リガレアス行政書士事務所の広瀬です。

これまで、日本ビザに関するさまざまな記事を読んできて、不思議に思うことがありました。就労ビザやアルバイトに関する企業向けの記事、家族や配偶者など身分に関する記事は多く見てきましたが、大学などの教育機関向けの記事が非常に少ないことです。

ここで突然ですが、「適正校」という言葉をご存知でしょうか。実務担当者でも、意外とこの言葉を知らない方も多いと思います。適正校という言葉は、留学生を受け入れるに当たって非常に重要なキーワードとなります。

本記事では、まず適正校とは何か、適正校になるとどんなメリットがあるのかを解説します。さらに適正校になるための基準、その基準を満たすための方法もアドバイスしていきます。

日本ビザに関する専門家が大学向けに解説をしている記事は、あまり見ないと思いますので、お役に立つような内容になっていると思います。

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適正校・慎重審査対象校・在籍管理非適正校について

毎年11月頃、教育機関宛に出入国在留管理局から届いている通知を見たことがありますでしょうか。

1年に一度、出入国在留管理局が教育機関に対して、在籍する外国人留学生の在留管理の適正性について、適正校であるかを選定し、その通知が毎年11月頃に送付されます。この通知を見たことがないという方がいれば、まずはこの通知を確認してみてください。

適正校とは、出入国在留管理局が留学生の在留管理を適正に行っている教育機関と認めたことになります。逆に、適正校に選定されなかった場合は、慎重審査対象校として留学生の在留管理が適正に行われていない教育機関と判断されたということです。

ここからは適正校についての詳細と慎重審査対象校について解説致します。

適正校とは

適正校とは、留学生の在籍管理を適正に行なっていると入管が認めた大学です。

適正校に選定されたなかでも、特に在籍管理が適正と認められる大学を「適正校(クラスⅠ)」、それ以外の大学を「適正校(クラスⅡ)」の二つにクラスが分けられます。クラス分けについては後述します。

クラスⅠ、Ⅱに関わらず、適正校に選定された場合のメリットは、以下の通り大きく2つです。

  • 申請提出書類の簡素化
  • 長期の在留期間の付与

それぞれのメリットを解説していきます。

申請提出書類の簡素化

本来、「留学」の在留資格認定証明書交付申請時には、さまざまな資料の提出が求められます。例えば、以下のような資料の提出が必要です。

  • 履歴書
  • 最終学校の卒業・成績証明書
  • 日本での経費を支弁する方の預金残高証明書
  • 留学生と経費を支弁する方の関係を示す書類 など

基本的に上記資料の発行は外国で、現地の言語で作成されているため、日本語の翻訳も必要です。

これらの資料を全て集め、さらに資料の内容をチェックする作業は、担当者にとって非常に手間のかかる作業でしょう。留学生が1、2名だけならまだしも、数十名、数百名となると、ビザ手続き以外の業務まで手が回らなくなってしまうほどの作業量だと思います。

これら資料の提出が不要になり、作業が減るというのは、手続きを行う担当者にとっては、非常にメリットに感じられることでしょう。

また、前述した適正校(クラスⅠ)と適正校(クラスⅡ)の違いは、この提出書類の点です。入管は留学生の国籍で提出書類を分けていて、入管が定めた118か国以外の国を慎重審査対象国としています。適正校(クラスⅡ)では慎重審査対象校に比べて書類は簡素化されていても慎重審査対象国の留学生は提出が求められる書類がある一方で、適正校(クラスⅠ)であれば、慎重審査対象国であってもそれ以外の国と同様に書類が免除されます。つまり、適正校(クラスⅠ)に選定されれば、よりメリットを受けることが可能です。

なお、本記事執筆時点では、大学では適正校(クラスⅠ)と適正校(クラスⅡ)の間で提出書類の違いはなく、専門学校や日本語学校で提出書類の違いがあります。

しかし、今後大学においてもこのような措置が取られる可能性がありますので、適正な在籍管理はさらに求められます。

留学ビザの申請についてはこちらの記事でも詳しく解説していますのでお読みください。

長期の在留期間の付与

学部生として大学に通うのであれば、通常在籍期間は4年間です。適正校の選定を受けている大学に在籍する留学生であれば、「留学」の在留期間は最長の「2年3月」が与えられます。入学から卒業までストレートに行けば、在籍期間中に一度だけ期間更新すれば卒業できます。

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一見、留学生だけのメリットのように感じられますが、実は大学の担当者にとってもメリットがあります。

在留期間更新申請は、留学生本人が申請をすることが多いと思います。しかし、提出資料は大学からも準備をしなければなりません。大学によっては、留学生が揃えた資料を全て確認した上で、大学からの資料を手渡すことにしている大学も少なくないようです。

この場合、1人の留学生が在籍期間中一度だけ更新をする場合と、複数回更新を行う場合とどちらが担当者にとって工数がかかるかは言うまでもありません。

このような点が適正校としてのメリットと言えます。

慎重審査対象校とは

ここまで解説をしてきて想像が付くかと思いますが、慎重審査対象校に選定されてしまうと、適正校とは逆にデメリットが出てきます。それでは、どのようなデメリットが出てきてしまうのか、解説していきましょう。

必要資料が増える

適正校に比べ、在留資格認定証明書交付申請時の提出資料が増えます。正確には「増える」というよりも、本来求められる資料を全て提出することが必要になります。

提出資料が増えるということは、単純に担当者の作業が増えるというだけではありません。提出資料が全て審査対象となるため、その分、審査が厳しくなります。

さらに、審査の過程で追加資料を求められたり、申請の不許可を受けてしまう可能性も上がったりするといったデメリットも考えられます。

定員などを考慮して許可を出している大学にとっては、入学許可を出してもビザが取得できないために入学ができないことは避けたい話でしょう。このような点からも慎重審査対象校になると、デメリットが大きいです。

在留期間が短い

慎重審査対象校になると、最長の在留期間は「1年3月」になります。

「在留期間が短い=在留期間更新許可申請の回数が増える」ということです。

「2年3月」がもらえていれば、卒業までは一度の更新で済む一方、「1年3月」の在留期間だと卒業まで最低3回は、在留期間更新許可申請が必要です。

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前述のように、申請の都度、手続きに必要な資料を確認、作成作業が発生することは、担当者にとっても非常に手間となります。さらに、在留期間が短いと在留期限の管理が大変です。在留期限を大学で管理していない方は一度検討してはいかがでしょうか。後述しますが、オーバーステイ(不法滞在)は、適正校選定基準の一つに関わってきます。在留期限が短いことにより、留学生のオーバーステイのリスクが高まることも想定されます。

在留資格「留学」付与の停止

3年連続で慎重審査対象校に選定されると、改善が認められるまでの間、留学生への在留資格「留学」の付与を停止され、大学名を出入国在留管理庁と文部科学省が同時に公表することになっています。

大学としては、上記の必要資料が増えることや在留期間が短いことに比べ、大きなインパクトがあるのではないでしょうか。正規性だけでなく、交換留学生や研究生なども原則受け入れることができなくなります。

3年連続で選定された場合なので、慎重審査対象校に選定されて直ちに「留学」の付与が停止されるわけではありません。もし慎重審査対象校に選定されてしまったら、すぐに在籍管理を見直す必要があるでしょう。

在籍管理非適正大学とは

適正校でも慎重審査対象校でもない、在籍管理非適正大学とはなんでしょうか。

適正校や慎重審査対象校は、出入国在留管理庁が選定するものでした。一方で、在籍管理非適正大学は、文部科学省が選定するものです。

退学者・除籍者・所在不明者が出た場合は、大学から文部科学省へ報告が必要です。文部科学省はその報告を受け、発生状況に応じて在籍管理状況を調査、必要な改善指導を実施します。改善指導の結果、改善が見られない場合は、在籍管理非適正大学として、法務省に通告されることになっています。

流れを簡単に図にすると以下のようになります。

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在籍管理非適正大学に選定されてしまうと、前述の慎重審査対象校と同様に在留資格「留学」の付与が停止されます。慎重審査対象校と違う点は、3年間の猶予期間がないという点です。

さらに不法残留者の発生状況、在籍管理の適正を欠く大学に対して、文部科学省から以下のような制裁もあります。

  • 私立大学等経常費補助金の減額・不交付
  • 奨学金枠の削減
  • 政府主催の留学フェアへの参加制限 など

ここまでの解説で適正校・慎重審査対象校・在籍管理非適正校それぞれの違いや適正校のメリットについてご理解いただけたかと思います。

 

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適正校の選定基準

次に、適正校に選定されるために必要なことは何かということにご関心があるはずです。

では次に適正校の選定基準を解説していきます。

次に、適正校の選定基準について解説します。選定の基準は以下の3つです。

  • 問題在籍率5%以内
  • 所属機関による届出の提出
  • その他適切な在籍管理

それでは一つずつ解説していきます。

問題在籍率5%以内

問題在籍者とは以下に当てはまる留学生をいいます。

  1. 不法残留者
  2. 「留学」の在留期間更新許可申請が不許可となった者
  3. 在留資格を取り消された者
  4. 退去強制令書を発付された者
  5. 資格外活動許可を取り消された者

1月1日から12月31日までの1年間で、この問題在籍者の数が大学の留学在籍者の5%以内であることが選定基準の一つです。前年の1月末の在籍者数が19人以下である場合は、問題在籍者が1人を超えないことが基準になります。数字で示しているため、かなり明確な基準です。

これは留学生100人の大学で、6人以上の不法残留者や期間更新不許可者を出してしまうと慎重審査対象校に選定されることになりますので、非常に厳しい基準と言えます。

所属機関による届出の提出

留学生の受け入れを開始した(入学)時と受け入れを終了した(卒業・退学・除籍)時に、出入国在留管理局へ届出を提出しなければなりません。オンラインや書面による郵送などで届出を行います。

これまでお話をした大学の担当者の方から、届出をしていなかったというお話を伺ったことがありませんので、ほとんどの大学は届出を行っていると思います。

届出をしっかり提出することも選定基準の一つになっていますので、忘れずに行いましょう。

その他適切な在籍管理

非常に曖昧な基準ではありますが、以下のような例が在籍管理上不適切なものに当たると考えられます。

  • 不法在留になっていなくても退学した後に日本を出国しておらず、失踪者が多く発生している
  • 資格外活動許可違反で摘発を受け、退去強制となった学生が多発し、大学が適切な対応を講じていない など

上記は一例ですが、適切に在留管理が行われていると認められれば、適正校の選定基準を満たすことになるでしょう。

適正校のクラス分け

適正校の選定基準について解説しましたが、ここでは適正校のクラス分けの基準について解説しましょう。

適正校の基準をクリアして適正校に選定された大学のなかでも、以下のすべての要件を満たした大学が適正校(クラスⅠ)に選定されます。

  • 問題在籍率が3年間継続して1%以下であること
    ただし在籍者が99人以下の場合は、問題在籍者が1人以下であること
  • 「適正校」の通知を3年間連続して受けていること
  • 前年中に所属機関による届出を適切に履行したことが確認できること

    このように、適正校(クラスⅠ)に選定されるためには、適切な在籍管理を継続して行うことが求められます。

    なお、これらの要件を満たせなかった場合は、適正校(クラスⅡ)に選定されます。

    適正校の選定基準を満たすためにすべきこと

    ここまで解説したように、出入国在留管理局から適正校の選定基準が示されていて、その基準を満たせば適正校に選定されますので非常にシンプルです。

    これらの基準を満たすために、大学がすべきことは一体なんでしょうか。これまでさまざまな大学とお取引やご相談をお受けした経験から、私から以下の5点をご提案をしたいと思います。

    1. 入学時の選定
    2. 在留期限の管理
    3. アルバイト管理
    4. 授業サポート
    5. 定期的な説明会の実施

    一つずつ解説していきます。

    入学時の選定

    留学生を受け入れる際に、留学生の経費支弁についてどこまで確認をしているでしょうか。経費支弁とは、日本での学費や生活費を支払う能力があるかどうかということです。日本人学生とは違い、アルバイトなどの就労制限があるため、入学時に留学生の経費支弁について確認することが必要です。

    この確認を怠ると、いずれアルバイトの時間超過による資格外活動許可違反となったり、授業料の未払いで除籍に繋がったりすることも少なくありません。また、除籍になった後に留学生と連絡が取れないまま不法残留になってしまうケースもあります。

    入学時の確認材料の一つとして付け加えてはいかがでしょうか。

    在留期限管理

    在留期限の管理は、留学生本人に任せていることが多いと思います。もちろん大学生なので、自己管理は当然です。

    しかし、在留期間更新許可申請を忘れ、在留期限を超えるとオーバーステイになってしまいます。そもそもオーバーステイは退去強制事由に当たるため、日本を強制出国しなければならない場合もあります。

    オーバーステイになっても、適正校選定基準の不法残留者に直ちに数えられることはないです。それでも、あまり授業に出席をしていない留学生など、そのまま不法残留になってしまう可能性もあります。

    不法残留になってしまうと、適正校選定基準に関わってきますので、在籍管理の観点からも学校側でしっかりと管理されるのが良いでしょう。

    こちらの記事でオーバーステイについて解説しています。

    アルバイト管理

    近年、出入国在留管理局ではアルバイトの時間超過による資格外活動許可違反は、非常に厳しく審査をしています。在留期間更新許可申請の際に、アルバイトの時間超過が発覚すると、申請が不許可を受けることが非常に多いです。

    当事務所にご相談いただくケースでも最も多く、期間更新が不許可を受けてしまうと、適正校の選定基準に影響します。

    しかし一方で、留学生は大学に隠して掛け持ちでアルバイトをすることができてしまうため、大学での管理は限定的になってしまうのが現実でしょう。アルバイト先を大学に届けさせたり、源泉徴収票を提出させたり、大学としての対応はさまざまですが、できる範囲での対応は必要です。

    授業サポート

    留学生にとって、異国で勉強し生活をするというのは、とても大変なことだと思います。実際に留学生から、言葉の問題で授業がわからない、母国との教育方法の違いから授業についていけないなどのお話を伺うことも多いです。

    授業についていけないことにより、成績不良に陥り、成績不良のために在留期間更新許可申請で不許可を受けてしまうこともあります。成績不良による在留期間更新申請の不許可も適正校選定基準に影響しますので、留学生に対する授業のサポート体制を構築しておくことも、在籍管理や適正校選定基準を満たすために必要です。

    定期的な説明会の実施

    留学生にとって、日本は異国の地です。異国の地で生活していくためのルールはわからないことだらけでしょう。

    そんな留学生に対して、日本で守らなければいけないルールや必要な手続きを認識させておく必要があります。ビザに関して言えば、「入学時」「就職活動時」「卒業時」に説明会を行うのが望ましいと考えます。説明会を通して、ルールや必要な手続きを認識させ、大学の在籍管理を円滑に進めることが、適正校への第一歩です。

    前述の通り、適正校の選定は毎年行われます。今年適正校でも、来年には慎重審査対象校に選定されてしまうこともあるかもしれません。そうならないように、しっかりと在籍管理を進めていくことが必要です。

    まとめ

    今回は、大学の適正校について、選定基準や選定されるためにすべきことなどを深掘りして言及しました。

    本記事をお読みいただき、留学生を受け入れるに当たって、適正校に選定されることがいかに大事なことか、ご理解いただけたのではないでしょうか。

    大学によって状況や事情は異なりますので、解説したような対応を全て実践すれば、必ず適正校に選定されるといったものではありません。

    留学生の在籍管理をうまく進め、適正校の選定を受けるために、専門家の助言やサポートを受けることもお勧め致します。

    留学生の在籍管理や適正校の選定について、ご相談があればお気軽にご連絡ください。

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