素行善良要件とは、日本国内及び海外での犯罪歴のことです。

例えば、3号や4号に該当する方などに対して素行善良要件が求められ、原則として懲役刑や禁錮刑、少年法による保護処分などがあると在留が認められません。在留中に海外へ長期に出国していた場合などは、海外での犯罪歴についても調査されることがありますので、海外で滞在中も注意して過ごす必要があります。

さいごに

ここまで「定住者」の類型、必要書類や注意事項など網羅的に解説してきました。

「定住者」は就労制限がなく日本人と同様に働くことができますので、企業にとっては比較的雇用を検討しやすい在留資格です。

一方で、「永住者」と違って在留期限があるため更新が必要になります。また身分関係に変更があったり、法令違反をしてしまったりした場合は「定住者」の該当性を失ってしまうこともありますので、雇用に際して企業として最低限の知識をもつことや管理を行うことは必要でしょう。

リガレアスでは、ビザに関するコンサルテーションや在留管理のご支援を行い、入管法上、問題なく外国人を雇用できるようにサポートしています。

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