リガレアス行政書士事務所の広瀬(@tatsu_ligareus)です。

高度な知識や能力をもつ外国人材を受け入れるための「高度専門職」という在留資格は、ご存知の方も多いと思います。しかし、特別高度人材制度(J-Skip)をご存知の方は少ないのではないでしょうか。

2023年4月から導入された制度で、これまでの「高度専門職」よりも優遇措置が拡充されたものです。リガレアスにも特別高度人材のご相談をいただきますが、まだ多くの人がご存知ない制度だと感じます。

そこで今回は、特別高度人材制度の概要や取得の要件、優遇措置の内容などを解説していきます。お読みいただければ、特別高度人材制度がどのようなものか、ご理解いただけるはずです。

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特別高度人材制度(J-Skip)とは?

ここでは、特別高度人材制度がどのようなものかを解説します。

特別高度人材(J-Skip)とは?

2022年9月29日に行われた教育未来創造会議で、総理が「高度人材の受入れについて、世界に伍する水準の新たな制度の創設を含め、改革を進めていく必要があり、(中略)年度内に具体化してください」という発言をされました。それを受け、2023年2月17日に外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において新制度案を決定し、2023年4月21日から特別高度人材(J-Skip)が導入されました。
(参考:高度外国人材の受入れに係る「新たな制度」の創設について

これまでの「高度専門職」は、ポイント制でポイントを満たせば「高度専門職」が与えられるものでしたが、特別高度人材は、そのポイント制の「高度専門職」とは別に、学歴または職歴、年収が一定水準以上あれば、「高度専門職」が与えられるものになります。これまでのポイント制の「高度専門職」がなくなったわけではありません。

特別高度人材として「高度専門職」が与えられると、これまでの「高度専門職」よりも拡充された優遇措置が認められます。

なお、特別高度人材が認められると在留資格は「高度専門職1号」が付与され、特別高度人材証明書の交付と在留カード裏面に「特別高度人材」が記載されます。

特別高度人材として「高度専門職1号」で1年以上在留すると「高度専門職2号」に変更が可能です。「高度専門職2号」は「高度専門職1号」よりも優遇措置があります。

ポイント制による「高度専門職」については、以下の記事もお読みください。

特別高度人材の要件

「高度専門職」の対象には、日本で行う活動内容に応じて3つの類型があり、類型によって要件が異なります。

 

在留資格類型活動内容要件
高度専門職1号イ【高度学術研究活動】
(大学教授や研究者など)
日本の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導または教育以下のいずれかを満たすこと

・修士号以上取得かつ
年収2,000万円以上

・従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ
年収2,000万円以上

高度専門職1号ロ【高度専門・技術活動】
(エンジニアなど)
日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務
高度専門職1号ハ【高度経営・管理活動】
(経営者など)
日本の公私の機関において事業の経営または管理事業の経営または管理に係る実務経験5年以上かつ年収4,000万円以上

 

上記のように、学歴または職歴、年収の要件を満たせば、「高度専門職」(特別高度人材)が認められます。

ここでいう年収は、過去の年収ではなく、特別高度人材として今後1年間に受ける予定の年収です。

また実務経験は、特別高度人材として従事しようとする業務に関連する経験でなければなりません。全く関係のない職歴は含まれないことに注意しましょう。

なお、「高度専門職」では活動内容に応じて該当する在留資格があります。

 

活動内容該当する在留資格
【高度学術研究活動】
研究、研究の指導または教育
「教授」「研究」「教育」
【高度専門・技術活動】
自然科学または人文科学の分野に属する知識または
技術を要する業務
「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「教授」「芸術」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」
「教育」「介護」「興行」「宗教」「技能」
【高度経営・管理活動】
事業の経営または管理
「経営・管理」

 

上記の在留資格に該当しない場合は、要件を満たしていたとしても「高度専門職」(特別高度人材)は取得できません。

高度専門・技術活動では、自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務と規定されているため、「技能」の調理師や「技術・人文知識・国際業務」の翻訳・通訳者なども、「高度専門職」(特別高度人材)の対象外です。

 

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特別高度人材付与までのプロセス

ここでは、「高度専門職」(特別高度人材)を取得する方法について解説します。

特別高度人材「高度専門職1号」・「高度専門職2号」の概要と差分

特別高度人材として「高度専門職1号」で1年以上在留すると、「高度専門職2号」に変更が可能であることは前述しました。

「高度専門職1号」と「高度専門職2号」の違いは、優遇措置の違いです。

 

「高度専門職1号」の優遇措置「高度専門職2号」の優遇措置
複合的な在留資格の許可「高度専門職1号」の活動と併せて
ほぼ全ての在留資格の活動を行うことができる
在留期間「5年」の付与在留期間が無期限
在留歴に係る永住許可要件の緩和
配偶者の就労
一定条件の下で親の帯同
一定条件の下で家事使用人の雇用
入国・在留手続きの優先処理
プライオリティレーンの使用


優遇措置の詳しい内容は、後述します。

申請に必要な書類と準備

ここでは、在留資格認定証明書交付申請での必要書類について説明します。

 

必要書類
1申請書
2顔写真
3活動区分に応じた特別高度人材の基準に関する資料
学歴卒業証明書及び学位証明書
職歴在籍証明書
年収年収見込み証明書
4日本で行う活動に応じた各在留資格の必要書類

 

高度学術研究活動または高度専門・技術活動で申請をする場合は、学歴または職歴と年収に関する資料、高度経営・管理活動で申請をする場合は、職歴と年収に関する資料を提出します。

また、日本で行う活動に応じた各在留資格の必要書類とは、前述した活動内容に応じた在留資格に関する書類です。例えば、企業のエンジニアとして「高度専門職」(特別高度人材)を申請する際は、「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動内容になるため、上記の書類に加えて「技術・人文知識・国際業務」で必要な書類を提出することになります。

「高度専門職」(特別高度人材)を申請する際は、どのような活動を行い、どの在留資格に該当するかを確認して、必要な書類を準備しましょう。

就労ビザについてはこちらもお読みください。

申請から取得までのステップ

「高度専門職」(特別高度人材)を取得する方法として、3つのパターンが考えられます。

  1. 海外から入国する場合
  2. 「高度専門職1号」以外の在留資格で日本に在留中の場合
  3. 「高度専門職1号」で日本に在留中の場合

海外から入国する場合

まず、「高度専門職1号」の在留資格認定証明書(COE)交付申請を入管で行うことが必要です。

在留資格認定証明書が交付された後に、在外公館で査証申請を行います。

査証を取得した後、日本に入国するという流れです。

なお、「高度専門職」(特別高度人材)の在留資格認定証明書交付申請は優先処理されることになっており、申請から10日以内に審査が終了することになっています。しかし入管の混雑状況によって、1ヶ月程度かかることも多いです。

在留資格認定証明書(COE)については、こちらの記事もお読みください。

「高度専門職1号」以外の在留資格で日本に在留中の場合

「高度専門職1号」以外の在留資格をもって日本に在留している方が、「高度専門職」(特別高度人材)の取得を希望する場合は、入管で在留資格変更許可申請を行います。

「高度専門職」(特別高度人材)の在留資格変更許可申請も優先処理されることになっているため、申請から5日以内で審査が終了することになっています。しかし、こちらも入管の混雑状況によって、1ヶ月程度かかることも多いです。

「高度専門職1号」で日本に在留中の場合

「高度専門職1号」をもって日本に在留している方が、「高度専門職」(特別高度人材)の取得を希望する場合、「高度専門職1号」の在留期限によって2つのパターンがあります。

「高度専門職1号」の在留期間の満了までの期間がおおむね3ヶ月以内の場合は、入管で在留期間更新許可申請を行い、「高度専門職」(特別高度人材)に該当することを申し出ます。

一方で、在留期間の満了まで3ヶ月以上ある場合は、入管に就労資格証明書交付申請を行います。就労資格証明書とは、申請人が行うことができる活動を法務大臣が証明する文書です。就労資格証明書が交付されれば、「高度専門職」(特別高度人材)であることが認められます。

なお、「高度専門職2号」は、1年以上特別高度人材として「高度専門職1号」で日本に在留していれば変更することが可能です。

特別高度人材の注意点

ここでは「高度専門職」(特別高度人材)の注意点について解説します。

特別高度人材の注意点

「高度専門職」(特別高度人材)で注意すべき点は、転職をした場合に在留資格変更許可申請が必要なことです。

ポイント制の「高度専門職」でも同様ですが、「高度専門職」を取得するとパスポートに「指定書」という紙が貼られます。指定書には所属機関が明記され、転職をした場合は必ず在留資格変更許可申請をしなければなりません。例え同じ特別高度人材であっても「高度専門職1号ロ」(特別高度人材)から「高度専門職1号ロ」(特別高度人材)へ在留資格変更を行うことになります。期間更新申請ではないことに注意しましょう。

もう一点注意すべき点は年収です。

前述したように、過去の年収ではなく、特別高度人材として今後1年間に受ける予定の年収です。例えば転職によってこれまでの年収より低くなってしまう場合、新しい会社での年収が特別高度人材の要件を満たさないと「高度専門職」(特別高度人材)を取得できません。

特別高度人材の優遇措置について

ここでは、特別高度人材として「高度専門職」を取得した際の優遇措置について解説します。

特別高度人材に付与される優遇措置

ポイント制での「高度専門職1号」では、以下のような優遇措置が与えられます。

  1. 複合的な在留活動の許可
  2. 在留期間「5年」の付与
  3. 在留歴に係る永住許可要件の緩和
  4. 配偶者の就労
  5. 一定条件の下で親の帯同
  6. 一定条件の下で家事使用人の雇用
  7. 入国・在留手続きの優先処理

特別高度人材として「高度専門職1号」を取得すると、上記の優遇措置に加えて、さらに以下のような優遇措置が認められます。

  1. 世帯年収が3,000万円以上の場合、外国人家事使用人2人まで雇用可能
    *家庭事情要件などは課されない
  2. 配偶者は、在留資格「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「興行」に該当する活動に加え、在留資格「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」及び「技能」に該当する活動についても、経歴等の要件を満たさなくても、週28時間を超えて就労可能
  3. 出入国時に大規模空港等に設置されているプライオリティーレーンの使用可能

    ポイント制でも外国人の家事使用人を雇用することは可能ですが、日本入国の1年以上前から雇用していたこと(入国帯同型)や13歳未満の子または配偶者が日常の家事に従事することができない(家庭事情型)といった条件があります。また外国人の家事使用人の雇用は1人しか認められていません。

    しかし、特別高度人材の場合で世帯年収が3,000万円以上の場合は、外国人の家事使用人を2人雇用することができ入国帯同型や家庭事情型といった要件が課されなくなります。

    また配偶者の就労もポイント制の「高度専門職」で認められていますが、在留資格「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「興行」に該当する活動しかできません。しかし、特別高度人材の配偶者であれば、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」及び「技能」に該当する活動についても行うことが可能になります。

    また特別高度人材として「高度専門職2号」を取得すると、さらに以下の優遇措置を受けることができます。

    1. 「高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる
    2. 在留期間が無期限となる

    「高度専門職1号」では、該当する在留資格があり、その範囲内で活動が認められています。しかし、「高度専門職2号」であれば、ほぼ全ての就労資格の活動が可能です。

    さらに「永住者」と同様に在留期間が無期限となります。「高度専門職2号」では取得要件として「素行善良要件」と「国益要件」があり、犯罪歴がなく税金や年金などの滞納がないことなども求められます。

    また、特別高度人材であれば、「高度専門職1号」、「高度専門職2号」に関わらず、1年で永住許可申請が可能となります。

    さいごに

    ここまで特別高度人材制度(J-Skip)について、解説してきました。概要や申請要件、優遇措置など網羅的にご理解いただけたと思います。

    ポイント制の「高度専門職」に比べて要件はシンプルになり、優遇措置も拡充されました。

    世界中で優秀な人材の取り合いなっている中、特別高度人材制度が日本で働くインセンティブとなり、優秀な人材獲得を進めていきたいものです。そのためには、ビザ手続きで失敗はできません。

    要件はシンプルになったものの、活動内容の確認は必要ですし注意点もあります。単に要件を満たすだけで申請ができるわけではありません。また入管での審査も優先処理がされますが、実際は時間を要しているケースもあります。確実でスムーズな受け入れを行うためには、専門家の協力も必要になるでしょう。

    リガレアスでは、「高度専門職」(特別高度人材)はもちろんですが、その他のさまざまな在留資格の申請にも対応しております。外資系企業や大企業から中小企業、スタートアップ企業まで支援実績があります。

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