ビジネス日本語能力テスト「BJT」は採用判断基準となるのか?
- 2022.01.24
- 2023.06.11
リガレアス行政書士事務所の広瀬です。
企業が外国人を採用する際に、一定の日本語能力を求めるでしょう。外国人の日本語能力を測るテストの一つとして、BJTビジネス日本語能力テストがあります。BJTビジネス日本語能力テストは、採用を判断する際の基準となるのでしょうか。
本記事では、日本語テストで最も利用されている日本語能力試験(JLPT)と比較しながら、BJTについて解説していきます。さらにBJTが採用判断基準となるかも見ていきましょう。
企業の採用担当者が、外国人採用時の判断の参考にしていただける記事となります。
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目次
ビジネス日本語能力テスト「BJT」とは?
BJTはBusiness Japanese Proficiency Testの略で、その名のとおり、日本語のビジネスコミュニケーション能力を測る試験です。試験はビジネスシーンにおけるさまざまな情報を理解して処理する能力が評価され、「聴解」、「聴読解」、「読解」の3つの試験で構成されています。日本語を母語としない人を対象とし、受験資格や制限はないため、誰でも受験することが可能です。
日本だけでなく中国や韓国、ベトナムなどアジアを中心に、アメリカやドイツなど世界18か国で試験を受験できます。合否によって評価されるのではなく、試験の点数によってレベルをJ1+からJ5までの6段階で評価されるのが特徴です。
日本語能力試験(JLPT)との違い
BJT以外にも日本語の試験は多数あります。日本語能力試験(JLPT)は、日本語試験の中でも最も利用されている試験です。
BJTと異なり、JLPTは日常生活場面を想定した日本語試験になっています。試験内容は「言語知識(文字・語彙・文法)」、「読解」、「聴解」で構成され、レベルはN1からN5の5段階で評価されます。また、合否によって判定されることもBJTとの違いです。
JLPTとBJTの違いを表にするとこのようになります。
日本語能力試験(JLPT) | BJTビジネス日本語能力テスト | |
認定方法 | 合否 | 合否なし(スコア) |
対象場面 | 日常生活 | ビジネスシーン |
試験内容 | 「言語知識(文字・語彙・文法)」 「読解」 「聴解」 | 「聴解」 「聴読解」 「読解」 |
レベル | N1 幅広い場面で使われる日本語を理解できる | J1+(600〜800点) どのようなビジネス場面でも日本語による十分なコミュニケーションができる |
J1(530〜599点) 幅広いビジネス場面で日本語による適切なコミュニケーションができる | ||
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる | J2(420〜529点) 限られたビジネス場面で日本語による適切なコミュニケーションができる | |
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる | J3(320〜419点) 限られたビジネス場面で日本語によるある程度のコミュニケーションができる | |
N4 基本的な日本語を理解できる | J4(200〜319点) 限られたビジネス場面で日本語による最低限のコミュニケーションができる | |
N5 基本的な日本語をある程度理解できる | J5(0〜199点) 日本語によるビジネスコミュニケーション能力がほとんどない |
JLPTとBJTのレベルは必ずしも上記の表のように対応しませんが、BJT受験者を対象にしたアンケートでは、N2合格者よりN1合格者の方がBJTの平均点が高く、一定の相関関係があります。
ただしN1合格者であっても、BJTスコアにおいては300〜700点と広く分布しており、日常的な日本語能力があってもビジネスシーンにおける日本語運用能力には差があり、BJTはよりビジネスに特化したテストであることがわかります。
参考:日本語能力試験(JLPT)との比較(BJTビジネス日本語能力テストホームページ)
日本語能力試験(JLPT)に関してはこちらの記事で解説しています。
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ビジネス日本語能力テスト「BJT」は採用判断基準になる?
BJTの試験内容を見ると、「読む」、「聞く」能力を評価する内容は含まれていますが、「書く」、「話す」といった内容は含まれていません。
ビジネスシーンにおいてはメールやビジネス文書を作成したり、会議や商談で発言する機会も多いはずです。そのため、BJTの点数だけでは総合的な日本語能力はわからない可能性があります。
BJTを受けていなくても会話が上手な人もいるでしょうし、BJTの点数が良くても企業が求める日本語能力をもっていない人もいるかもしれません。面接などを通して実際の日本語能力を見極め、業務において必要な日本語能力を持っているかどうかを判断する必要があります。
BJTはビジネスシーンにおける日本語能力を見る一つの指標として利用することはできるかもしれませんが、あくまでも参考程度にとどめておくのが良いでしょう。
ビジネス日本語能力テスト「BJT」のレベル
J1+(600〜800点)
BJTのなかで最も高いレベルです。会議、商談、電話などさまざまなビジネスシーンにおいて、日本語で十分なコミュニケーションが可能で、社内文書も理解することができます。
また、日本のビジネス慣習も理解していて、日本語独特のビジネス表現も可能です。このレベルであれば、どのような職種にも対応できるでしょう。
J1(530〜599点)
J1+と比較すると、多少日本語の知識や運用能力で問題がありますが、意思疎通に支障はありません。会議や商談にも問題なく参加でき、日常的なビジネス文書であれば理解は可能です。
J2(420〜529点)
日常のビジネス会話など限られたビジネスシーンにおいて、ビジネスコミュニケーションが可能です。一部、日本語の知識や運用能力で問題があり、意思の疎通を妨げることもあるため、周りのサポートが必要な場合もあります。
しかし、会議や商談、電話対応などで相手が話すことはある程度理解でき、日常的なビジネス文書もある程度理解することはできます。
J3(320〜419点)
簡単なビジネス会話であればコミュニケーションは可能ですが、会議や商談など高度なビジネス日本語能力が求められる場面だと意思疎通が難しいことが多いです。簡単な接客や電話応対であれば業務を行うことはできるでしょう。
J4(200〜319点)
最低限のビジネス日本語能力をもっています。
ゆっくり話されたビジネス会話であれば理解できますが、日本語の知識や運用能力が低いため、意思疎通は困難です。母国語のマニュアルが整備されているなど言語サポートがあり、日本語を使用することが少ない職場であれば、業務を行うことは可能かもしれません。
J5(0〜199点)
断片的な日本語の知識しかなく、ゆっくり話された簡単な会話であっても部分的にしか理解できないため、日本語でのビジネスコミュニケーション能力はほとんどありません。就くことができる業務は、かなり限定的でしょう。
日本語能力だけが全てではない
日本で働く以上は、ビジネスで使える最低限の日本語能力が備わっていることは大切です。
しかし、日本語能力だけで採用判断をしてしまうことは非常に危険だと思います。
日本語でコミュニケーションが取れると、それだけで優秀にみえてしまうこともありますが、日本語能力だけで判断をしてしまうと、その人の専門性やスキル、人柄といった点を見落としてしまい、職務上必要な能力を持った人を不採用にしてしまうことがあります。結果として自社に合わない人材を採用してしまうこともあるでしょう。
言語や文化が異なる外国人を採用するのは、日本人を採用するのとは異なるメリットがあるから行うはずです。日本語能力だけでなく、自社に合うスキルを持つ人材であることを見極めるため、採用を判断する際にはさまざまな視点から評価すべきです。
さいごに
ここまでJLPTとの比較を含めBJTについて説明し、最終的には日本語能力が採用判断基準となるかを見てきました。
日本で働く上で日本語能力は必要ではありますが、採用後のミスマッチを避けるためにも、日本語能力だけで判断するのではなく、外国人特有のスキルや能力など、さまざまな視点から評価して採用を判断するのが良いでしょう。
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記事を書いた人
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。
1981年生まれ、千葉県出身。行政書士として約10年間勤務した後、DX化が進んでいないビザ業務を変えるため2019年にリガレアスを設立。Twitterでも積極的に情報発信しています。