研修ビザ(在留資格)とは?取得要件や注意点を解説
- 2024.03.07
リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。
当事務所に、日本で研修をさせるために海外から外国人を呼びたいというご相談は多くあります。日本で研修を行うための在留資格として研修ビザがありますが、どのような在留資格か詳しくご存知でしょうか。
そこで今回は、海外から研修生を呼び寄せたい企業のご担当者に向けて、研修ビザについて解説していきます。
本記事をお読みいただければ、研修ビザがどういった在留資格かご理解いただけます。
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目次
研修ビザ(在留資格)とは?
研修ビザとはどういった在留資格かをみていきましょう。
研修ビザの概要
研修ビザとは、開発途上国・地域から外国人を一定期間受け入れて、技能などを修得させ、本国に帰国した後に日本で修得した技能を活かして、その国の発展に寄与する「人づくり」に貢献する制度です。
研修ビザで修得する技能は、同一の作業の反復のみによって修得できないものでなければなりません。また研修ビザでは実務研修を行うことができず、原則として非実務研修になります。
さらに、日本の企業との雇用契約がなく報酬も発生しない在留資格です。日本で修得した技能を本国で活かすことが目的の在留資格ですので、研修が終了した後は本国に帰国する必要があります。このような趣旨から家族を日本に帯同することはできません。
雇用形態と報酬
研修生と受入機関との間に雇用関係はなく、研修生は日本で技能を修得する活動を行うことで報酬を受けることはできません。
また、研修に専念するという趣旨から、日本で資格外活動(アルバイト)も認められていません。ただし、日本滞在中の生活費や交通費などの実費を支払うことは認められています。
海外に技能を移転するという制度の趣旨から、研修が終了した後の帰国費用は受入機関またはあっせん機関が負担することが必要です。
在留期間
研修ビザで与えられる在留期間は、「1年」、「6月」、「3月」のいずれかです。
継続して在留できる期間は原則として1年までですが、1年を超える研修を行うことに合理的な理由がある場合に2年まで認められます。
当初の研修予定期間を超えて同一内容の研修を行うために期間更新申請をした場合、本人や受入機関から事情をヒアリングされ、慎重に審査されます。
予定の研修期間を延長することについて、特別の事情があると認められた場合に限って、期間更新が許可されます。
非実務研修と実務研修とは?
研修ビザは、原則として非実務研修を行うための在留資格で、実務研修は限定的に認められているだけです。そのため、非実務研修と実務研修について理解しておかなければなりません。
実務研修とは、商品の生産もしくは販売をする業務または対価を得て役務の提供を行う業務に従事することにより技能等を修得する研修をいいます。一般の職員と同じように生産ラインで製品を生産することで技能や技術を修得することが実務研修にあたります。
一方で非実務研修は、座学や試作品の製造、模擬訓練、見学、マンツーマン指導などによる研修です。
生産ラインで行う実習は実務研修に該当し、試作品の製造は非実務研修に該当するとされていますが、製造業などで生産機器の操作を行う実習では、この判断がとても難しいのではないでしょうか。
そこで、入管が示している非実務研修の例を挙げてみましょう。
- 生産施設とは別の研修センターなどの施設で行う場合
- 生産ラインとは明確に区分されている模擬ラインを使用する場合
- 通常の生産ラインを使用するが、時間を分けて研修生による試作品製造のために使用し、そのことが第三者にも明確にわかる状態で行われる場合
このような場合は非実務研修になります。
実務研修を行うための要件は後ほど説明しますが、一般の企業が研修ビザで研修をするためには、実務研修を含めることができませんので注意しましょう。
技能実習との違い
研修ビザと同じ趣旨・目的をもつ在留資格として技能実習ビザがあります。似たような在留資格ですのでここで解説していきましょう。
ここまでみてきたように、研修ビザでは雇用契約は不要で、報酬も発生しません。また実務に従事することはできず、非実務研修のみ行うことができる在留資格です。
一方で技能実習ビザは日本の企業と雇用契約が必要になります。その雇用契約に基づき実務研修を行い、それに対する対価として報酬が発生します。
研修ビザと技能実習ビザの比較
研修ビザ | 技能実習ビザ | |
雇用契約 | 不要 | 必要 |
報酬 | なし | あり |
実務研修 | 原則できない | できる |
このように、雇用契約や報酬の有無、実務研修ができるかどうかといった違いがあります。日本で研修を行うことが目的であっても、内容によって在留資格が異なりますので、適切な在留資格で申請するようにしましょう。
「技能実習」についてはこちらの記事もお読みください。
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研修ビザの取得要件について
ここでは研修ビザの取得要件を解説していきます。
非実務研修の場合
研修ビザの申請要件は以下のようになります。
- 修得しようとする技能が同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと
- 研修生が18歳以上で、自国に戻り日本で修得した技能を要する業務に従事すること
- 自国で修得することが困難な技能を修得しようとすること
- 修得しようとする技能について5年以上の経験がある研修指導員の指導の下で行われること
- 受入機関またはあっせん機関が研修生の帰国旅費の確保、帰国担保措置を講じていること
- 受入機関が研修の実施状況に係る文書を作成し、研修を実施する事業所に備え付け、研修終了の日から1年以上保存すること
「同一の作業の反復」とは、同じ作業を繰り返し行い、特段のレベルアップが期待できない作業に従事することをいいます。
また、研修ビザは技能移転が目的ですので、自国で修得が可能な技能であれば日本で研修する必要性がないと判断され、要件を満たしません。
さらに、すでに研修生が身につけている技能や研修計画の到達目標が低く、日本から移転すべきレベルに達していない場合も要件を満たさないことになります。
日本で行う研修内容については事前に検討しておく必要があるでしょう。
技能移転が目的のため、自国に戻って日本で修得した技能に係る業務に従事することが求められます。研修終了後に、別の在留資格で日本に戻ってこようとした場合、自国で従事していた業務内容を確認されることがあります。もし自国で全く異なる業務に従事していると在留資格が下りないことがありますので注意しなければなりません。
研修指導員は、カリキュラムを管理するなど包括的指導の下に行われるものでもよく、必ずしも研修指導員が直接的な指導を行う立場でなくても構いません。
なお、研修指導員の経験年数は、同一の機関におけるものだけでなく、他の機関での経験年数を通算することができます。
研修生の帰国に支障をきたすことがないように、受入機関またはあっせん機関は帰国旅費の全額を負担しなければなりません。これも海外へ技能移転するという制度趣旨によるものです。
他にも、受入機関の受入れ体制が十分に整っていることが必要です。研修生が技能を学ぶための設備や実施場所が確保されていること、カリキュラムの策定や生活指導など研修実施のための事務を行う体制があることが求められます。
研修ビザでは報酬を受けることができませんが、研修生に対して研修手当を支給することは認められます。ただし、日本での生活費などの実費弁償として支払われるものに限られ、研修生が行った役務の給付に応じて支払われるものは報酬とみなされますので、手当を支給する場合は注意しましょう。
実務研修を行う場合
前述のように、研修ビザでは原則実務研修を行うことは認められていません。ただし、一定の要件を満たせば実務研修を行うことは可能です。
実務研修を行う場合は、非実務研修の要件を満たすとともに、以下の機関が行う研修を受ける必要があります。
- 国もしくは地方公共団体の機関または独立行政法人が実施する研修
- 独立行政法人国際観光振興機構の事業として行われる研修
- 独立行政法人国際協力機構の事業として行われる研修
- 独立行政法人エネルギー・金融鉱物資源機構技術センターの事業として行われる研修
- 国際機関の事業として行われる研修
- 上記以外で、国、地方公共団体または日本の法律により直接設立された法人もしくは特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人もしくは独立行政法人の資金により主として運営される事業として行われる研修で受入機関が以下のいずれにも該当する場合
- 宿泊施設を確保していること
- 研修施設を確保していること
- 生活の指導を担当する職員を置いていること
- 研修中に死亡、負傷、疾病に罹患した場合における保険への加入その他の保証措置を講じていること
- 研修施設について労働安全衛生法の規定する安全衛生上必要な措置に準じた措置を講じていること
- 申請人が外国の国もしくは地方公共団体またはこれらに準ずる機関の常勤職員で、受入機関が上記1から5までのいずれにも該当する場合
- 申請人が外国の国または地方公共団体の指名に基づき、日本の国の援助及び指導を受けて行う研修を受ける場合で、申請人が自国において技能を広く普及する業務に従事し、受入機関が上記の1から5のいずれにも該当する場合
さらに、実務研修を受ける時間は全体の3分の2以下でなければなりません。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は実務研修を全体の4分3以下で実施することが可能です。以下のいずれにも該当する場合は実務研修を全体の5分の4以下で実施することができます。
- 実務研修を4ヶ月以上行う場合
- 外国で過去6ヶ月以内に直接関係のある研修を1ヶ月以上160時間以上行った場合
このように、研修ビザで実務研修を行うことは、とても限定的に認められているに過ぎません。一般の企業が研修ビザで研修生を受け入れる場合は、実務研修は行うことができないことに注意しましょう。
研修ビザの手続きの流れ
ここでは研修ビザを取得して日本に入国するまでの流れを解説します。手続きの流れを簡単に示すと以下の図になります。
まずは、日本にある出入国在留管理局で在留資格認定証明書交付申請を行います。研修生は日本にいませんので、この申請は日本にある受入機関がしなければなりません。出入国在留管理局での審査にかかる標準処理期間は1ヶ月から3ヶ月です。
在留資格認定証明書が交付された後、研修生が住む場所の日本大使館・領事館で研修生が査証申請を行います。査証が発給されるのは一般的に申請してから5営業日です。
査証が発給されたら、在留資格認定証明書と査証をもって日本に入国します。
在留資格の取得から入国までの流れについては、こちらの記事もお読みください。
研修生の受け入れ先が注意しておくポイント
ここでは研修生の受入機関が注意しておく必要があるポイントを解説します。
再研修
一度研修ビザで研修を終えて、再度研修ビザを取得しようとする場合、通常の審査要件に加えて以下の要件が必要になります。
- 前回より上級または前回と関連する異なる技術等の修得を目的とする再研修であること
- 前回研修で学んだ技術等が母国で活用されていること
- 前回と全く異なる業種に係る研修でないこと
前回と同じ研修内容になると、前回の研修が適切に実施されていなかったという問題になってしまいます。そのため、前回より上級の研修を行うなど、再研修が必要な合理的理由がなければなりません。
なお、前回の研修の遅延や修得状況が不十分といった理由による再研修は認められません。
また、前回の研修で学んだ技術等を母国で相当の期間、活用していたことが必要です。母国で研修の技術を活用していた期間が、日本での研修期間と比べてあまりに短い場合は、その理由に合理性がないと再研修は認められません。
このように、一度研修ビザで日本に滞在していたことがある人を、再度研修ビザで呼び寄せる場合には注意が必要です。
在留資格変更許可申請
原則として、研修ビザから他の在留資格に変更することはできません。
研修生は研修終了後、すぐに帰国して研修で学んだ技術等を母国で活かすことが前提のため、日本で引き続き企業で就労するために就労ビザに変更することは認められません。
ただし、日本で結婚するなど、身分関係の成立による「日本人の配偶者等」などへの在留資格の変更は認められることがあります。
さいごに
研修ビザにおいて理解が必要な実務研修と非実務研修の違いや、申請要件、受入機関が注意しておくポイントなど、研修ビザについて具体的に解説してきました。
これから初めて研修ビザ申請を検討している方も、この記事をお読みいただいて整理できたのではないでしょうか。
研修ビザは、日本で行う研修内容や実務研修と非実務研修の判断などがポイントになりますので、事前に研修内容を検討した上で申請を行うようにしましょう。
当事務所にも、海外から研修生を呼びたいというご相談は多いです。しかし、話を伺うと報酬が発生したり、実務研修を希望していたり、研修ビザに該当しないことも少なくありません。そういった場合は、技能実習ビザなどの別の在留資格を検討する必要があります。
また、研修といっても日本で行う業務が大学で学んだ知識などを活かすような高度な業務であることもあり、「技術・人文知識・国際業務」といった就労の在留資格を申請することもあります。
このように研修といっても、日本で行う業務や報酬の有無などで申請する在留資格が変わりますので、他の在留資格についての理解が必要です。そのため、在留資格の判断が難しい場合には、行政書士などの専門家に相談することもお勧めします。
リガレアスでは「技能実習」や「特定技能」、「技術・人文知識・国際業務」など、「研修」以外の様々な在留資格での申請経験が豊富にあります。日本で行う業務内容などから最適な在留資格を判断してご案内しますので、スムーズな呼び寄せや手続きが可能です。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。