外国人社員のビザを適切に管理するための組織形成について
- 2021.11.12
- 2023.05.27
リガレアス行政書士事務所の広瀬です。
ビザ管理は、外国人の雇用時に重要な業務の一つです。ビザがなければ日本で暮らすことや働くことはできません。
しかし、重要と理解しながらも、ビザ管理は外国人社員本人に任せっきりの企業も中には存在し、社員の生活を守る企業としての配慮不足と、私は考えます。
そこで本記事では、ビザ管理での失敗事例を見ながら、企業が外国人社員のビザ管理を行うことの重要性、さらにビザ管理を行う専門組織作りの必要性を説明します。本記事を読んでいただければ、外国人社員のビザ管理を徹底するための体制作りの重要性を認識していただけます。
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ビザ管理業務の現実
外国人社員を雇用している企業であっても、多くの企業ではビザ期限の管理やビザ手続きを本人任せになっているのが現状です。
外国人社員が自分で管理をしている場合、ビザの期限が近くなってきたら、自分で書類を作成して入管に申請に行くことになります。場合によっては、会社を休んで入管に行く必要もあり、業務に集中できないこともあるでしょう。
これらは外国人社員が自身のビザ手続きについて全て理解しており、滞りなく進められることが前提です。また、転職や出産など、様々なライフイベントに応じて、必要なビザ手続きがありますが、外国人社員がこれらを全て理解して、適切に手続きを進めることは非常に難しいと感じます。
一方で、企業で管理をしていたとしても、属人的になってしまうことが多いです。担当者が変わった際にうまく引き継ぎができないと、後任担当者がビザを管理することができなくなることがあります。ビザに関する法律である入管法の改正やビザ手続きの変更も頻繁に行われるため、情報をアップデートしていくことも難しいでしょう。
このような問題を抱え、社内でノウハウが蓄積できず、ビザ管理業務の内製化ができないというご相談をいただくことも多いです。
・紙やエクセルで管理するリスク
・外国人任せにしてしまうリスク
・ビザらくでリスクを解消
ビザ管理業務でよくある失敗
次に、外国人社員のビザ管理を本人に任せてしまうことで起きやすい問題を取り上げていきます。実際に起きた事例を見ながら、企業がビザ管理をする必要性を考えたいと思います。
外国人社員のオーバーステイ
突然ですが、ご自身の自動車運転免許証の有効期限日を覚えていますでしょうか。一般的に運転免許証の有効期間は5年です。運転免許証は有効期限が近づけば通知ハガキが届きますが、もし通知が届かなかったとしたら、更新手続きを忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。
実は、ビザ期限も最長で5年です。しかし、ビザは期限が近づいても入管から通知が届くことはありません。そのため、実際に在留期限を忘れてしまい、ビザを更新せずに在留し続けてしまうケースは度々起こります。
よくある事例としては、海外出張時に空港で在留期限切れが発覚するケースです。在留期限が切れていると、そのまま出国させてもらえませんので、予定通りの出国ができなくなり、業務へ支障をきたすことになります。
さらに、在留期限を超えて在留しているということは、オーバーステイを意味します。オーバーステイになると原則として退去強制となり、日本を出国しなければなりません。そうなると、最低でも5年間は日本に入国できないことになり、企業にとっては大きな損失となるでしょう。もちろん外国人社員本人にとっても大きな問題となります。
当事務所にご相談いただいたケースは全て在留期限が経過してからすぐだったため、特別な救済措置を受け引き続き在留ができるように手続きを行いましたが、もし気付くのが遅ければ、退去強制になっていたかもしれません。
出生の在留資格取得
外国人同士の夫婦が子供を日本で出産すると、日本に滞在するためのビザを取得しなければいけません。しかし中には、自動的に子供にもビザがもらえると勘違いしている方や出産の忙しさに手続きを忘れてしまう方も多いです。
企業の担当者でさえも、外国人社員に子供が生まれた際は、子供のビザ取得が必要であることを知らない方もいます。
原則、子供のビザは生まれてから30日以内に申請をしなければなりません。
万一30日を超えてしまっても出生から60日以内に日本を出国すれば問題はありませんが、もし出生から60日以内に申請をしなければその子供はオーバーステイとなってしまいます。気がつくと生まれてから60日を超えてしまっていて、慌てて当事務所へ相談に来られることも少なくありません。
転職時の所属機関に関する届出
日本で働いている外国人の方が、他の企業へ転職した際には、就労ビザを持っている場合でも、そのまま転職して良いわけではありません。所属機関に関する届出を入管に提出する必要があります。
しかし、こちらの手続きも知らない外国人の方は多いです。この届出を行わなかった場合、外国人社員に対して罰則規定がありますし、さらに入管法上の必要な手続きを怠っていることとなり、ビザ更新の際に在留期限が短くなってしまうなどの不利益もあります。
日本で働いている外国人を雇用する際には、所属機関に関する届出以外にもケースバイケースで必要な手続きがありますので、外国人社員の状況に応じて対応しなればなりません。
なお、手続きの方法などは、こちらの記事で詳しく書かれていますので、是非お読みください。
このように、外国人社員に任せきりになってしまうと、手続きの不備が起こりやすいです。また、それが起こってしまった時に、退去強制や罰則といった企業や外国人社員本人にとって大きな問題になりえます。外国人社員が仕事に集中できる体制を整えるためにも、企業のサポートが不可欠と考えます。
専門組織の必要性
前述の通り、外国人を雇用している企業であっても、ビザ管理を行っている企業は少なく、ましてや外国人社員のビザ管理を行う専門部署となると、そのような部署を構えている企業はないでしょう。
もちろん自分のビザですから、本人がビザ期限をチェックし、必要な手続きを行うのは当然の考え方だと思います。しかし、期限を忘れてオーバーステイしてしまったり、必要な手続きを怠ってしまったりすると、最悪の場合には退去強制などで日本から出国しなければならなくなり、企業にとっては大きな損失です。
今後も外国人労働者がさらに増えると言われており、優秀な外国人社員が働きやすい環境を整え、会社に定着してもらうためにも、ビザを管理する専門部署を作ることが必要だと考えます。
専門部署では、管理体制が属人的にならないように担当者を2名以上配置するのが良いです。
ビザの更新申請は、ビザ期限の3ヶ月前から可能なため、3ヶ月前からメールなどで外国人社員に通知し、書類準備のサポートをします。申請日や許可日など申請の進捗を追い、許可された在留カードコピーも保管しておくべきです。
こういったビザ管理業務の属人化を避けるため、またペーパーレス化や効率化を図るためにも、ビザ管理業務のDX化を進めることもお勧めします。
さらに適正な管理を行うためには、最低限の法律や手続きを知っておく必要があります。そのためにも関係省庁などのホームページから定期的に情報収集を行い、社外セミナーなども積極的に活用すると良いでしょう。それらの情報は、外国人が在籍する部署にも共有することで、関係部署で協力しながら適正な管理を行っていくことができます。
さいごに
ここまで外国人社員のビザ管理をすることの必要性や大切さを解説してきました。ビザは外国人社員だけのものではなく、企業にとっても重要なものであることをご理解いただけたのではないでしょうか。
前述したように、本人任せになってしまうことによる失敗例は多く、一度失敗してからビザ管理の重要さを認識する企業も少なくありません。何か問題が起こってから当事務所にご相談をいただくことも多く、その際は当事務所でもできる限りのサポートは行います。
しかし、一度手続きなどで失敗したリカバリーは簡単ではありません。予めそうならないような体制づくりをしておく必要性があると感じます。本記事が、外国人社員のビザ管理業務を社内で見直す機会になれば幸いです。
リガレアス行政書士事務所では、ビザ管理の体制づくりに対してご支援をさせていただいております。これから専門部署の組織づくりを検討される企業や、外国人社員のビザ管理でご相談がありましたら、リガレアス行政書士事務所にご相談ください。
記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。