リガレアス行政書士事務所の広瀬です。

外国人を採用する際の選考基準として日本語能力を設定している企業は多いのではないでしょうか。日本で働く以上、一定程度の日本語能力が求められるのは当然だと思います。実際に、日本語能力試験(JLPT)を選考基準として採用している企業は多いです。

そこで本記事では、外国人の日本語能力を示す資格の一つである日本語能力試験について解説し、それが外国人の採用基準となるのかをみていきたいと思います。

本記事をお読みいただければ、日本語能力試験が採用基準となるかお分かりいただけると思います。

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日本語能力試験「JLPT」とは?

日本語能力試験は、英語で”Japanese-Language Proficiency Test”(JLPT)と呼ばれています。日本語を母語としない人を対象とした日本語能力を測定する試験です。

参考:日本語能力試験JLPT

試験内容は「言語知識(文字・語彙・文法)」、「読解」、「聴解」で構成され、「言語知識(文字・語彙・文法)」では日本語の文字、語彙、文法の知識を測り、「読解」と「聴解」では言語知識を実際のコミュニケーションでどれだけ使えるかを測ります。

レベルはN1からN5までの5段階で、「言語知識(文字・語彙・文法)」、「読解」、「聴解」の各分野に設けられた基準点をクリアし、さらに総合得点が合格点以上である場合に合格となります。

試験は1年に2回実施されていますが、日本だけでなく中国や韓国をはじめとしたアジア地域から、ヨーロッパ、アメリカ、南米、アフリカなど、世界85の国・地域(2018年時点)で実施され、日本語の試験としては最も活用されている試験です。

ビジネス日本語能力テスト「BJT」との違い

日本語能力試験以外にも日本語の試験は多数あります。そのうちの一つであるBJTについて少し解説しましょう。

BJTビジネス日本語能力テストは、日本語のビジネスコミュニケーション能力を測る試験です。試験内容は、「聴解」、「聴読解」、「読解」で構成され、日本語能力試験とは異なり合否はなく、0から800点のスコアによって判定されます。そのスコアに応じてJ1+からJ5までのレベルで示されます。

参考:BJT ビジネス日本語能力テスト

JLPTとBJTの違いを表にするとこのようになります。

 

日本語能力試験(JLPT)BJTビジネス日本語能力テスト
認定方法合否合否なし(スコア)
対象場面日常生活ビジネスシーン
試験内容「言語知識(文字・語彙・文法)」

「読解」

「聴解」

「聴解」

「聴読解」

「読解」

レベルN1

幅広い場面で使われる日本語を理解できる

J1+(600〜800点)

どのようなビジネス場面でも日本語による十分なコミュニケーションができる

J1(530〜599点)

幅広いビジネス場面で日本語による適切なコミュニケーションができる

N2

日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる

J2(420〜529点)

限られたビジネス場面で日本語による適切なコミュニケーションができる

N3

日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる

J3(320〜419点)

限られたビジネス場面で日本語によるある程度のコミュニケーションができる

N4

基本的な日本語を理解できる

J4(200〜319点)

限られたビジネス場面で日本語による最低限のコミュニケーションができる

N5

基本的な日本語をある程度理解できる

J5(0〜199点)

日本語によるビジネスコミュニケーション能力がほとんどない

 

なお、JLPTとBJTのレベルは必ずしも上記の表のように対応しません。

BJTビジネス日本語能力テストに関してはこちらの記事で解説しています。

 

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日本語能力試験「JLPT」のレベル

日本語能力試験はレベルがN1からN5まで5段階で分類され、N1が一番難しくN5が一番易しいレベルです。ここでは、それぞれのレベルごとの日本語能力を詳しくみていきたいと思います。

N1

日本語能力試験の中では最も難しいレベルです。受験者数が減ってしまったコロナ禍以前の2019年12月の合格率は30.8%でした。

合格すると新聞の論説など複雑で抽象的な文章が理解でき、ニュースなど自然なスピードの話の内容を理解できます。また関心のある話題であれば討論などに参加して自分の意見を述べることも可能です。

外国人が日本で医師や看護師などの国家資格を受験する場合は、N1が受験資格になっていますので、高いレベルの日本語でコミュニケーションが可能となります。個人的な印象でも、N1を持っている外国人の方は日常会話はもちろん、ビジネスのやりとりにおいても日本語での意思疎通は問題ない方が多いです。

N2

N2を持っている方であれば、自身が関わる仕事での報告書の内容や職場での会議の要旨を理解することができ、敬語を使った正式なメールのやりとりも可能です。

外国人採用を行なっている企業では、N2保有者以上を採用基準にしていることも多く、ビジネスで使用する最低限のレベルと考えている企業が多いといえるでしょう。

N3

N3に合格している方は、店での買い物や日常的な会話の聞き取りが可能です。

日常的な場面で使われる日本語を理解することができますので、飲食店などでの簡単な接客はできると思いますが、ビジネスシーンでの会議への出席やクライアントとのメールのやりとりは難しいこともあるでしょう。

N4

N4保有者は、身近で日常的な話題についての会話が可能で、友人との簡単なメールでのやりとりはできます。

母国語でマニュアルが整備されていて、日本語でのやりとりが少ない工場でのライン作業などの単純作業であれば仕事に就くことは可能かもしれません。

N5

ひらがなやカタカナ、基本的な漢字は理解できます。また、自己紹介や挨拶といった定型的なやりとりは可能です。

N4同様に、単純作業であれば従事することが可能かもしれませんが、日本語の指示が理解できないと事故につながるような職種につくことは難しいでしょう。

日本語能力試験「JLPT」のレベルはあくまでも採用基準における目安の一つ

日本語能力試験の試験内容をみていただくと、この試験では「読む」「聞く」能力が測定されており、「書く」「話す」能力は測定されていません。実際のビジネスシーンでは「読む」「聞く」だけでなく、「書く」「話す」能力も必要とされます。そのため、日本語能力試験だけで総合的な日本語能力が判定できるとは言い難いです。

N1を持っていても日本語での会話が上手くない方もいるかもしれませんし、資格を持っていなくても日本語が流暢な人もいるでしょう。

このように、日本語能力試験のレベルが高いことが、一概にビジネスレベルの日本語能力があるとはいえません。日本語能力試験のレベルだけで採用を判断してしまうと、資格を持っていなくても日本語能力が高く、職務上必要な能力が高い方を不採用にしてしまうこともありえます。

そのようなことを避けるためにも、日本語能力試験のレベルはあくまでも採用基準における目安の一つと考え、面接などで実際の日本語能力を見極めることも必要でしょう。

さいごに

ここまで、BJTとの違いを含めて日本語能力試験の概要とレベルごとの日本語能力を説明してきました。また、日本語能力試験を採用基準として利用できるかについてもみてきました。

日本で働く以上は一定の日本語能力が必要ですが、あまり日本語能力試験を重視しすぎてしまうと、自社にあった能力を持った外国人を採用し損ねてしまうこともあります。日本語能力試験はあくまでも採用基準の目安の一つと捉え、総合的に判断するのがよいでしょう。

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