リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

当事務所に「特定活動を持っている外国人を雇用しても大丈夫か」といった相談をいただくことがあります。実は我々行政書士でも「特定活動」という在留資格だけで、就労可能かを判断することはできません。それは、「特定活動」が数十種類もあり、それぞれ日本でできる活動が異なるためです。

このように、行政書士でも詳しく状況を確認しなければ判断が難しい在留資格ですので、外国人を採用している企業にとっても、非常にわかりにくい在留資格だと思います。

そこで今回は、「特定活動」とはどのような在留資格かを解説し、「特定活動」をもつ外国人を雇用する際の注意点について説明します。

この記事をお読みいただければ、「特定活動」を持つ外国人の採用を検討する際に、どのようなプロセスで進めていけば良いかがお分かりいただけるはずです。

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在留資格「特定活動」とは?

「特定活動」とは他の在留資格に該当しない活動を行う外国人について、入国や在留を認める場合に法務大臣が個々に活動を指定する在留資格です。

現在、在留資格は全部で29種類あり「特定活動」もそのうちの一つですが、他の28種類の在留資格では当てはまらない「その他」の活動をするための在留資格と言えます。

通常、在留資格を作る場合は入管法を改正しなければなりませんが、「特定活動」は法務大臣が指定するものですので、入管法の改正を経ずに活動内容を追加することができます。

社会情勢などに合わせて柔軟に活用することができる在留資格で、大阪・関西万博の関係者やデジタルノマドを受け入れるために「特定活動」の中に追加されたことも、その一例と言えるでしょう。

 

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「特定活動」の種類

「特定活動」には大きく分けて、法務大臣があらかじめ告示で定める活動(告示特定活動)と法務大臣が人道上や特別の事情によって特別に在留を認める告示で定められていない(告示外特定活動)の2種類があります。

告示特定活動

一部削除されたものもありますが、告示特定活動は1号から54号まであります。

 

告示活動内容
1号外交官の家事使用人
2号高度専門職・経営者等の家事使用人
3号台湾日本関係協会職員及び家族
4号駐日パレスチナ総代表部職員及び家族
5号ワーキングホリデー
6号アマチュアスポーツ選手
7号アマチュアスポーツ選手の家族
8号国際仲裁代理を行うための外国弁護士
9号インターンシップ
10号イギリス人ボランティア
12号サマージョブ
13号大阪・関西万博関係者
14号大阪・関西万博の配偶者等
15坊国際文化交流
16号EPAインドネシア看護師候補者
17号EPAインドネシア介護福祉士候補者
18号EPAインドネシア看護師の家族
19号EPAインドネシア介護福祉士の家族
20号EPAフィリピン看護師候補者
21号EPAフィリピン就労介護福祉士候補者
22号EPAフィリピン就学介護福祉士候補者
23号EPAフィリピン看護師の家族
24号EPAフィリピン介護福祉士の家族
25号医療滞在
26号医療滞在の同伴者
27号EPAベトナム看護師候補者
28号EPAベトナム就労介護福祉士候補者
29号EPAベトナム就学介護福祉士候補者
30号EPAベトナム看護師の家族
31号EPAベトナム介護福祉士の家族
32号建設就労者
33号「高度専門職」外国人の就労する配偶者
34号「高度専門職」またはその配偶者の親
35号造船就労者
36号特定研究等活動
37号特定情報処理活動
38号特定研究等活動・特定情報処理活動の家族
39号特定研究等活動・特定情報処理活動の親
40号観光、保養等を目的とする長期滞在者
41号観光等を目的とする長期滞在者に同行する配偶者
42号製造業外国従業員受入事業における特定外国従業員
43号日系四世
44号起業家
45号起業家の家族
46号日本の大学卒業者
47号日本の大学卒業者の家族
50号スキーインストラクター
51号未来創造人材(J-Find)
52号未来創造人材の家族
53号デジタルノマド
54号デジタルノマドの家族

 

上記のように告示特定活動にはこれだけの種類があり、全てを把握して理解するのは困難ですので、表をご覧いただいて自社に関係のありそうな活動のみをピックアップして確認するのがよいでしょう。企業に関係がありそうな活動は詳しく後述します。

告示外特定活動

法務大臣が人道上や特別の事情によって特別に在留を認めるものです。そのため、告示特定活動とは異なり、決まった活動内容や許可基準はありません。しかし、過去に認められた例があり、今後も認められる可能性がある活動内容がいくつかありますので、代表的なものをここで説明します。

養親扶養

これは日本にいる外国人が、本国にいる高齢の親を呼び寄せて扶養するためのものです。

人道上の理由により許可される活動で、明確な許可要件は公表されていませんが、これまでの申請の経験から、以下のような要件を揃えていれば許可されるケースがあります。

  • 片親であること
  • 親の年齢が高齢であること(一般的に70歳以上)
  • 親が病気など面倒を見なければいけない事情があること
  • 本国に面倒を見る家族がいないこと
  • 日本の家族が親を扶養する経済力があること
  • 扶養が目的であること

両親二人とも呼び寄せたいという相談を受けることもありますが、二人とも健在な場合は二人で生活していくことができると判断されてしまう可能性が高いです。また、日本で扶養を受けることが目的ですので、この「特定活動」を取得しても日本で働くことはできません。

このように、高齢の親が一人で本国に残され、さらに病気などにより家族の支援が必要だと人道上認められるような場合に許可を受けられます。ただし、これらの要件を揃えていれば必ず許可されるものではありません。

就職活動

日本で大学や専門学校などに通っていた留学生が、学校を卒業するまでに日本での就職先が見つからず、卒業後も継続して就職活動をするためのものです。

これも告示外特定活動に当たりますが、かなり一般的ですので、外国人の求職者がこの「特定活動」を持っていることもあると思います。

先ほどの養親扶養とは異なり、卒業した学校から推薦があることや日本での滞在費支弁能力があることなど、いくつかの要件が示されていて、その要件を満たし許可が認められれば卒業から最長1年間は「特定活動」で滞在することができます。

また、就職活動のための「特定活動」は資格外活動許可を取得すれば、アルバイトをすることも可能です。

就職活動の結果、日本で就職先が見つかれば、就労の在留資格に変更することもできます。

この「特定活動」については、以下の記事もお読みください。

告示特定活動と異なり、告示外特定活動は在留資格認定証明書交付申請を行うことができず、在留資格変更許可申請によってのみ取得することができる「特定活動」です。

つまり、日本入国時に告示外特定活動として「特定活動」を取得することはできないため、別の在留資格で日本に入国し、日本国内で在留資格変更許可申請を行わなければなりません。

「特定活動」の具体例

「特定活動」は告示特定活動だけでも約50種類もあり、一つずつどのような活動内容なのかを把握して理解することは困難です。そこで、ここでは企業のご担当者の方が覚えていただきたい「特定活動」をピックアップして説明します。

ワーキングホリデー(5号)

ワーキングホリデーについてはご存知の方も多いと思いますが、実はこれも「特定活動」に含まれています。

日本と口上書や協定などを結んだ国の外国人が対象で、日本の文化や生活様式を理解するために日本で一定期間の休暇を過ごす活動や滞在期間の資金を補う範囲内での就労が認められるものです。風営法に係る職種以外であれば日本国内で働くことも認められています。ただし、休暇が目的ですので、就労することがメインの活動になってはいけません。

ワーキングホリデーを持っている外国人を正社員として雇用したいという相談は多いですが、一度本国に帰国して就労の在留資格を取得してから再度日本に入国する必要があります。しかし、国によっては日本国内で在留資格を変更することが認められることがありますので、行政書士などの専門家に相談するのがよいでしょう。

日本のワーキングホリデーについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

インターンシップ(9号、12号)

「特定活動」におけるインターンシップは9号と12号の2種類があり、ともに海外の大学に在籍している学生が対象となります。

9号はインターンシップが海外の大学の単位取得のために必要な課程で、1年を超えない期間で行われるインターンシップが対象です。一方で、12号はサマージョブと呼ばれ、夏休み期間などの長期休暇中に3ヶ月を超えない期間でインターンシップを行う場合に与えられます。

インターンシップについては、これまで十分な受入体制が整っていないままにインターン生を受け入れることや、労働力確保の目的で受け入れるなどの事例があったため、入管ではガイドラインを策定し、審査が厳しくなってきています。海外からインターン生を受け入れる場合には、十分に準備を進めてから実施する必要があるでしょう。

外国人のインターンシップビザについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひお読みください。

「高度専門職」の家事使用人、就労する配偶者、親(2号、33号、34号)

「高度専門職」をもつ外国人は、さまざまな優遇措置を受けることができますが、この3つはいずれも「高度専門職」を対象とした優遇措置です。

「高度専門職」は、一定の要件を満たすと外国人の家事使用人を雇用することができます。「経営・管理」や「法律・会計業務」といった一部の在留資格にしか認められない優遇措置です。

「入国帯同型」、「家庭事情型」、「金融人材型」の3つの類型があります。それぞれ多少異なりますが、世帯年収が1000万円以上あることや家事使用人の報酬が月20万円以上といった要件を満たせば、家事使用人の外国人は「特定活動2号」が与えられます。なお、「経営・管理」や「法律・会計業務」を持つ外国人が家事使用人を雇用する場合も「特定活動2号」になります。

次は「高度専門職」の配偶者が就労をする場合に与えられる「特定活動33号」についてです。

通常、外国人が日本で就労するには、学歴や職歴など就労の在留資格ごとの要件を満たす必要があります。しかし、このような要件がなくても「高度専門職」の配偶者であれば就労することが認められます。

ただし、「高度専門職」の方と同居していることや日本人と同等額以上の報酬を受けること、就労の活動内容が限定的といった一定の要件はありますので、無条件で就労が認められるものではないことに注意しましょう。

そして、「高度専門職」の親についてです。

「短期滞在」や前述の告示外特定活動の老親扶養といった例外的なものを除けば、外国人が自分の親を日本に呼び寄せることはできません。世帯年収が800万円以上で子供が7歳未満であることなどの要件を満たせば、「高度専門職」をもつ外国人またはその配偶者の親を日本に呼び寄せることができます。その際に親が取得する在留資格が「特定活動34号」になります。

上記については、こちらの「高度専門職」の記事で詳しく解説していますので、ご関心がありましたらお読みください。

日本の大学卒業者(46号)

日本の大学や大学院を卒業した外国人が、大学で学んだ知識や日本語能力を活かして日本の企業で幅広い業務に従事するための在留資格です。

日本の大学(院)を卒業していることや、JLPT※1のN1またはBJT※2で480点以上の高い日本語能力を持っていること、常勤職員としてフルタイムで働くことなどの要件を満たせば、「特定活動46号」が与えられ、就労することができます。

※1 日本語能力試験
※2 ビジネス日本語能力テスト

JLPTやBJTについては、こちらの記事で解説しています。

一般的な就労の在留資格である「技術・人文知識・国際業務」と異なり、大学で学んだ知識や能力が必要な業務に従事するとともに単純作業も認められる在留資格になります。

46号は、2019年に創設されたもので、飲食店、小売店、宿泊施設などで需要が高まると考えられる在留資格です。

「特定活動46号」については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

「特定活動」の外国人を雇用する際の注意点

ここまで解説したように「特定活動」は他の在留資格と異なり、少し特殊です。そのため、「特定活動」をもつ外国人を雇用する際に注意しなければならないことがいくつかあります。ここでは、覚えておきたい3つの注意点を解説します。

指定書で「特定活動」の詳細を確認

これまで説明してきたように、「特定活動」には多くの種類があるため、在留資格を見ただけではどのような活動内容が許可されているのか分かりません。

そこで「特定活動」を持つ外国人の活動内容を確認するには、「指定書」を確認する必要があります。「指定書」とは、告示特定活動、告示外特定活動ともに「特定活動」が許可されると、パスポートに貼られる紙です。「指定書」には日本でできる活動内容が記載されます。

designation_sample

こちらが「指定書」のサンプルです。上部に氏名と国籍が記載され、下部に活動内容が記載されます。ここに記載されている活動内容を確認して、どのような内容が許可されているかを確認しましょう。

ただ、就労が可能だとしても、「特定活動」では勤務先が「指定書」で指定されていることも多いです。この場合、「指定書」に記載された勤務先以外で働くことはできませんので、もし「指定書」で勤務先が指定され、そことは別の勤務先で働く場合には、在留資格変更許可申請が必要になりますので注意しましょう。

資格外活動許可の確認

次に資格外活動許可を持っているかどうかを確認します。

「指定書」の活動内容では就労不可となっていても、資格外活動許可を持っていれば、週28時間以内で働くことが可能な場合もあります。フルタイムで働くことはできませんが、アルバイトであれば働くことが可能です。この場合は、在留カードの裏面かパスポートに資格外活動許可があるかを確認しましょう。

資格外活動許可についてはこちらの記事もお読みください。

在留資格の知識

前述のように、就労可能な「特定活動」を持っていたとしても「指定書」で勤務先が指定されていることが多いため、フルタイムの正社員として雇用する場合には、在留資格変更許可申請をしなければならないことがほとんどでしょう。

そうなると自社で外国人を雇用する際に、どの在留資格を申請すべきかの判断が必要になり、「特定活動」だけでなく他の在留資格についての知識も必要になってきます。「特定活動」を含め全部で29種類ありますが、その中で自社に関係のある在留資格だけでも最低限の知識を持っておく必要はあるでしょう。場合によっては、行政書士などの専門家に相談することもお勧めします。

さいごに

ここまで「特定活動」について解説してきました。「特定活動」は種類も多く、「特定活動」という在留資格だけでは判断できない、複雑な在留資格であることがお分かりいただけたかと思います。

また、「特定活動」を持つ外国人を雇用する場合には、「特定活動」だけでなく他の在留資格も確認するなど、注意しなければならないことが多いです。日本で行う活動と在留資格が異なる場合、不法就労となってしまいますので、外国人採用で困ったら、曖昧なまま進めずに行政書士などの専門家に相談しましょう。

リガレアスでは、「特定活動」はもちろん、その他の就労の在留資格のご相談や申請をおこなっております。外国人のバックグラウンドや採用後の活動内容などを丁寧にヒアリングした上で、どの在留資格で申請するのが適切かアドバイス致します。

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