身分系のビザ(在留資格)とは?雇用する際の注意点も解説
- 2024.01.22
リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。
「永住者」や「日本人の配偶者等」の在留資格は、身分系の在留資格と呼ばれます。就労制限がないため、比較的雇用しやすい在留資格だといえるでしょう。
しかし、就労制限がないといっても、雇用する際に注意しなければならないこともあります。
そこで今回は、身分系の在留資格をもつ外国人を雇用している、または雇用を検討している企業のご担当者様に向けて、身分系の在留資格の概要や雇用する際の注意点について解説していきます。
本記事をお読みいただければ、身分系の在留資格とはどういったものか、また雇用する際の注意事項についてご理解いただけます。
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目次
身分系のビザ(在留資格)とは?
身分や地位に基づいて与えられる居住資格で、就労制限がない在留資格です。
以下4つの在留資格を身分系ビザと呼んでいます。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
いずれの在留資格も就労制限がないため、どのような職種であっても働くことが可能で、工場作業や荷役作業といったいわゆる単純労働型の業務に従事することも可能です。
企業にとっては採用を検討しやすい在留資格でしょう。
ここでは、それぞれの在留資格について解説していきます。
永住者
一般的に永住権と呼ばれる在留資格で、在留期間が無期限になり在留期間更新やオーバーステイの心配は不要になります。また他の身分系ビザと異なり、身分関係が変わることにより在留資格の該当性がなくなるといったこともありません。
ただ、「永住者」であっても日本においては外国人という扱いのままです。そのため、日本を出国する際は、再入国許可(みなし再入国を含む)で出入国する必要があります。在留期間が無期限であっても海外へ出国して再入国許可の期間内に日本に再入国できなかった場合には「永住者」を失ってしまいます。もし「永住者」を海外出向させる場合は注意しましょう。
また、退去強制になる可能性も残されています。
例えば犯罪を犯して1年以上の懲役刑を受けたり、薬物違反により有罪判決を受けたりすると日本を強制的に出国しなければならず、「永住者」の在留資格を失ってしまいます。
就労制限がなく在留期間も無期限ですので、雇用する企業にとっては制限がとても少ない在留資格ではありますが、こういった注意点があることは留意しておきましょう。
「永住者」について詳しく知りたい場合は、こちらの記事もお読みください。
日本人の配偶者等
「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者や日本人の子として出生した人が取得できる在留資格です。
身分関係に基づいた在留資格ですので、配偶者である日本人が死亡した場合や離婚した場合は、在留資格の該当性がなくなり、別の在留資格に変更しなければなりません。
雇用している外国人が日本人と離婚をしてしまったような場合には、そのままの在留資格で雇用し続けることはできませんので、在留資格を変更するように案内しましょう。
一方で、日本人の子として出生したとして「日本人の配偶者等」をもっている場合は身分関係が変わることはないので、その点において在留資格の該当性がなくなるといった心配はないでしょう。
「日本人の配偶者等」についてはこちらの記事でも解説しています。
永住者の配偶者等
「永住者の配偶者等」とは、永住者の配偶者や子が取得できる在留資格です。
「日本人の配偶者等」と同じように、配偶者である永住者が死亡した場合や離婚した場合は、在留資格の該当性がなくなり、別の在留資格に変更しなければなりません。
永住者の子どもとして「永住者の配偶者等」をもっている場合は、日本で出生し、引き続き日本に在留していることが「永住者の配偶者等」の要件です。
そのため、海外出向などで単純出国して「永住者の配偶者等」を失うと再度取得することはできず、別途就労ビザを取得する必要がありますので注意しましょう。
定住者
「定住者」とは、他のいずれの在留資格にも該当しないものの、日本において相当期間の在留を認める特別な事情があると法務大臣が判断した人を受け入れるために設けられた在留資格です。
法務大臣が、あらかじめ定住者告示で定める一定の類型の地位に当てはまる外国人に日本での在留を認める「告示定住」と、定住者告示に当てはまらないが個々に活動の内容を判断して日本での在留を認める「告示外定住」があります。
難民や日系人、定住者の配偶者や子など、様々な人が該当します。
「定住者」のいくつかの類型では、素行善良要件が定められています。素行善良要件とは、日本または海外での犯罪歴のことです。
原則として懲役刑や禁錮刑、少年法による保護処分などがあると在留が認められません。また在留中に海外へ長期に出国していた場合などは、海外での犯罪歴についても調査されることがあります。
会社が管理できる部分は限られますが、事前に注意喚起をしておくことも必要でしょう。
※もっとも他の在留資格においても、犯罪を犯して1年以上の懲役刑を受けたり、薬物違反により有罪判決を受けたりすると退去強制になる可能性があるため、「定住者」以外の在留資格においても注意が必要です。
「定住者」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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身分系の在留資格をもつ外国人を雇用する場合の注意点
ここでは、雇用している外国人が身分系の在留資格をもっている場合の注意点を解説していきます。
在留期間
「永住者」は在留期間が無期限となりますが、それ以外の在留資格の在留期間は最長でも「5年」です。在留期間の満了日までには在留期間更新申請を行わなければなりません。もし在留期間更新申請を行わないと、オーバーステイとなってしまい、退去強制になってしまう可能性があります。就労ビザとは違って、会社が在留期限を管理していないことが多いのでオーバーステイにならないように注意しましょう。
オーバーステイについてはこちらの記事もお読みください。
身分系の在留資格は、身分や地位に基づいて与えられるものです。更新申請時に身分関係が変わっていると更新申請ができなくなります。
例えば、日本人の配偶者として「日本人の配偶者等」をもっている方が、離婚した場合、「日本人の配偶者等」の在留資格の該当性がなくなるため、更新申請ができません。日本を出国するか別の在留資格に変更する必要があります。
「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の離婚
日本人や永住者の配偶者として「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格をもっている場合、日本人や永住者と婚姻をしていることが要件なので、離婚してしまうとそれらの在留資格に該当しなくなってしまいます。そのため、離婚した時点で日本を出国するか、在留資格を変更する必要があります。
つまり、離婚した後も「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」で引き続き雇用し続けることはできません。雇用している外国人社員のプライベートなことなので、会社がどこまで把握できるかは難しいでしょう。しかし、把握できていないと不法就労させてしまうことにもなりかねませんので、会社がビザの管理をして、外国人社員とコミュニケーションを取って状況を把握できるようにしておく必要があります。
なお、離婚だけでなく配偶者との死別の場合も同様です。
また婚姻関係が続いていても別居しているなど、婚姻の実態を伴っていない場合も在留資格の該当性がないと判断されます。
さらに離婚や死別をした時は、14日以内に入管に配偶者に関する届出を提出して、離婚または死別したことを報告しなければならないことにも注意しましょう。14日以内に届出をしないと外国人本人が20万円以下の罰金に処せられることがあります。
離婚した場合の在留資格の変更
前述のように、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」をもつ人が配偶者と離婚した時は、日本を出国するか、在留資格を変更する必要があります。外国人を引き続き雇用するのであれば、在留資格を変更することが必要です。
選択肢としては、就労の在留資格または「定住者」のいずれかになるでしょう。
「定住者」に変更する際は、生計を営むに足りる資産や技能をもっていること、日常生活に不自由しない日本語力があること、公的義務を履行していることなどの要件を満たし、これまでの在留状況や引き続き日本に在留する必要性などが審査されます。
審査では総合的に判断されるため、たとえ日本での在留期間や婚姻期間が長かったとしても婚姻の実体がなかった場合や、長期に渡って単身で日本を離れていたような場合では「定住者」への変更申請で不許可を受けることもあります。「定住者」に変更する際は、これまでの在留状況などを確認しましょう。
ただし、前述のように総合的に判断されるため、同じようなケースでも審査結果が異なることもあります。
「定住者」に変更することができれば、それまでと同様に就労制限はありません。
もし「定住者」への変更が難しいと考えられる場合は、就労ビザへの変更を検討しましょう。それぞれの在留資格において、学歴や職歴、業務内容など様々な要件がありますので、どの在留資格に該当するか確認した上で申請を進めることが必要です。
就労の在留資格については、こちらの記事もお読みください。
さいごに
ここまで身分系の在留資格と呼ばれる「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」について、在留資格の概要と雇用する際の注意点について解説してきました。身分系の在留資格についてご存じだった方も、より詳しく理解することができたのではないでしょうか。
これらの在留資格は就労制限がありませんので、どのような職種であっても働くことが可能ですが、身分事項が変更した際には在留資格の変更などが必要になります。企業にとっては就労制限がない分、雇用しやすい在留資格ではありますが、身分関係といったプライベートに関わる部分のため、会社が把握できないことも多いでしょう。外国人社員とコミュニケーションを取って、不法就労などにならないようにしていくことが必要です。
リガレアスでは、入管法上適切に外国人を雇用できるように、ビザに関するコンサルテーションや在留管理支援を行っております。また、必要な在留資格の申請手続きや届出手続きもサポートしております。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。