リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

「特定技能」は2019年4月に新設され、人手不足の解消にとても関心が高い在留資格です。「特定技能」ができた当時はニュースにもなり、この在留資格を聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、他の在留資格と比べても要件が複雑でわかりにくいと感じている人も多いはずです。

そこで今回は、「特定技能」で外国人を雇用することを検討している企業が覚えておきたい基本的な内容を解説します。また、多くの方からご質問をいただく「技能実習」との違いについても説明していきます。

本記事をお読みいただければ、「特定技能」の概要や「技能実習」との違いをお分かりいただけるはずです。

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特定技能について

日本では人手不足が深刻化しており、人材確保が困難な産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために、2019年に特定技能制度が創設されました。

人材確保が困難な産業上の分野(特定産業分野)において外国人を受け入れるための在留資格ですので、受け入れ可能な分野は以下の12分野に限定されています。

 

特定産業分野(12分野)
介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

 

これらの分野に該当しなければ、「特定技能」で外国人を受け入れられないことに注意しましょう。

また、「特定技能」の大きな特徴としては、外国人が日本での活動を安定的、円滑に行うことができるようにするために、日本に入国するまでのサポートや日本国内の住居の確保、公的手続きの補助、日本語学習の機会提供や定期的な面談など、様々な支援を行わなくてはいけないことです。

事前に支援内容を「支援計画」として作成することも必要になります。

 

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2種類の在留資格

「特定技能」には1号と2号の2種類があります。それぞれ簡単に解説していきましょう。

特定技能1号

「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。特定産業分野とは、前述した12分野で、以下の分野になります。

 

特定産業分野(12分野)
介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

 

相当程度の知識または経験が必要とされますので、分野ごとに定められた試験に合格しなければなりません。ただし、「技能実習2号」を良好に修了した場合は試験が免除されます。

「特定技能1号」では、「1年」、「6月」、「4月」のいずれかの在留期間が与えられます。「特定技能1号」で在留することができるのは、通算5年間です。特定産業分野を問わず、実際に「特定技能1号」で在留していた期間を含みますので、過去に「特定技能1号」で日本に在留したことがある場合には注意が必要です。

また、原則「特定技能1号」では家族の帯同が認められませんので、「特定技能1号」を持つ外国人は家族を「家族滞在」で呼び寄せることができません。

特定技能2号

「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。技能水準は「特定技能1号」より高いものになります。

2023年6月9日の閣議決定により、介護分野以外のすべての分野で「特定技能2号」で受け入れが可能になっています。

「特定技能2号」は「特定技能1号」を5年間修了すれば移行できるものではなく、試験に合格しなければなりません。また実務経験も求められます。日本語能力は、漁業と外食分野においてのみ試験の合格が必要です。技能実習の修了をもって試験の免除がないことや後述する支援が不要であることも「特定技能1号」との違いになります。

在留期間は「3年」、「1年」、「6月」のいずれかが与えられます。「特定技能1号」では通算5年間といった上限が定められていますが、「特定技能2号」は更新の上限がありませんので、更新し続けることが可能です。また将来的には「永住者」への申請もできます。

さらに、「特定技能1号」と異なり、家族を「家族滞在」として呼び寄せることも可能です。「特定技能1号」と「特定技能2号」の違いをまとめると以下のようになります。

 

特定技能1号特定技能2号
対象分野12分野11分野
(介護以外)
在留期間1年、6月、4月
通算で上限5年まで
3年、1年、6月
更新の上限なし
技能水準試験に合格
または
「技能実習2号」を良好に修了
試験に合格
及び
実務経験
日本語能力水準試験に合格
または
「技能実習2号」を良好に修了
試験での確認不要
(漁業と外食分野のみ試験に合格)
家族の帯同不可可能
支援支援の対象支援の対象外

 

在留資格「特定技能」の取得要件

ここからは「特定技能」の取得要件について解説していきます。2023年6月末時点で、「特定技能2号」で在留する人は12人しかいないため、ここでは主に「特定技能1号」の取得要件について解説します。

申請人の要件

「特定技能」を申請するための申請人としての要件は以下のようになります。

  1. 18歳以上であること
  2. 健康状態が良好であること
  3. 技能試験及び日本語試験に合格していること
  4. 退去強制令書の円滑な執行に協力する国・地域のパスポートを持っていること
  5. 「特定技能1号」で通算5年以上在留していないこと
  6. 保証金を徴収されていないこと
  7. 外国の機関に費用を支払っている場合、その額及び内訳を十分理解し、その機関との間で合意していること
  8. 自国で行わなくてはいけない手続きがある場合、その手続きを行なっていること
  9. 食費、居住費など申請人が定期に負担する費用について、費用の対価として与えられる食事や住居の利益の内容を理解した上で合意し、かつ、その額が実費相当の適正な額で明細書などの書面が提示されること
  10. 分野に特有の基準に適合すること

前述のように、「特定技能1号」では相当程度の知識または経験が必要とされますので、分野ごとに定められた特定技能評価試験に合格することが必要です。しかし「技能実習2号」を良好に修了し、「技能実習2号」の職種・作業と「特定技能」で従事する業務内容に関連性がある場合は、試験が免除されます。

また、日本語能力は国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格していなければなりません。こちらは「技能実習2号」の職種・作業に関わらず、「技能実習2号」を良好に修了していれば、日本語試験が免除されます。

JLPTについて、こちらの記事で詳しく解説していますのでお読みください。

退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域は、本記事執筆時点でイラン・イスラム共和国ですので、イラン国籍の方は「特定技能」で在留することができません。

「特定技能1号」で在留することができるのは、通算して5年までです。過去に「特定技能1号」として在留していた場合も含まれ、以下の期間も「特定技能1号」としての在留期間に計上されますので注意しましょう。

  • 失業中、育児休暇、産前産後休暇などによる休暇期間
  • 再入国許可(みなし再入国許可を含む)による出国期間
  • 「特定技能1号」を持つ人が行なった在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請(転職を行うためのものに限る)に係る特例期間
  • 移行準備を目的とした「特定活動」(告示外)で在留していた期間

ただし、コロナウイルスによる上陸拒否期間など、本人の意思に関わらず、日本に入国することができなかった期間は通算在留期間に含まれません。

他にも受け入れる外国人の国籍によっては、自国で行わなければならない手続きがあります。これは、悪質な仲介事業者の排除を目的として、日本が外国政府と取り決めを行なっているためです。取り決めがある国籍者を雇用する場合は、事前に必要な手続きを確認しておきましょう。この二国間協定については後述します。

分野ごとに特有の基準を設けることができるのも「特定技能」の特徴の一つです。12分野ごとにそれぞれ基準が別に定められています。受け入れる分野で定められた基準を確認して手続きを進めることも必要です。

受入機関の要件

次に、「特定技能」を申請するために受入機関(外国人が就労する企業)に必要な要件を説明します。

  1. 労働・社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
  2. 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
  3. 1年以内に受入機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
  4. 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
  5. 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えておくこと
  6. 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入機関が認識して雇用契約を締結していないこと
  7. 受入機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
  8. 支援に要する費用を直接または間接に外国人に負担させないこと
  9. 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行なっている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が1〜4の基準に適合すること
  10. 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
  11. 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
  12. 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
  13. 分野に特有の基準に適合すること

当然のことですが、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、雇用保険法などの労働関係法令や健康保険法、厚生年金保険法などの社会保険関係法令、さらに所得税法、法人税法などの租税関係法令といった法令の遵守が必要です。

また、すでに雇用している人を非自発的に離職させて、その補填として特定技能外国人を受け入れることを排除するため、1年以内に定年など以外の理由で非自発的に離職させていないことが求められます。

さらに、次のいずれかに該当する場合は、欠格事由に該当し、欠格事由が解消されてから5年を経過しないと受入機関になることができません。

  • 禁錮以上の刑に処せられた者
  • 出入国または労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者
  • 暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑に処せられた者
  • 社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者

他にも、技能実習の認定取り消しを受けてから5年が経過していない場合や、精神障害により雇用契約の履行を適正に行うことができない者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者なども欠格事由に該当します。

雇用契約を継続して履行する体制として、受入機関が事業を安定的に継続し、雇用契約を確実に履行し得る財政的基盤を有していることが必要です。前事業年度で債務超過がないことが確認され、もし債務超過がある場合は中小企業診断士、公認会計士などの第三者が改善の見通しについて評価を行なった書面の提出が求められます。

雇用契約

受入機関は、特定技能外国人と雇用契約を締結することになります。ここでも細かい要件が定められております。以下が外国人との雇用契約で必要な内容です。

  1. 分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること
  2. 同じ受入機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること
  3. 報酬額が日本人と同等額以上であること
  4. 外国人を理由として、報酬・教育訓練・福利厚生などの待遇に差別的な取扱いをしていないこと
  5. 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること
  6. 労働者派遣の対象とする場合、派遣先や派遣期間が定められていること
  7. 外国人が帰国旅費を負担できない場合、受入機関が負担し、契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること
  8. 受入機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること
  9. 分野に特有の基準に適合すること

分野省令で定める技能を要する業務とは以下のような業務で、外国人が従事する業務内容がこれに該当する必要があります。

 

分野従事する業務
介護身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排泄の介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
ビルクリーニング建物内部の清掃
素形材・産業機械・
電気電子情報関連製造業
機械金属加工(鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装)

電気電子機器組立て(機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装)

金属表面処理(めっき、アルミニウム陽極酸化処理)

建設土木(指導者の指示・監督を受けながら土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等)

建築(指導者の指示・監督を受けながら、建築物の新築、増築、改築もしくは移転または修繕もしくは模様替に係る作業等)

ライフライン・設備(指導者の指示・監督を受けながら、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更または修理に係る作業等)

造船・舶用工業溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て
自動車整備自動車の日常点検、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務
航空空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)

航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)

宿泊宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務
農業耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)

畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)

漁業漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)

養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)処理、安全衛生の確保等)

飲食料品製造業飲食料品製造全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生)
外食業外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

 

雇用形態がフルタイムであることや日本人と同等の報酬額を支払う必要があることなど、外国人であることを理由として差別的な取扱いをすることは許されません。労働基準法や最低賃金法、就業規則などに沿った取扱いが求められます。

また、外国人が一時帰国を希望した際には有給休暇を取得することができるように配慮をしたり、雇用契約終了後に外国人が帰国費用を捻出できない場合に帰国費用を負担したりすることも契約内容に盛り込む必要があります。

支援計画

前述したように、受入機関は外国人が日本でスムーズに活動することができるように、日本入国までのサポートや住居の確保、公的手続きの補助、日本語学習の機会提供や定期的な面談など、様々なサポートを行わなくてはいけません。

受入機関は以下の要件を満たすことが必要です。

  • 以下のいずれかに該当すること

(1)過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ)の受け入れ、または管理を適正に行なった実績があり、かつ、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上)を選任していること(支援責任者と支援担当者は兼任可)
(2)役職員で過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ)の生活相談等に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること
(3)(1)または(2)と同程度に支援業務を適正に実施することができるもので、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること

  • 外国人が十分に理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること
  • 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えておくこと
  • 支援責任者及び支援担当者が、支援計画の中立的な実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しないこと
  • 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
  • 支援責任者または支援担当者が、外国人及びその監督をする立場にあるものと定期的な面談を実施することができる体制を有していること
  • 分野に特有の基準に適合すること

過去2年間のうち、少なくとも1名以上の就労の在留資格をもつ外国人の受入実績が必要です。外国人の受入実績がない受入機関の場合、生活相談などに従事した経験がある人を支援責任者や支援担当者として選任していることが求められます。

また、受入機関は支援の一環として事前ガイダンスやオリエンテーションなどを行わなければなりません。そのため、外国人が十分に理解できる言語を話すことができる職員や通訳を確保しておくことも必要です。

さらに受入機関に対して、外国人への支援の内容を「支援計画」として作成することが求められます。支援計画の記載内容や基準については、以下のように規定されています。

  • 支援計画に(1)〜(5)を記載すること

(1)支援の内容

      1. 入国前に日本で留意すべき事項に関する情報提供の実施
      2. 出入国する空港等での送迎
      3. 賃貸借契約の保証人になることその他の適切な住居の確保に係る支援、預貯金口座の開設及び携帯電話の契約その他の生活に必要な契約に係る支援
      4. 入国後に日本での生活一般に関する事項等に関する情報提供の実施
      5. 外国人の届出等の手続き時の同行
      6. 生活に必要な日本語を学習する機会の提供
      7. 相談・苦情対応、助言、指導等
      8. 外国人と日本人との交流促進支援
      9. 外国人の責めに帰すべき事由によらないで雇用契約を解除される場合の新しい就職先支援
      10. 支援責任者または支援担当者が外国人及びその監督者との定期的な面談、労働関係法令違反等の問題発生時の関係行政機関への通報

(2)登録支援機関に支援を全部委託する場合は、委託契約の内容等
(3)登録支援機関以外に委託する場合は、委託先や委託契約の内容
(4)支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職名
(5)分野に特有の事項

  • 支援計画は、日本語及び外国人が十分理解できる言語で作成し、外国人にその写しを交付しなければならないこと
  • 支援の内容が、外国人の適正な在留に資するもので、受入機関等において適切に実施することができるものであること
  • 日本入国前の情報提供の実施は、対面またはテレビ電話装置等により実施されること
  • 情報提供の実施、相談・苦情対応等の支援が、外国人が十分理解できる言語で実施されること
  • 支援の一部を他者に委託する場合にあっては、委託の範囲が明示されていること
  • 分野に特有の基準に適合すること

上記の支援の内容にあるように、受入機関は外国人に対して、ガイダンスや空港送迎、日本での手続きサポートなど10項目における支援を行わなければなりません。

このように、「特定技能」として外国人を受け入れて支援を行うには、受入機関として満たさなくてはいけない要件や支援内容がとても多いです。過去の受入実績がなかったり、人材のリソースが足りず、ガイダンスや送迎の実施や手続きサポートなどを行うことが難しい企業もあるでしょう。

そこで、支援計画の内容を自社で対応することが難しい場合には、支援の一部または全部を「登録支援機関」に委託をすることができます。さらに、登録支援機関に委託すると、前述の支援を行うための受入機関の要件を満たすことにもなります。

登録支援機関について

登録支援機関とは、受入機関との契約により、支援計画に基づく支援を行うことができる機関です。登録支援機関になるためには、要件を満たした上で、入管の登録を受ける必要があります。

前述のように、受入機関が支援計画の内容を全て自社で実施することが難しい場合には、登録支援機関に委託をすることが可能です。支援計画の全部または一部のみを委託することも可能で、一部のみ委託する場合は複数の登録支援機関に委託をすることもできます。

しかし、登録支援機関は第三者に再委託することはできませんので、委託を検討する際は自社のある地域での支援が可能かどうかを確認する必要があるでしょう。また外国人が理解できる言語で支援が必要になるため、対応言語等も確認しておくのが良いです。

登録支援機関について詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。

協議会について

特定技能制度の適切な運用を図るため、特定産業分野ごとに分野所管省庁が協議会を設置しています。協議会は構成員の連携の緊密化を図り、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう制度や情報の周知、法令遵守の啓発などを行なっています。

特定技能外国人を受け入れる受入機関は、その協議会の構成員にならなければなりません。これも「特定技能」の特徴の一つです。

「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」及び「建設業」以外の分野で、初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、受け入れた日から4ヶ月以内に構成員になることが求められていましたが、2024年6月15日以降の申請については、全ての分野で事前に加入することが必要になりますので注意しましょう。

さらに「建設業」は他の分野と異なり、受入機関が直接協議会に加入するのではなく、建設技能人材機構(JAC)の正会員になっている団体またはJACの賛助会員に加入することが必要です。

二国間協定について

特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出しや受け入れ確保するための情報共有や問題是正のための協議を行うため、日本と送出国の間で作成した協力覚書です。本記事執筆時点では、以下15カ国との間で覚書を作成しています。

 

覚書作成国
フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス

 

協力覚書を作成した国によっては、それぞれの国内規定に基づき送出手続きを定めており、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請時に、手続きを行ったことを証明する書類を提出しなければならない国があります。

また、申請時に書類に提出がない国であっても、一定の送出手続きが定められている場合もありますので、これらの国籍の方と特定技能契約を締結する場合は、事前に手続きを確認しましょう。

なお、協力覚書を作成していない国であっても特定技能外国人を受け入れることは可能です。

特定技能と技能実習の違い

「特定技能」と「技能実習」は、ともにニュースなどで取り上げられることも多い在留資格です。しかし、両方の在留資格を混同している方や違いが分からない方も多いでしょう。そこで、ここでは「特定技能」と「技能実習」の違いについて解説していきます。

「特定技能」と「技能実習」の違いを表にすると以下のようになります。

 

特定技能技能実習
制度の目的人手不足解消技術移転・国際貢献
在留期間1号:通算5年
2号:更新回数制限なし
1号:1年以内
2号:2年以内
3号:2年以内(合計最長5年)
業務内容相当程度の知識や経験を要する業務非専門的で非技術的な業務
試験日本語試験及び技能試験なし
(介護のみ入国時N4レベルの日本語能力)
分野・職種12分野86職種(158作業)
転職可能原則不可
受け入れ人数制限なし
(介護・建設のみ制限あり)
常勤職員総数に応じて制限あり
登録支援機関ありなし
監理団体なしあり(団体監理型の場合)

制度の目的

「特定技能」は、人材確保が困難な産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れることを目的としたものです。簡単に言えば人手不足解消を目的とした制度になります。

一方で「技能実習」は、母国では身につけられない技術を日本で身につけ、その技能を母国へ移転することによって母国の発展に活かす国際貢献を目的とした制度です。人手不足を補うための在留資格ではないということが大きな違いでしょう。

なんとなく「特定技能」と「技能実習」を同じように捉えられている方も多いと思いますが、制度の目的は全く異なるものになります。

在留期間

「特定技能」の在留期間は、1号では通算5年ですが、2号では更新制限はありませんので更新し続けることが可能です。

「技能実習」は母国への技術移転が目的の在留資格ですので、「技能実習」終了後は原則として帰国が求められます。在留期間としては、1号が最長1年、2号と3号が最長2年ずつで、1号から3号までで通算5年間となり、「技能実習」で日本に滞在し続けることはできません。

業務内容

「特定技能」は、相当程度の知識や経験を必要とする技能を要する業務に従事する在留資格ですが、「技能実習」は非専門的で非技術的な業務に従事する在留資格です。また「特定技能」(1号)は外国人に対して技能試験や日本語試験が課せられている一方で「技能実習」(1号)は試験はありません。

このように「特定技能」は「技能実習」に比べて技能水準が高い在留資格になります。さらに「特定技能」と「技能実習」では、従事することができる分野や業種が異なります。

本記事執筆時点(2023年4月17日)で、「特定技能」は12分野、「技能実習」は86職種(158作業)です。「技能実習」で受け入れはできても「特定技能」では受け入れができない職種もありますので注意しましょう。

転職の可否

「特定技能」は同じ業務区分内、または転職先の分野に該当する試験に合格すれば転職は可能です。

他方、「技能実習」は技術移転が目的の在留資格のため、そもそも転職は想定されていません。しかし、実習先が倒産した場合や2号から3号へ移行する際は転職が可能になっています。

受け入れ人数枠

「特定技能」の受け入れ人数に制限はありませんので、何人でも雇用することが可能ですが、「技能実習」は適切な指導が実施できるように常勤職員総数によって、受け入れの人数制限があります。

なお、「特定技能」であっても介護分野と建設分野のみ受け入れ人数に制限がありますので注意しましょう。

登録支援機関と監理団体

この二つを混同してしまう方も多いと思いますが、全く異なる機関になります。

登録支援機関は、「特定技能」で必要な支援計画に基づく支援を、受入企業の代わりに行うことができる機関です。受入機関で全ての支援が可能な場合は登録支援機関に委託することは必須ではありません。

一方で監理団体は、団体監理型の「技能実習」で実習生を受け入れる際、実習生の募集や受入企業及び実習生の支援、適切な実習が行われているか監査や指導を行います。団体監理型の場合は必ず監理団体と契約しなければなりません。

このように、登録支援機関と監理団体の業務内容が大きく違います。

「技能実習」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。

さいごに

ここまで「特定技能」について詳しく解説してきました。本記事を最後までお読みいただければ、「特定技能」の概要はご理解いただけたと思います。

「特定技能」は人手不足解消を目的とした在留資格で、少子化が進む日本において今後大きな役割を果たす在留資格になるでしょう。

しかし、実際に「特定技能」で外国人を受け入れる際には、本記事で解説した要件以外にも、分野ごとに異なる要件も満たさなければなりません。ただでさえ確認事項も多く複雑な在留資格ですので、初めて受け入れを行う場合はかなり煩雑な手続きと感じることでしょう。

リガレアスでは、「特定技能」で外国人を雇用されたい企業様のご相談をお受けしております。また「特定技能」以外の在留資格も取り扱っておりますので、様々な観点からコンサルテーションを行うことが可能です。

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