外国人雇用(採用)時・雇用後の確認事項・必要手続きと注意点
- 2020.12.07
- 2024.08.30
リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。
グローバル化や労働力不足により、国籍を問わず優秀な外国人の雇用(採用)を検討する企業も増えてきています。当事務所にも外国人を雇用する際のビザに関するご相談を多くいただいている状況です。
このように、外国人を雇用する際に企業が何をしなければいけないか、どのような手続きが必要かご存知ない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、すでに日本に在留している外国人を雇用する際の確認事項や必要な手続きを中心に解説致します。
また、雇用後の注意点やよくある質問についても解説していきます。
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目次
外国人雇用時の確認事項
日本に在留する外国人を雇用する際に確認をしなければならないことが大きく3つあります。
- 在留資格の確認
- 資格外活動許可の確認
- 在留期限の確認
確認を怠り就労ができない外国人を雇用してしまうと、雇用した企業が不法就労助長罪に問われてしまうこともありますので、雇用を決定する前に必ず確認が必要です。
不法就労助長罪については、こちらの記事もお読みください。
在留資格の確認
日本に在留する外国人は必ず「在留資格」をもっています。在留資格は現在29種類あり、従事する活動、あるいは身分・地位に基づいて分類されています。活動内容によって在留資格が分けられているので、雇用した後に従事する活動内容と外国人がもっている在留資格が一致しなければなりません。
例えば、企業で通訳を雇用する場合は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人でなければなりませんし、高校の語学教師を雇用する場合は「教育」の在留資格を持つ外国人でなければなりません。そのため、雇用しようとしている外国人がどの在留資格をもっているかを確認することが必要です。
外国人がどの在留資格をもっているかを確認するには、外国人の在留カードで確認することができます。在留カードには在留資格が記載されているので、外国人に必ず在留カードの提示を求めなければなりません。
中には適法に日本に在留していても、在留カードをもっていない外国人もいます。例えば、「3月」の在留期限が決定されている外国人です。中長期在留者に該当しないため在留カードはもっていませんが、就労可能な在留資格をもっている場合もあります。在留カードがない外国人の場合は、パスポートに「証印」というシールが貼られているので、その「証印」で在留資格を確認しましょう。
このように在留資格と従事する業務内容が一致していることを確認する必要があります。
なお、「永住者」「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」「定住者」等の身分や地位に基づく在留資格をもっている外国人は就労が可能です。これらの在留資格は、従事する業務内容が問われないため、その他の在留資格と異なりどのような職種にも就くことができます。
在留資格や在留カードについては、こちらの記事でも解説しています。
資格外活動許可の確認
「留学」や「家族滞在」など、そもそも就労が認められていない在留資格もあります。就労が認められない在留資格をもっている場合でも「資格外活動許可」をもっていれば、1週間に28時間以内という制限付きではありますが、就労することが可能です。時間の制限があるため、フルタイムではなくアルバイトでの雇用をする際の確認事項になります。
資格外活動許可をもっている場合は、在留カードの裏面にスタンプが押してありますので、雇用する際には在留カードの確認が必要です。
原則として資格外活動許可は、風俗営業関係以外であればどのような職種でも就労は可能です。
資格外活動許可については、こちらの記事もお読みください。
在留期限
在留資格を確認するのと同時に、在留期限も確認する必要があります。在留期限が切れている外国人を雇用してしまうと雇用主は不法就労助長罪になってしまいます。在留期限も在留カードで確認することができるので、必ず確認することが大切です。
また前述したように、中長期在留者に該当しない外国人で、在留カードをもっていない場合には、パスポートに貼られている「証印」で確認が可能です。
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外国人雇用時の必要な手続き
ここまで日本に在留する外国人を雇用する際の確認事項を解説してきましたが、在留資格が業務内容と一致しない場合や在留期限が迫っている場合などは、手続きが必要になります。ここでは雇用する際に必要な手続きを解説致します。
在留資格変更許可申請
雇用する外国人が就労の在留資格をもっていない場合や、もっている在留資格と従事する業務内容が一致しない場合などは、在留資格変更許可申請が必要になります。よくあるケースとしては、新卒の留学生を雇用する場合です。例えば新卒の留学生をエンジニアとして雇用する際、就労が認められない「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ変更する必要があります。
当然ですが、在留資格変更許可申請では変更する在留資格の要件を満たしていなければなりませんので、雇用する前に要件を備えていることを確認する必要があります。「技術・人文知識・国際業務」であれば、学歴や給与額などの要件を満たしていることを確認した上で申請手続きを進めなければなりません。
在留資格変更許可申請が許可された時点から就労が認められます。つまり、勤務開始前までに在留資格を変更していることが必要です。内定から申請の準備、審査期間を考慮した上で、勤務開始のスケジュールを決めることが望ましいです。
在留期間更新許可申請
前述のように、すでに適正な在留資格がある外国人でも、在留期限が迫っている場合は在留期間更新許可申請が必要です。在留期限日の3ヶ月前から在留期間更新許可申請ができるので、雇用する外国人の在留期限が3ヶ月以内の場合は、すぐに手続きを進める必要があります。在留期間更新許可申請は、在留期限が経過する前に申請を行わなければなりません。
所属機関に関する届出
転職により働く会社が変わる場合など、所属していた機関に変更が生じる際は、14日以内に出入国在留管理局へ所属機関に関する届出を提出しなくてはなりません。
在留資格により提出する届出が異なります。
活動機関に関する届出 | 契約機関に関する届出 | |
対象在留資格 | 「教授」、「高度専門職1号ハ」、 「高度専門職2号」(ハ)、「経営・管理」、 「法律・会計業務」、「医療」、「教育」、 「企業内転勤」、「技能実習」、「留学」、「研修」 | 「高度専門職1号イ」、「高度専門職1号ロ」、 「高度専門職2号」(イ・ロ)、「研究」、 「技術・人文知識・国際業務」、「介護」、「興行」、「技能」 |
届出事由 (届出が生じた時から14日以内に提出) | 活動機関の名称・所在地に変更 活動機関の消滅 活動機関からの離脱・移籍 | 契約機関の名称・所在地に変更 契約機関の消滅 契約機関との契約の終了・新たな契約の締結 |
例えば、エンジニアとして「技術・人文知識・国際業務」をもっている外国人がAという企業を退職し、Bという企業に転職した場合に、Aを退職した14日以内に「契約機関に関する届出(契約の終了)」を提出し、さらにBに転職して14日以内に「契約機関に関する届出(新たな契約の締結)」を提出します。
提出は外国人の義務であり、届出をしていなくても企業に罰則はありません。
しかし外国人本人は、14日以内に届け出なかった場合には20万円以下の罰金が科されます。さらに、以降の更新申請などで在留期間が短くなるなど不利益が出てくる可能性もあります。届出の方法は、郵送やオンラインでも届出を提出することができるので、ヘッドハンティングで外国人を雇用する場合は、すぐに手続きをするよう外国人に周知しましょう。
なお、中長期在留者のみ必要な手続きのため、在留カードをもっていない外国人は上記の在留資格であっても届出は必要ありません。
所属機関が変わる際に届出をしなくてはなりませんので、当然外国人が退職する時にも届出を提出することが必要です。
外国人雇用状況の届出
外国人を雇用する際、雇用主はハローワークへ外国人雇用状況の届出を提出しなければなりません。これは全ての雇用主の義務です。外国人の氏名・在留資格・在留期間などを届け出ます。オンラインでも届出は可能です。
雇用保険の被保険者となるか否かによって、使用する様式や届出先となるハローワーク、届出の提出期限が異なります。雇用保険の被保険者となる場合は、雇用保険被保険者取得届の提出期限までに、雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワークに届出を行いましょう。
一方、被保険者とならない場合は、雇用した翌月の末日までに外国人が勤務する事業所施設の住所を管轄するハローワークに届出を行います。
なお、離職時にも届出は必要です。届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
雇用後の注意点
ここまで雇用時の確認事項や必要な手続きを解説してきました。
しかし、雇用した後にも外国人ならではの注意点があります。ここでは、外国人を雇用した後に気をつけるべき点を解説していきます。
オーバーステイ
外国人を雇用した後に最も気をつけるべき点は、在留期限です。前述の通り、在留期限が迫っている場合は、在留期間更新許可申請をしなければなりません。
もし在留期限を経過してしまうと不法残留(いわゆるオーバーステイ)となってしまいます。不法残留は退去強制事由に該当しますので、強制的に日本を出国させられ、原則最低5年間は日本に入国することはできません。出国命令により出国した場合はその期間は1年間になります。
しかし、いずれにしても雇用している外国人が退去することになると、企業にとっては突然社員が1人いなくなってしまうわけですから、小さくない問題です。
特に現在は最長の在留期限が「5年」と長期です。外国人自身も在留期限を忘れてしまうことも少なくありません。海外出張時に空港で在留期限が経過していることに気づくといったケースもあります。その場合、予定通りに海外出張に行くことができなくなります。
企業にとっても、外国人社員がオーバーステイになった場合にデメリットがあるため、外国人個人の問題だけではなく、企業がしっかりと在留期限を管理する必要があります。
オーバーステイについては、こちらの記事もお読みください。
職務や役職変更に伴う在留資格の変更要否
雇用している外国人の職務内容が、その外国人がもっている在留資格で認められる範囲内であれば、職務内容や役職が変更した場合でも在留資格の変更は必要ありません。「技術・人文知識・国際業務」をもつ外国人が営業から人事に異動するような場合は、在留資格の変更は不要だと考えられます。
しかし、「技術・人文知識・国際業務」で働いていた外国人が、昇進などによって部長などの管理職や経営者となった場合には、「経営・管理」の在留資格に変更する必要があります。
また、「技術・人文知識・国際業務」をもつ外国人が、単純労働とみなされる職務へ配置転換となった場合には、「特定技能」などの在留資格への変更を検討しなければなりません。
このように、現在外国人がもっている在留資格と職務・役職変更後の在留資格について、正確な知識がないと職務や役職変更によって在留資格の変更が必要かどうかを判断することは非常に難しいでしょう。
在留資格に該当しない業務に従事させると不法就労助長罪に当たってしまう可能性もありますので、不安な場合は行政書士などの専門家に相談することも必要です。
契約内容の変更
想定されることとしては、海外のグループ会社から出向で「企業内転勤」をもって日本で働いている人が、日本の企業と直接雇用契約を締結するような場合です。日本の企業と直接雇用契約を締結する場合には「企業内転勤」に該当しなくなるため、「技術・人文知識・国際業務」への変更が必要となります。
他にもケースとしては稀だと思いますが、「高度専門職」で働いている人の報酬額が減るような場合も在留資格の変更の検討が必要な場合があります。「高度専門職」はポイント制ですので、報酬額が減ることでポイントを満たさなくなると別の在留資格へ変更が必要です。
退職時の手続き
外国人が退職する際は、企業が行う手続きと外国人が行う手続きの両方があります。
企業が行う手続きとしては、以下のようなものです。
- 社会保険・雇用保険の資格喪失手続き
- 所得税・住民税に関する手続き
- 源泉徴収票の交付
- 離職票の交付
- 健康保険証の回収
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 退職証明書の交付
1から5までは日本人社員が退職するときと同様の手続きですが、6と7については外国人社員特有の手続きといえます。雇用保険被保険者資格喪失届はハローワークに提出する届出で、退職の翌日から10日以内に提出しなければなりません。
退職証明書は、外国人が在留期間更新申請や在留資格変更許可申請を行う際に、入管から求められる可能性があるため、退職時に外国人に渡しておくのがよい書類です。
一方で、外国人は所属機関に関する届出を入管に提出しなければなりません。前述のように、14日以内に適切な届出を入管に提出しましょう。
外国人社員の退職時の手続きについては、こちらの記事もお読みください。
雇用した外国人の在留資格に関するよくある質問
ここでは、外国人を雇用した際に企業の担当者からよく受ける質問をご紹介します。
「高度専門職」外国人の雇用
「高度専門職」は就労ビザの一つです。就労することが認められているビザのため、職務内容が前職と変わらなければ「高度専門職」をもつ外国人をそのまま雇用して問題ないと考えている方が多いようです。
しかし、「高度専門職」をもつ外国人はパスポートに「指定書」という紙が貼られています。この指定書には、所属機関が記載されていて、勤務先が「指定」されています。そのため、転職をする際には必ず在留資格変更許可申請を行わなければなりません。たとえば、「高度専門職1号ロ」から「高度専門職1号ロ」のように同じ在留資格へ「変更」することになります。
勤務開始前までに在留資格を変更しなければなりませんので注意しましょう。
「高度専門職」についてはこちらの記事もお読みください。
アルバイトで働いている外国人の雇用
アルバイトで働いている留学生が学校を卒業したあと、そのまま正社員として働いてもらいたいというご相談は多いです。
学校卒業後に正社員として勤務するためには、留学ビザから就労ビザへ変更しなければなりません。当然ですが、変更するためには就労ビザの取得要件を満たしている必要があります。
一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」に変更する際には、学歴や報酬額などの用件がありますが、専門的な技術や知識を要する業務に従事することも要件の一つです。
留学生がアルバイトで働いている場合、単純労働が多いと思いますが、アルバイトと同じ内容では就労ビザは取れません。正社員で雇用する際には、専門的な技術や知識を要する業務のポジションを準備しましょう。
留学ビザから就労ビザへの変更については、こちらの記事もご参考ください。
身分系ビザをもつ外国人の雇用
「永住者」や「日本人の配偶者等」など、いわゆる身分系ビザをもつ外国人を雇用しても問題はないかという質問も多いです。
この身分系と言われるビザには以下の4つがあります。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの在留資格には就労制限がありません。どのような雇用形態や職種であっても働くことが可能で、工場作業などの単純労働と呼ばれる業務にも従事することが可能です。
つまり日本人と同様に働くことができます。企業にとっては採用を検討しやすい在留資格といえるでしょう。当然ですが、日本人と同様に雇用することになりますので、労働法令や最低賃金法などの法令を遵守しなければなりません。
身分系のビザについては、こちらの記事もお読みください。
外国人が離職する際の注意点
外国人が離職する際に企業や外国人が行うことは前述しました。ここでは手続き以外に注意しなければいけないことを解説します。
在留期間が残っていれば引き続き日本に在留することができると思い、離職した後も日本を観光してから帰国しようとする外国人や日本国内で転職活動をしようとする外国人の方もいます。
しかし、在留資格に基づく活動を3ヶ月(「高度専門職」の場合は6ヶ月)以上行っていない場合、在留資格の取消に該当してしまいます。在留資格の取消に該当すると、退去強制になり日本を強制的に出国しなければなりません。最悪の場合は、原則最低5年間日本に入国することができなくなります。
外国人社員が離職する場合は、在留資格取消制度があることを案内しましょう。
なお、再就職先を探すために就職活動をしている場合は、正当な理由があるとして在留資格取消に該当しないことがあります。
在留資格取消については、こちらの記事もお読みください。
さいごに
ここまで外国人を雇用する際の確認事項や必要な手続き、注意点について解説してきました。
日本人とは異なり、外国人特有の手続きや注意点があることをご理解いただけたと思います。就労が認められていない外国人を雇用してしまうと不法就労助長罪に該当したり、必要な届出を行わないと罰則規定があったりします。必要な手続きを把握して、適切に対応できるようにしましょう。
しかし、必要な手続きや注意点が多く、いつ、何を、どこで、どのようにすればいいか分かりにくいと思います。そのような場合には、行政書士などの専門家に相談することもおすすめです。
よくご相談をいただくのがビザ手続きで失敗してしまったときですが、その時にご相談を受けても解決できないこともあります。しかし雇用する前にご相談いただければ、アドバイスすることで未然に防ぐことも可能です。外国人雇用で少しでも不安に感じることがあれば、雇用する前に相談されるのがよいでしょう。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。