外国人社員の退職時における必要な手続き
- 2022.03.28
- 2023.06.11
リガレアス行政書士事務所の広瀬です。
人事担当者の方で、外国人が退職する時の手続きで悩まれたご経験はないでしょうか。弊社でも外国人が退職する際の手続きについてご相談を受けることは少なくありません。ネット上では外国人採用時の手続きについてはたくさんの情報が見受けられますが、退職時の手続きについてあまり多くの情報がないように思います。
そこで本記事では、外国人が退職する際に企業が行う手続き、外国人が行う手続きについて解説します。本記事をお読みいただければ、必要な手続きを理解できます。
外国人社員本人が行わなければならない手続きも多いので、必要な手続きをしっかり認識させ、適切な手続きができるようアドバイスをしてあげましょう。
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企業側が行う手続き
- 社会保険、雇用保険の資格喪失手続き
- 所得税、住民税に関する手続き
- 源泉徴収票の交付
- 離職票の交付
- 健康保険証の回収
上記は日本人が退職する時にも行う手続きです。外国人であっても原則は日本人と同様の手続きで進めましょう。
一方で外国人特有の手続きもあります。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 退職証明書の交付
雇用保険被保険者資格喪失届
外国人が退職する際には、ハローワークへ雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。日本人が退職する際にも提出する届出になりますが、外国人の場合には、在留カード番号、在留期間、在留資格などの記載が求められています。
この届出は、退職の翌日から10日以内に提出しなければなりませんので、事前に準備を進めましょう。
入管法では、別途、退職時から14日以内に入管に対して所属機関による届出の提出が求められていますが、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出することで、入管に対する届出は免除されます。
参考:所属機関による届出
退職証明書の交付
日本人が退職する際、退職証明書は社員から求められた場合に交付しますが、外国人社員の場合は退職時に必ず交付してください。退職後、外国人社員が在留期間更新や在留資格変更を行う際に、入管から求められることがあるためです。
退職証明書に決まった様式はありませんが、労働基準法の定めにより、在職期間、地位、職務内容、賃金、退職理由は記載しなければなりません。
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外国人側が行う手続き
所属機関に関する届出
外国人社員は退職してから14日以内に、入管に対して退職したことを報告するために所属機関に関する届出を提出しなければなりません。
もし届出をしなかった場合には20万円以下の罰金に、虚偽の届出をしてしまうと1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられることがあります。
さらに、届出をせずに新しい就職先で在留期間更新申請や在留資格変更申請を行なっても、申請が不許可になったり、許可を受けることができたとしても在留期間が短くなったりしてしまうこともありますので、必ず14日以内に届出をすることが重要です。
所属機関に関する届出は、就労の在留資格を持っている外国人が対象です。「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」または「永住者」の在留資格を持っている外国人は届出は不要になります。
所属機関に関する届出について、外国人社員が把握していないことも多いため、退職時に会社から届出をするようアドバイスをしてあげましょう。
所属機関に関する補足
転職により働く会社が変わる場合や会社の名称が変更する場合など、所属していた機関に変更が生じる際は、14日以内に入管へ所属機関に関する届出を提出しなくてはなりません。在留資格により提出する届出が異なります。
活動機関に関する届出 | 契約機関に関する届出 | |
対象在留資格 | 「教授」、「高度専門職1号ハ」、 「高度専門職2号」(ハ)、「経営・管理」、 「法律・会計業務」、「医療」、「教育」、 「企業内転勤」、「技能実習」、「留学」、 「研修」 | 「高度専門職1号イ」、「高度専門職1号ロ」、「高度専門職2号」(イ・ロ)、「研究」、 「技術・人文知識・国際業務」、「介護」、 「興行」、「技能」 |
届出事由 (事由が生じた時から14日以内に提出) | 活動機関の名称・所在地に変更 活動機関の消滅 活動機関からの離脱・移籍 | 契約機関の名称・所在地に変更 契約機関の消滅 契約機関との契約の終了・新たな契約の締結 |
所属機関に関する届出は、中長期在留者のみ必要な手続きのため、在留カードを持っていない外国人は上記の在留資格を持っていても届出は不要になります。
次の就職先が決まっている場合
新しい企業に入社してから14日以内に、入管に対して、入社したことを報告するために所属機関に関する届出を提出します。こちらの届出も外国人社員の義務となり、届出なかった場合には罰則が課せられることがありますので、必ず届け出てください。退職時の届出と同様に、この手続きを知らない外国人社員が多いので、会社からアドバイスしましょう。
新しい企業での職務内容と保有している在留資格が一致すれば、そのまま新しい企業で就労することが可能ですが、もし一致しない場合には在留資格変更許可申請を行わなければなりません。
例えば、「教授」の在留資格を持って大学の講師として働いていた外国人を民間の企業で雇用した場合には、「技術・人文知識・国際業務」への変更が必要です。
在留資格変更許可申請の必要がなくても、在留期間が迫っている場合には、転職後すぐに在留期間更新許可申請が必要になることがあります。
こちらの記事で、外国人を雇用する際の手続きについて詳しく解説していますので、是非お読みください。
次の就職先が決まる前に退職してしまう外国人の方も少なくありませんが、3ヶ月以上無職の状態が続いていると在留資格取消しに該当してしまいます。そのような外国人を採用して、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請を行なっても、不許可になってしまうことがありますので、無職の期間が長い外国人を採用する場合には注意が必要です。
帰国する場合
外国人社員が帰国する場合は、住んでいる市区町村で海外転出届を提出しなければなりません。海外転出届を提出すると住民票は「除票」となり、日本の住民ではなくなります。
また、空港から出国する際は、通称「EDカード」と呼ばれる再入国出入国記録を提出して出国の確認を受ける必要があります。EDカードには再入国の意思表示欄が設けられていますので、「『再入国許可』の有効期間内に再入国の予定はありません」にチェックをしましょう。そうすると在留カードに穴があけられ、在留カードが無効になります。
さいごに
ここまで、外国人社員が退職する際に必要な手続きを解説してきました。原則としては、日本人が退職する際に必要な手続きと同様ですが、外国人特有の手続きもあることをご理解いただけたと思います。
適切な手続きを取らないと、外国人本人が不利益を被ることがありますので、外国人社員にも必要な手続きをしっかりと認識させ、手続きを行うよう案内することが必要です。それまで一緒に働いてきた外国人が不安なく退職できるよう適切な手続きを行い送り出してあげましょう。
外国人が退職する理由はさまざまですが、せっかく採用した外国人がすぐに退職してしまうといった悩みを抱えている企業も多いと思います。ビザの観点から外国人社員の定着率を上げる工夫について解説した記事もありますので、外国人社員が定着せずにお悩みの方はこちらの記事もお読みください。
リガレアス行政書士事務所では、外国人の採用時や退職時の手続きについてのご相談やビザ手続きの代行など、ビザに関するさまざまなご相談をお受けしております。ビザ手続きでお困りのことがございましたらリガレアス行政書士事務所に是非ご相談ください。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。