不法就労助長罪とは?外国人雇用時に「知らなかった」では済まない徹底確認事項
- 2021.03.27
- 2023.06.28
リガレアス行政書士事務所の水澤です。
数年前になりますが、日本の大学を3月に卒業後、就職活動をして8月に就職が内定した外国籍の方から、就労できる在留資格に変更したいというご相談をいただきました。この方は、大学在学中からアルバイトをしていた会社が社員として雇用してくれることになり、真面目にアルバイトをしてきて良かったと嬉しそうでした。雇用する会社も、働きぶりや専門知識を大変評価していたようです。
しかし、よくよくお話を伺っていると、問題が見つかりました。この方は、大学を卒業した後も在留資格「留学」の在留期限がまだ半年あったので、そのまま「留学」の在留資格で日本に在留し、「留学」の在留資格で得た「資格外活動許可」でこの会社でアルバイトを続けていたそうです。
入管法上、大学を卒業すると在留資格「留学」で許される活動内容に該当しなくなるので、卒業後も日本に在留し就職活動をするには、「留学」の在留期限がまだ残っていても速やかに「特定活動(就職活動)」に変更する必要があります。
*現在は「特定活動46号」という在留資格が設けられ、小売店や飲食店でアルバイトをしていた留学生が、アルバイトをしていた会社に卒業後に雇用されることも可能です。申請要件や手続の詳細はリガレアスまでお問合せください。
そして、アルバイトをするには在留資格「特定活動(就職活動)」で付与される「資格外活動許可」を新たに取得する必要がありますが、この方は大学を卒業してからもずっと留学の在留資格でアルバイトを続けていたのです。大学を卒業したら在留資格を「特定活動(就職活動)」へ変更することは知らなかったそうで、この方をアルバイトとして雇用していた会社も同様でした。
この場合、会社側も不法就労助長罪に問われてしまい、知らなかったでは済まないのです。そこで今回は不法就労助長罪の概要と会社側がやるべきことなどについてお伝えいたします。
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目次
不法就労助長罪について
不法就労助長罪の概要
不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)の73条2項で規定されています。
法第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者 二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者 三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんをした者 |
外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんした場合に「不法就労助長罪」に問われるのです。
不法就労とは?
そもそも、不法就労についての認識が曖昧となっている方も少なくありません。不法就労は主に以下のケースがあります。
ケース | 例 | |
1 | 不法滞在者や退去強制となった人が働く | 密入国した人が働く 在留期限が到来後も働く 退去強制されることが既に決まっている人が働く |
2 | 出入国在留管理庁から就労の許可を受けずに働く | 観光等の目的で「短期滞在」で入国した人が働く 留学生や難民認定申請中の人が「資格外活動許可」を得ずに働く |
3 | 所持する在留資格で認められた範囲を超えて働く | 通訳者や語学学校の先生が、工場等で作業員として働く 技術者や研究者が外食店で調理をする 留学生が許可された時間数を超えて働く |
ケース1 不法滞在者が就労する
主に、査証や在留資格を持たずに不法に入国した人や、在留資格の更新手続を行わなかった人、在留資格の更新が許可されなかった人です。
*仮放免許可を所持している人は、入管法違反の疑いで退去強制手続中か、既に退去強制されることが決まっていますが、諸事情により一時的に収容施設での収容を解かれている人です。仮放免許可は在留資格ではないのでご注意ください。
ケース2 就労の許可を受けていないのに就労する
在留資格「短期滞在」「留学」「文化活動」「家族滞在」等は就労が許可されません。
*「留学」「文化活動」「家族滞在」「特定活動(就職活動)」「特定活動(採用内定・入社待機)」等は、入管から「資格外活動許可」を得た場合は、許可された範囲内で就労できます。
(注意!)
資格外活動許可を受けずにアルバイトをすると以下のように罰則の対象となります。
- 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金
- 強制送還の対象
ケース3 許可されている活動内容や時間を超えての就労
・就労が許可されている在留資格所持者でも、その在留資格で許可された活動内容以外の業務に従事した場合は不法就労となります。
*就労が許可されている在留資格所持者が個別の資格外活動許可を取得する場合は、1週間に28時間以内という指定はありません。
・学校を卒業、退学、除籍となった後に、そのまま「留学」の在留資格と資格外活動許可でアルバイトをした場合も不法就労となります。
*留学生で「資格外活動許可」を取得した人も、就労できる時間は1週間に28時間以内と決められています。
留学生の場合は、夏休み等の長期休暇の場合は1日8時間(一週間で40時間が上限)まで就労できます。この時間制限は、1事業所での就労時間ではなく、1人における就労時間です。
(注意!)
週28時間を超えてアルバイトをすると以下のように罰則の対象となります。
- 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金
- 強制送還の対象
学校を卒業後、退学除籍となった後も、在留資格「留学」・資格外活動許可があってもアルバイトをすると、以下のように罰則の対象となります。
- 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金
- 強制送還の対象
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不法就労助長罪のリスク
不法就労をしていた外国籍の人も処罰の対象になりますが、雇用していた事業主も処罰の対象になります。
不法就労をさせたり、不法就労をあっせんした人は不法就労助長罪に問われます。
- 3年以下の懲役・300万円以下の罰金
- 労働者派遣事業、有料職業紹介事業の許可の欠格事由に該当
外国籍の人を雇用する際に、雇用する外国籍者が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していなかった等の過失がある場合には、処罰を免れません。
この他にも以下の罰則対象となります。
- 不法就労をさせたり、不法就労をあっせんした外国籍事業主は退去強制の対象となる
- 退去強制を免れるために、不法入国者をかくまう等の行為をした場合は、入管法第74条項目8により、3年以下の懲役又は100万円の罰金(営利目的の場合は5年以下の懲役及び300万円以下の罰金)に処せられる
- 外国籍者の雇入れ又は離職について、ハローワークへの届出をしなかったり、虚偽の届出をした事業主は、30万円以下の罰金が処せられる
不法就労助長罪を防ぐには
在留カードの確認
一番重要なのは、外国籍者を雇用する際に必ず在留カードを確認することです。在留カードの確認で、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
在留カード表面の「就労期限の有無」欄を確認する
- 「就労不可」の記載がある場合は原則雇用できません。
しかし、裏面の資格外活動許可欄に許可:許可の範囲の記載がある場合は就労可能です。 - 「在留資格に基づく就労活動のみ可」の記載がある場合は就労可能です。
- 「指定書により指定された就労活動許可のみ可」(法務大臣が個々に指定した活動等が記載された指定書を確認)
- 難民認定申請中の人については、有効な在留カードを所持していない場合や在留カード「就労不可」と記載されている場合は、雇用できません。
- 「就労制限なし」の記載がある場合は、就労内容に制限はありません。
*「留学」「家族滞在」「文化活動」の在留資格を所持し在留している人については、「資格外活動許可」を取得していない限り就労できません。
在留カードの番号が失効していないか確認する
在留カード及び特別永住者証明書のICチップに記録された氏名等の情報を表示させ、在留カード等が偽変造されたものでないことを確認できるアプリケーションがあります。詳しくは下記の出入国在留管理庁ホームページをご覧ください。
参考・画像引用元:出入国在留管理庁ホームページ
パスポートで就労可能か確認
- パスポートに後日在留カードを交付する旨の記載がある人
- 就労可能な在留資格で、3か月以下の在留期間が付与されている人
- 「外交」「公用」等の在留資格が付与されている人
雇用する会社での就労内容を確認する
雇用しようとしている外国籍の方が就労可能であっても、雇入れる会社での職務内容が在留資格で規定されている職務内容に該当するか否か確認することも非常に重要です。
- 在留資格が「就労制限なし」とされている外国籍の方は、単純労働は可能です。
- 「在留資格に基づく就労活動のみ可」とされている外国籍の方は、注意が必要です。
例として、
- 雇用しようとしている外国籍の方が在留資格「技術・人文知識・国際業務」を所持している場合、主たる業務は大学・大学院や専門学校で履修した内容に関連した職務に従事し、履修して得た専門知識や、語学力を十分に活かすことが求められる
- 報酬も日本人と同等若しくはそれ以上の支給をすると定められている
さいごに
日本の企業が外国籍の人を雇用することは、その企業の事業や人事計画に大きく影響します。
なぜ、この外国籍の人を雇用する必要があるのか、その理由や、この人を雇用した後の事業はどのような計画なのかを入管に明確に示せることが大切です。
合法的に雇用をすることが、外国籍の人のキャリアにも企業にもプラスになりますので「知らなかった」にならないよう、ご注意いただけましたらと思います。
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記事を書いた人
- 水澤 美砂子
元アルゼンチン国営ラジオ局海外向け放送R.A.E.の日本語アナウンサー。帰国後、市役所の総合受付業務に従事する中でビザの重要性を再認識し、元法務省参事・東京入国管理局長山崎哲夫氏の法務事務所で入管法実務を学び現在に至る。
元アルゼンチン国営ラジオ局海外向け放送R.A.E.の日本語アナウンサー。帰国後、市役所の総合受付業務に従事する中でビザの重要性を再認識し、元法務省参事・東京入国管理局長山崎哲夫氏の法務事務所で入管法実務を学び現在に至る。