日本でもデジタルノマドビザ制度が開始|取得要件や対象国を解説
- 2024.05.23
リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。
世界でも導入されているデジタルノマドビザが、日本でも2024年4月から開始されました。制度開始前から問い合わせが多かったので、関心のある方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、デジタルノマドビザの概要や取得要件、対象国などを解説します。お読みいただければデジタルノマドビザがどのようなビザなのかご理解いただけるはずです。
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目次
2024年4月1日、日本でもデジタルノマドビザが開始
2024年4月1日から日本でもデジタルノマドビザが開始されました。ここではデジタルノマドビザとはどのようなものか見ていきます。
デジタルノマドビザとは
まずデジタルノマドとは、働く場所に縛られず、ITを活用してリモートで旅をしながら働くことをいいます。
デジタルノマドビザは、そのような国際的なリモートワーカーを受け入れるために創設されたビザです。正確には「特定活動(53号)」で、その家族は「特定活動(54号)」になります。
外国の企業などに雇用されて海外の業務をICTを用いて、6ヶ月間日本で行うことが可能です。リモートワークを行うIT/ソフトウェア開発者、デジタルデザイナー、オンライン秘書、外国企業の事業経営を行う個人事業主などが対象者になります。
「特定活動」についてはこちらの記事もお読みください。
日本では「短期滞在」(いわゆる観光ビザ)で日本に滞在することができるのは最長90日で、日本で報酬を受ける活動をすることが認められていません。一方で日本で報酬を受ける就労活動をするには、日本で就労先を見つけることが必要です。
このように日本では「短期滞在」では長期で滞在することが認められず、日本で働くには日本で就労先を見つけなければならないため、デジタルノマドが日本で長期的に滞在することは困難でした。
今回のデジタルノマドビザが開始されたことにより、デジタルノマドが日本で働きながら長期で滞在することが可能になります。
「短期滞在」についてはこちらの記事もお読みください。
デジタルノマドビザが生まれた背景
コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及し、新しい働き方として世界的にデジタルノマドは増えています。A Brother Abroadの調査によるとデジタルノマドは世界で3500万人いるとされ、市場規模は7870億ドルと試算されています。
(参考:63 Surprising Digital Nomad Statistics)
日本でも2023年度の「経済財政運営と改革の基本方針2023」で、デジタルノマドビザを制度化することが盛り込まれました。デジタルノマドビザがすでに世界数十カ国で導入されていて日本が遅れをとっていることや、高所得者が多いデジタルノマドに日本に滞在してもらうことで、その経済効果を狙うことが背景にあるでしょう。デジタルノマドと日本人の交流により、日本のイノベーションの促進に繋がることも期待されています。
2024年2月3日からパブリックコメントが開始され、3月29日付で告示、4月1日からデジタルノマドビザ制度が開始されました。
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デジタルノマドビザの特徴とメリット
デジタルノマドビザの特徴とメリットについて解説していきます。
デジタルノマドビザの特徴
長期間日本に滞在しながら海外の仕事をすることができるのが最も大きな特徴です。
前述のように、これまで海外の仕事をしながら日本に滞在することができるビザがなかったため、これまで日本に長期で滞在することができなかった外国人材を日本に呼び込むことができるでしょう。
他にもデジタルノマドビザをもつ外国人は、中長期在留者に該当せず、在留カードが交付されないことも特徴といえます。中長期在留者に該当しない場合、住民登録が不要となり住民票が作成されず、住民税の納付対象にはなりませんし、国民健康保険の被保険者にもなりません。
なお、在留カードは交付されませんが、みなし再入国は認められています。
またデジタルノマドビザを取得できる国籍が限定されています。年収などの要件を満たしていても、該当の国籍者でない場合は、デジタルノマドビザを取得することができません。
デジタルノマドビザのメリット
繰り返しになりますが、日本に長期間滞在しながら海外の仕事をすることができるのが、一番のメリットといえるでしょう。
日本で就労などのビザを取得する場合は、日本に受入機関が必要です。そのためビザを取得する前に日本で雇用先を見つける必要がありますが、デジタルノマドビザは受入機関が不要ですので、受入機関がなくても取得できます。
また、デジタルノマドの扶養を受ける家族も一緒に日本に滞在することができるのも、デジタルノマドにとっては大きなメリットだと思います。
デジタルノマドビザの注意点
デジタルノマドビザでは、日本の企業と雇用契約を締結して働くことはできないことや日本国内の企業に役務提供する活動は認められないことに注意しなければなりません。海外で雇用されている会社の海外の業務に従事することが必要です。
またデジタルノマドビザの滞在期間は6ヶ月で、期間を更新することはできません。しかし、1年のうち6ヶ月間の滞在が認められていることから、一度出国して6ヶ月を経過すれば、再度デジタルノマドビザを申請することはできます。
後述しますが、デジタルノマドビザを取得することができる国籍は、租税条約の締結国等かつ査証免除国・地域の国籍者等とされています。一方、家族は査証免除国・地域の国籍者となっています。デジタルノマドが対象国であっても家族が対象国者でない場合は、家族がビザを取得することができない可能性があることにも注意が必要です。
他にも、デジタルノマド本人や家族は資格外活動許可を申請することは認められていませんので日本国内でアルバイトなどができないことや、日本国内でデジタルノマドビザへの在留資格変更、デジタルノマドビザから別の在留資格への変更なども原則としてできません。
資格外活動許可については、こちらの記事で詳しく解説しています。
デジタルノマドビザの取得要件と手続き
デジタルノマドビザの取得要件や手続きについて解説していきます。
デジタルノマドビザの取得要件
デジタルノマドビザの取得要件は以下のようになります。
- ICTを用いて日本でリモートワークをする
- 日本での滞在期間が1年のうち6ヶ月以内
- 租税条約の締結国等かつ査証免除国・地域の国籍者等
- 申請時に年収が1,000万円以上
- 民間医療保険に加入
また、デジタルノマドの家族のビザ取得要件は、以下のとおりです。
- デジタルノマドビザを申請する人の扶養を受ける配偶者または子
- 査証免除国・地域の国籍者
- 民間医療保険に加入
前述のように、デジタルノマドは海外で雇用されている会社の海外の業務に従事することが必要で、日本国内の企業に役務提供する活動などは認められません。
民間医療保険は、傷害疾病への治療費用補償額は1,000万円以上が必要で、滞在期間をカバーする必要があります。
デジタルノマドビザの申請手続きと流れ
一般的な就労ビザなどの手続きと同じように、在留資格認定証明書交付申請手続きを日本にある入管で行い、在留資格認定証明書が交付された後に、在外の日本大使館・領事館で査証の発給を受けて日本に入国します。図にすると以下のようになります。
しかし、一般的な就労ビザとは異なり、日本に受入機関がありません。在留資格認定証明書交付申請を行う場合は、申請人本人が日本に来る必要があります。そのため、デジタルノマドビザは在留資格認定証明書交付申請を行わず、直接日本大使館・領事館で査証申請をすることが可能です。
ただし、在留資格認定証明書を持たずに査証申請する場合は、在留資格認定証明書を持って申請する時と比較して、査証申請時の必要書類が増え、査証発給までの時間がかかります。
デジタルノマドビザの申請ができる国一覧
特定活動53号(デジタルノマド) | 特定活動54号(デジタルノマドの配偶者・子) |
アイスランド | |
アイルランド | |
アメリカ | |
アラブ首長国連邦 | |
イギリス | |
イスラエル | |
イタリア | |
インドネシア | |
ウルグアイ | |
エストニア | |
オーストラリア | |
オーストリア | |
オランダ | |
カタール | |
カナダ | |
クロアチア | |
シンガポール | |
スイス | |
スウェーデン | |
スペイン | |
スロバキア | |
スロベニア | |
セルビア | |
タイ | |
チェコ | |
チリ | |
デンマーク | |
ドイツ | |
トルコ | |
ニュージーランド | |
ノルウェー | |
ハンガリー | |
フィンランド | |
フランス | |
ブラジル | |
ブルガリア | |
ブルネイ | |
ベルギー | |
ポーランド | |
ポルトガル | |
マレーシア | |
メキシコ | |
ラトビア | |
リトアニア | |
ルーマニア | |
ルクセンブルク | |
韓国 | |
香港 | |
台湾 | |
アルゼンチン | |
アンドラ | |
エルサルバドル | |
キプロス | |
ギリシャ | |
グアテマラ | |
コスタリカ | |
サンマリノ | |
スリナム | |
チュニジア | |
ドミニカ共和国 | |
バハマ | |
バルバドス | |
ホンジュラス | |
マカオ | |
マルタ | |
モーリシャス | |
モナコ | |
リヒテンシュタイン | |
レソト | |
北マケドニア |
本記事執筆時点でのデジタルノマドビザの対象国は49カ国で、その配偶者や子の対象国は70カ国です。
デジタルノマドビザを取得できる国は、租税条約の締結国等かつ査証免除国・地域の国籍者等であることと規定されています。一方で、家族は査証免除国・地域の国籍者等と規定され、デジタルノマドとその家族では対象の国籍が少し異なりますので注意しましょう。
少し細かい話になりますが、査証免除国等であっても告示で規定されている国のみが対象国となりますので、対象国になるかどうかは事前に確認が必要です。
さいごに
ここまでデジタルノマドビザについて解説してきました。
新しい制度であるデジタルノマドビザの概要や申請要件などについて、ご理解いただけたのではないでしょうか。
デジタルノマドビザは海外の仕事を行うためのビザで、取得できる国籍が限定されていたり、在留カードが発行されなかったりなど、その他のビザとは異なる特殊なビザです。
このように、時代に合わせてビザの種類が変わり、入管法も変わっていきます。頻繁に変わる入管法を理解し、最新情報を常に把握していくのは難しいでしょう。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。